ポール・マッカートニー幻の名曲をレコードプレイヤーで久しぶりに聴いた | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。


自然と音楽の森-Jan20RecordPlayer01

*Rainclouds

*Ebony & Ivory (Solo Version)

▼レインクラウズ

▼エボニー&アイヴォリー

☆Paul McCartney

★ポール・マッカートニー

released in 1982

2013/1/20


 レコードプレイヤーで久しぶりにレコードを聴きました。

 

 弟がネットで見つけて買ったもので、PCにUSBでつないでmp3音源として取り込めるというもの。

 メイカーはまったく知らないもので、写真のように大きなクリップのような形をしていて、据え置き型ではなく、手軽に取り出して聴けるのが利点のひとつ。

 レコードプレイヤーは持っていますが、なにせ部屋が狭く、それを置くならCDを置く場所にしたいので、もう10年以上前から物置に入ったまま。


 だからもう10年以上、レコードは聴いていません。

 しかしその間も、例えばCDで初めて聴いたバッド・カンパニーなど、蒐集目的でLPを買ってはいましたが。


 1980年代前半に10代で音楽生活を始めた僕は、もちろん、最初はレコードでした。

 ただし僕は、レコード偏重主義者というわけでもありません。

 僕の場合、まるで空気のように音楽をより身近に気楽に聴けることを好むので、扱いやすいCDのほうが僕には向いています。

 そもそも、レコード時代も、カセットテープに録音して聴いていたし。

 まあだから、僕のレコードは意外と状態がいいのではないかと(笑)。


 でも、やっぱり、レコードに対しての思い入れや愛着はありますね。

 買ったものは捨てたり売ったりしていないのはもちろん、いまだに買っているくらいだから。

 

 というわけで、久しぶりにレコードを聴くのは楽しかった。


 同梱のソフトウェアをPCにインストールして、USBで本体をつないで電源を入れると準備完了。

 電源はUSBから取るもので他の電気は使わないものですが(使うこともできる)、最近はUSBから電源をとる家電製品が出てきているのはしったいたけれど、僕自身は初めてで、先ずはそこに驚きました(笑)。



 最初に聴いたのは、Some Guys Have All The Luck / I Am Only Joking Rod Stewart

 僕が高校時代に大ヒットしたロッド・スチュワートのこの曲は、パースウェイダーズのカヴァー。


 タワーレコードで輸入盤のドーナツ盤を買ったものすが、この曲のシングルヴァージョン(ビデオヴァージョンでもある)は確かCD化されてないはず。

 といって、間奏をテープ編集で短くしただけのもので、あまり意味がないかもしれないkれど、でもやっぱり最初に聴いたヴァージョンにはそれなりの愛着があるから。


 ただ、聴いてみて、音飛びが数か所でしていて、最初は(どうせ安物だからと)プレイヤーを疑ったのですが、B面をかけると音飛びなく最後まで聴けたので、プレイヤーのせいではないよう。

 そんなに聴いたかな、プレイヤーのせいではないと書いたけど、やっぱり高い(普通の)据え置き型のものよりは音飛びしやすいとは思います。


 久しぶりに聴くと楽しくて、LP12インチシングルドーナツ盤など何枚も出して聴きましたが、それらはCDでも割とよく聴く曲ばかり。


 ちなみに、この機械自体にもスピーカーはついていますが、AMラジオよりひどいというくらいの音質で、あくまでも確認用、もしくは雰囲気といったものです。

 


 そして今日の本題、本当に久しぶりに聴いた2曲。


自然と音楽の森-Jan20RecordPlayerPaul

 Ebony & Ivory Paul McCartney & Stevie Wonder

 これは3曲入りの12インチシングル盤です。


 Ebony & Ivoryは、僕がビートルズを聴くようになって初めて出たポール・マッカートニーの、ビートルズのメンバーの曲。

 アルバムTUG OF WARは、ジョン・レノンの死後にポールが初めて出したアルバムとして注目を集めていた上に、スティーヴィー・ワンダーとの世紀のデュエットが実現、ポール8曲目のNo.1ヒットとなり、アルバムも1位を獲得、それがポールの現時点での最後の1位となっています。

 ジョンを意識したのか、ピアノの黒鍵と白鍵に喩えて愛と平和を呼びかけるものですが、良くも悪くもポールらしいお気楽な曲と当時はよく言われました。


 でも、曲は素晴らしい、だからそんなこと関係ない、と僕は昔から思っていますが(笑)。


 

 幻の名曲とは、B面のRainclouds。

 なぜ幻か、それは、この曲はいまだにCD化されていないから。


 当時はまだレコードの時代でしたが、後にCD化された際にもこの曲はCD化されないまま今に至っています。


 ポールのアルバムは、CDの時代になってすぐに、ビートルズよりも先にCD化されました。

 最初のCDはまだボーナストラックが入っていないアルバム本編だけのものでしたが、その時は仕方ない。


 1993年、ポールは、1970年の初のソロアルバムから1989年のFLOWERS IN THE DIRTまでのスタジオアルバムがすべてボーナストラック入りのリイシュー盤としてリリースされました。

 ところが、その時にもRaincloudsは収録されず、TUG OF WARのみボーナストラックがないかたちで出されました。


 その後も、ポールのボックスセットが出るのではないかと話があったり、何でもいいから何かの機会にひょっこりとどこかに収録されないかと期待していましたが、今のところ、僕が把握している限りでは出ていません。


 ポールは版権をUniversal系のHear Musicに移し、少しずつアルバムをリマスター・リイシューで出し直していて、現段階で4枚が出ていますが、今度こそ、TUG OF WARの番になった際には収録されて欲しい。


 ではなぜ、RaincloudsはCDに収録されていないのか。


 それが理由だと言いきることはしないけれど、この曲は、ジョン・レノンが射殺されたまさにその日に録音されていたのだという。

 

 そうだとすれば、何か因縁めいたものを感じてしまっているのかもしれない。

 

 ジョンはビートルズ時代にRainを作り、ポールもベースにコーラスに張り切っていたけれど、そことつながったのか。

 

 或いは、Raincloudsの歌詞に"Rainclouds hide the sun"というくだりがあって、そこに嫌なものを感じていた(いる)のか。

 ジョンのInstant Karma!に「僕らは月や星々や太陽のように輝き続ける」という歌詞があることが頭をよぎったのか。

 ジョンはポールにとっても太陽のような存在だっただろうし。


 考えすぎかもしれないけれど、でも、ポールはナイーヴな面もある人だから、『レット・イット・ビー』がいまだDVD化されていないのと同じ気持ちの一端を感じずにはいられません。


 Rainclouds、曲は、ミディアムスロウテンポ、アコースティックギターが基礎を作るポールお得意のカントリータッチの曲。


 一聴すると明るいんだけど、どこか陰りのようなものを感じてそれが後味として残る不思議な響き。

 「雨雲で太陽が隠れちゃったよ」と軽く言おうとしたけど、何かこう引っかかる、という感じかな。

 そこが余計に、ジョンのことで、ポールは気になったのかもしれない。


 ブリッジ(ここでは曲の中で一度しか出てこない部分という意味)がそのまま間奏になっていて、バグパイプのように聴こえる楽器が入ってきて賑やかに旋律を奏でる。

 カントリータッチとかいたけれど、ポールでいえば「夢の旅人」を彷彿とさせるスコットランド的な響きもあって、この辺はアメリカ音楽が若い頃から大好きだった英国人であるポールにしては自然な感覚なのでしょう。


 対位法も用いたコーラスワークが魅力的で、リンダ・マッカートニーの声も入っているけどポールがおそらく多重録音したものでしょう。

 右から左から上から横から後ろから、という感じでコーラスで遊んでいるのもポールらしいところ。

 

 全体的な響きは60年代風といえなくもない、ちょっと古臭い


 歌メロはもちろんとってもよくて、僕も中学時代に割とすぐに口ずさむようになっていました。


 シングルB面曲は、ある程度よく音楽を聴いてある程度以上の年代の人であれば、共通したイメージがあると思います。

 極端な話をすれば、2曲必要だから作った、A面の曲を邪魔しないで引き立てる、場合によっては引き立てなくてもよい、という存在。

 もちろんそうではない、両面とも大ヒットしたり、リリース後の評判で表裏を入れ替えたりという例もありますが、あくまでも一般論として。


 B面の曲に価値を見出すようになると、ただの音楽消費者を超えた音楽好きと呼べるのでしょう。 

 僕が若くて割と早い段階でそこにたどり着いたのは、この曲に巡り会えたから。


 今回聴いたのは、ほぼ30年振りということになりますね。

 レコードプレイヤーは大学生の頃までは出していたけれど、このレコードは聴かなくなっていたし。


 自分でも驚いたのは、途中の割と細かい部分、コーラスや間奏などを覚えていたこと。

 僕は曲の覚えが悪いといつもいいますが、10代の頭が柔らかかった頃はそうでもなかったのかな。

 いや、若い頃からある種のコンプレックスとして意識していたから、若い頃は今ほどじゃなかったのでしょう。

 もしくは、自分の記憶以上にこの曲をよく聴いていたのかもしれません。

 無理もないですよね、僕にとっては初めてのポールの新譜だったから。


 今回、mp3音源としてPCに取り込んだので、聴きたい時に聴けるようになりました。

 なんだかうれしい。



 そしてもう1曲。

 Ebony & Ivory (Solo Version)


 これはその通り、ポール・マッカートニーがすべてひとりで歌い通しているもので、演奏は聴く限り同じテイクだと思われます。


 一方でポールのヴォーカルはまったくの別テイクで、スティーヴィー・ワンダーが歌っている部分を補足したわけではありません。

 全体的に歌い方がラフで緩い。

 声も何も処理されていない生な感じの響きですが、よくできたサウンドの中ではなんだか細くて心もとない、周りと合っていないと感じます。

 そもそもポールの声があまり調子がよくなくて、特にフェイドアウト部分の"Ivory"という叫びは、オリジナルのスティーヴィーのそれと比べると声が出ていない。


 でも、いいんです。

 B面、というか12インチシングル用だから(ドーナツ盤のB面にはRaincloudsしか収録されていない)。

 あくまでもファンサービスの一環であり、僕はファンだからそれでいい。


 何より、歌の素晴らしさは変わらないですからね。

 今回あらためて、この曲は、歌うには最高にいい歌だと再認識、昨日は暫く、風呂の中でも歌っていました。



 いわゆる大物と呼ばれるロック世代のアーティストの中で、CD化されていない曲は、今ではもうほとんどないに近いくらい少ないでしょう。

 そんな中で、ポール・マッカートニーの、客演ではない自らの名義でCD化されていない曲があるというのは、驚きに近いものがあります。


 でも、それが、ポールに、ビートルズに、人間臭さを感じる部分ではないかと思います。

 きっと何かの考えや思いがあるのだろう、と思いめぐらせるのは楽しいことです。


 でもやっぱり、CDで聴きたい!

 

 繰り返し、Universalから出るTUG OF WARには、晴れてRaincloudsが収録されることを願ってやみません。

 Ebony & Ivoryのソロも、発表した以上は入れてほしいですね。