◎SEEKING MAJOR TOM
▼シーキング・メジャー・トム
☆Willliam Shatner
★ウィリアム・シャトナー
released in 2011
CD-0351 2013/1/23
今日は変り種CDの話。
ウィリアム・シャトナー。
そう、あの「スター・トレック」のカーク船長(艦長)。
「スター・トレック」シリーズは僕も大好きで、「エンタープライズ」までは一応すべての話を見ています。
でも、やはり、「スター・トレック」といえば、スポックのレナード・ニモイか、カーク船長のウィリアム・シャトナーというイメージがいまだに強いでしょうね。
僕は、「新スター・トレック」のジャン・リュック・ピカード艦長とライカー副長が好きですが。
そのウィリアム・シャトナーのCDを買った、と、或る日弟から報告を受けました。
なんでも、HMVでセール品で500円であったのだという。
ジャケットを見ると、やっぱり宇宙のイメージ、これはお遊びと思うのは当然でしょう。
ところがこれ、真面目にやっています。
後に紹介しますが、参加メンバーが豪華この上ない。
俳優やコメディアンののりではなく、ミュージシャンの中のミュージシャンといえるもの。
そんなミュージシャンたちの協力を得て、「メジャー・トムを探す」というコンセプトのもとに、2枚組の大作を作り上げてしまいました。
基本は歌ではなく語りですが、でもウィリアム・シャトナーは声がいいし、俳優だから声の出し方が劇的かつしっかりしているから、聴いていて迫力を感じます。
それを極上のサウンドにのせてやるのだから、かけていると意外と充実していて楽しい時間を過ごせますよ。
では曲を
Disc1
1曲目Major Tom (Coming Home) feat. Nick Valensi
最初のゲストはニック・ヴァレンジ。
僕は知らない人でしたが、1999年に出てきたストロークスのギタリストとのことで、ちょうど僕がMTVを観なくなった頃ですね。
曲はピーター・シリングの1983年の曲で、当時はもう洋楽は聴いていたけど、僕はそれも知らなかった(英国勢はあまり聴いていなかったので)。
2曲目Space Oddity feat. Ritchie Blackmore & Candice Night
続いてリッチー・ブラックモア&キャンディス・ナイト。
リッチーがこういうところに参加するユーモアを持ち合わせていたことに僕は驚いたのですが、それは僕がリッチーの人となりはそれほど知らないからかな。
逆をいえば、このアルバムが遊びではないことを宣言しているともいえるでしょう。
しかも、リッチーが他人の曲に参加するというのも驚いた。
さらにいえばその他人=デヴィッド・ボウイの代表曲ともいえるほど知られた曲に参加するというのがまた驚きでした。
リッチーのギターは宇宙を飛びやすいですね(笑)。
ただ、語りであるため、あのダイナミックなBメロが聴けないのが残念だけど。
なお"Major Tom"への呼びかけは幾つかの曲で出てきます。
3曲目In A Little While feat. Lyle Lovett
3人目のライル・ラヴェットも僕は知らなかったけれど、カントリーを基本とした音楽のシンガーソングライターでもあり俳優でもあるという人です。
曲はU2、でもやっぱり語り。
4曲目Space Cowboy feat. Brad Paisley & Steve Miller
先ずはブラッド・ペイズリーも僕は名前を聞いたことがあったくらいだけど、カントリー系のシンガーソングライターとのこと。
そしてわがスティーヴ・ミラー、あ、わがとか言ってますが(笑)、言うまでもなくこの曲のオリジナル。
明るいズンドコ節のようなギターリフが宇宙を跳ねるイメージで、これは元々大好きだけど、ここで聴いてさらに好きになりました。
5曲目Space Trucking feat. Ian Paice & Johnny Winter
おお、来た!
僕がディープ・パープルでいちばん好きな曲を、オリジナルのイアン・ペイスと、つい先日記事にしたばかりのジョニー・ウィンターを従えて歌う、いや、語る。
この曲は特に語りに説得力があり、サビの"Come on"はとっても力が入っていてこっちも力が入ります。
ギターがアコースティック中心であるのがまたいい。
6曲目Rocket Man feat. Steve Hilllage
スティーヴ・ヒレッジも僕は知らない人で、カンタベリーロックで60年代から活躍したギタリスト。
曲はエルトン・ジョンのよく知られた曲ですね、ここでは語りだけど。
7曲目She Blinded Me With Science feat. Bootsy Collins & Patrick Moraz
ブーツィー・コリンズのベースの音は宇宙っぽいかも(笑)。
パトリック・モラーツはイエスに1枚だけ参加した超絶テクニックのキーボード奏者。
曲は僕のリアルタイムで大ヒットしたトーマス・ドルビー。
宇宙をテーマにした曲を集めていますが、これを選んだのはなるほどと納得。
これはサウンドがなかなかいいですよ。
なお、ブーツィーはブックレットに文章を寄せており、カーク船長は宇宙のジョン・ウェインだという書き出しで熱く語っています。
8曲目Waking On The Moon feat. Toots Hibbert
トゥーツ・ヒバートはジャマイカのミュージシャン、名前を聞いたことがあったくらいでした。
ポリスの有名な曲だけど、ジャマイカのミュージシャンが参加しているのはスティング喜ぶかも(笑)。
旋律がをつけて「歌って」いるのがトゥーツでしょう。
9曲目Spirit In The Sky feat. Peter Frampton
ピーター・フランプトンもそういえば有名なライヴのジャケットが宇宙人っぽい、か(笑)。
曲はノーマン・グリーンバウムの1969年の曲ということで、ピーター・フランプトンはイメージがその辺でつながっているかもしれません。
パブロックの香りがする軽快なブギーで、原曲はなかなかよさそう。
10曲目Bohemian Rhapsody feat. John Wetton
ジョン・ウェットンは宇宙の人というよりはアジアの人では(笑)。
いや、でも、キング・クリムゾンは宇宙っぽいか。
取り上げたのは、これを知らない人はいないだろうというクイーンの曲ですが、なるほど、宇宙ね。
演奏はほとんどコピーだけど、全体的に激しく嘆いています、「スカラムーシュ」のところでは特に。
11曲目Silver Machine feat. Wayne Kramer & Carmine Appice
ウェイン・クレイマーも僕は知らなかったけれど、かのMC5のギタリストだったんだ。
というのも、MC5はつい最近初めて買って聴いたばかりだから。
カーマイン・アピスはその道では有名なドラマー。
でも、普通はベック・ボガート&アピス、と言うのでしょうけど、僕は、ロッド・スチュワートの「アイム・セクシー」を共作した人、と、先に思い出します・・・
曲はホークウィンドの1972年のもので、ホークウィンドは弟が試しに買ったのをさらに試しに聴かせてもらったけど、なんというのかな、要はどっぷりとクスリにつかったロックですね・・・
12曲目Mrs. Major Tom feat. Sheryl Crow
なんと、なんと、なんとなんとわがシェリル・クロウが!!
「メジャー・トム夫人」を歌っているけれど、宇宙のトムも奥さんは意外とアーシーな人なんだ(笑)。
曲はトロントの芸術家でありミュージシャンであるK.I.A.ことカービー・イアン・アンダーセン Kirby Ian Andersenの2003年のもので、やはりデヴィッド・ボウイのコンセプトを受け継いだものとのこと。
シェリルはそういえば、「スター・トレック」が好きだったと何かで読んだような、読んでいないような・・・
シェリルは普通にあの声で「歌って」いて、ここにきて漸くまともな歌が出てきてほっとします。
それにしてもいい声だ・・・
Disc2
1曲目Empty Glass feat. Michael Schenker
こちらもなんと、マイケル・シェンカーが。
あ、僕は、マイケル・シェンカーは弟がCDを持っているのでたまに聴くというくらいで洗礼は受けていないのですが、ちょっと変わった人とは聞いているので、このようなお遊びに参加することに驚いています。
なおこの曲はオリジナルの調べがつきませんでした。
2曲目Lost In The Stars feat. Ernie Watts
アーニー・ワッツはジャズ系のミュージシャンとのことで、やはり知りませんでしたが、なんだかすごそうな人であるのは変わりない。
曲はカート・ヴェイルとマックスウェル・アンダーソン作曲による1949年同名ミュージカルのものとのことで、この辺りはアメリカンスタンダードと呼べるものかもしれません。
もっとも、ウィリアム・シャトナーはカナダ人であり、バンクーバー五輪の閉会式にも出ていましたね。
3曲目Learning To Fly feat. Edgar Froese
エドガー・フロイーズはタンジェリン・ドリームの創設者のひとりでもあるギタリスト。
タンジェリン・ドリームは聴いてみたいと思ったことは何度かあったというくらいで、やはり知らなかった。
曲はピンク・フロイド、ロジャー・ウォーターズ脱退後のものだけど、僕のリアルタイムで出てきたよく知っている曲。
イメージ的に即宇宙につながりますよね、歌われているのは地球上のことでも。
4曲目Mr. Spaceman feat. Dave Davies
デイヴ・デイヴィスはキンクスの弟で、キンクスで時々陰りがありすぎる声で歌っていますね。
ソロが出ているけれど、聴いたことがなく、いつか聴いてみたい。
曲はバーズの5枚目からですが、英米の違いはあれどキンクスとは同じ時代でイメージつながります。
5曲目Twilight Zone feat. Warren Haynes
ウォーレン・ヘインズは南部系のギタリスト兼ヴォーカリストで、ゴブズ・ミュールや今のオールマン・ブラザース・バンドで活躍する一方、ソロアルバムも出している人。
僕はソロを1枚持っていて、かなり気に入ったので、久しぶりに聴いてみよう。
曲はドイツのニューウェイヴ一派のゴールデン・イアリングが1982年に発表したものということだけど、まったくもって僕の管轄外・・・
6曲目Struggle
この曲はオリジナルでウィリアム・シャトナーとプロデューサーのアダム・ハミルトンが作曲したもの。
7曲目Iron Man feat. Zakk Wylde & Mike Inez
ブラック・サバスの代名詞的1曲に、オジー・オズボーンのアルバムで一緒に参加したザック・ワイルドとマイク・アイネスとくれば、もう悪乗りとしか言いようがない(笑)。
ザックはコンサートでもたくさん演奏した曲だろうし、僕もザックの演奏でライヴで聴いたことがある、だからもうザックはギターをうならせつつ自分のものにしています。
ザックはジャックダニエルズ何ケースで引き受けたんだろう(笑)。
この曲は旋律をつけて歌っています、念のため。
ところで、オジーに似せて歌っているのは誰だろう。
8曲目Planet Earth feat. Sterve Howe
最後はスティーヴ・ハウ。
とここでホットな情報で、スティーヴ・ハウがこのたびエイジアを脱退したそうです。
昨秋の来日公演ではエイジアの一員として演奏していただけに残念。
脱線しましたが、これはデュラン・デュランのデビュー曲、僕は当時は嫌いだったけどよく知っている。
最後は地球に感動の帰還をした、というわけですね。
これはあの「パッパパッ」というところがなんというかこう上手い、聴かせてくれる。
しかし、デュラン・デュランとスティーヴ・ハウが結びつくというのも面白い(笑)。
◇
お遊びではなく本気です。
いや、本気でお遊びをやり通してしまうところが、超一流のエンターティナーということなのでしょう。
ブックレットには、ブーツィーの他にリッチー・ブラックモア、キャンディス・ナイト、ピーター・フランプトンそしてエドガー・フロイーズが文章を寄せていますが、みな、シャトナーについて、ミュージシャンとしての尊敬の念を込めて語っています。
全曲を覚える勢いで真面目に聴き込む音楽ではないけれど、でも、時々かけて楽しむには意外と、いや、それ以上に充実したアルバムです。
たまにはこんなのがあってもいい、というやつですね。