MERRY CHRISTMAS, BABY ロッド・スチュワート | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。


自然と音楽の森-Nov18RodStewartChriistmas


◎MERRY CHRISTMAS, BABY

▼メリー・クリスマス・ベイビー

☆Rod Stewart
★ロッド・スチュワート

released in 2012

CD-0314 2012/11/18


 今年もクリスマスアルバムの季節がやってきました。
 今年はうれしいことに、ロッド・スチュワートのクリスマスアルバムが出ました!

 10年前からアメリカン・スタンダードを歌ったアルバムを4枚出し、No.1になるほど大好評を博し、50歳を過ぎてなお芸域を広げたロッド。
 その路線を経験した以上、クリスマスアルバムが出ることはある程度予想できたことでした。
 それが今年、まだ暑くなる前の6月だったかな、Facebookでロッドのクリスマスアルバムが秋に出ると知り、やっぱり、と。
 期待通りのことをしてくれるのは、さすがはエンターティナー。


 聴くと、もう何も言うことがない、ロッドの世界。
 これを待っていた!

 だからもう書くことはない、今日はここで終わります。

 なんて無責任ですね(笑)、もちろんまだまだ続きます。


 クリスマスアルバムは、歌手がどの曲を選んで歌うかが楽しみでもあり興味があるところですが、今回のロッドは、あまりにもオーソドックスすぎる選曲といっていいでしょう。
 1曲のオリジナル以外、僕が知らない曲はありませんでした。
 

 しかしそれは、つまらないという意味ではなく、むしろ、さすが。
 そしてもちろん、聴かせ方はこの上なく素晴らしい。

 

 プロデュースとアレンジはかのデヴィッド・フォスター。

 それだけでもう、まろやかな大人の世界を期待できます。


 なお、僕が買ったのは16曲入りの輸入盤の特別盤ですが、国内盤も同じ内容になっています。


 

 1曲目Have Yourself A Merry Little Christmas
 ロッドは、とろけるように歌うけれど芯はむしろしっかりしている、そんな歌い方をアメリカン・スタンダードで身につけたようで、もうこの曲の最初から「全開」で歌い始めます。
 全開といっても、高揚するというわけではなく、ごく普通に歌う。
 その普通さが今のロッドのいいところですね。
 アコースティックギターとストリングスのバランスがいいアレンジ。


 2曲目Santa Claus Is Coming To Town

 この曲は街中のBGMではテンポが速いですが、ロッドはさすがというか、ジャズっぽいピアノを交えて落ち着いた雰囲気で聴かせます。
 でも子どもが聴くと、「サンタさんもっと早く」と思うかな(笑)。


 3曲目Winter Wonderland

 最初のゲストはカナダの国民的歌手、マイケル・ブーブレ。
 自分でCDを買って聴くのは初めての人だけど、なるほど声がいい。
 面白いのは、2人の歌うキィが違うのを合わせているところ。
 最初のヴァース1コーラス目はマイケル・ブーブレがCで歌い、2コーラス目に入るとロッドがFに変えて歌い継いでゆきます。
 Bメロになると2人で一緒に歌わなければならないわけですが、ロッドのキィのまま歌が進むので、マイケルはなんだか音が合わなくて困るような音のとりかたで進んでいくのがどことなくユーモラス。
 2人が合わさるところはコーラスとなって、ロッドが主旋律を歌い、マイケルが自由にコーラスをつける。
 これはすごいアレンジ、この2人とデヴィッド・フォスターにして初めてできる技術というか芸だと感心しました。
 ちなみに僕はマイケルのCのコードだと低い方が歌えなくて、その点でもやはりロッドは僕に合っているんだなと再確認(笑)。
 最後の転調した後の盛り上がりも素敵、これはいいアレンジ。


 4曲目White Christmas

 ストリングスを中心とした映画音楽的なアレンジですね。


 5曲目Merry Christmas, Baby
 アルバムタイトルに選んだこの曲のゲストはシーロー・グリーン。
 シーロー・グリーンは昨年の東日本大震災のチャリティアルバムに曲を提供していて名前を知ったR&B系の男性歌手で、ロナルド・アイズリーをさらに切れ味鋭くしたような声、なんだか周りの空気が切り裂かれそうなすごい声。
 元々R&Bっぽい曲だから、彼がゲストというのは大納得。

 表題曲だけあって力が入っていて、本格的R&B風アレンジに仕上がっています。
 "May good Lord be with you"と2人で繰り返し歌う最後のフェイドアウト部分もいいですが、そのくだりは、ロッドの名曲Forever Youngの冒頭でも歌われている言葉で、僕はその曲が大好き、とてもうれしくなりました。
 ところで、この曲の歌詞にこんなくだりがあります。
 "Santa came down the chimney, half past three"
 「サンタさんは3時半を回ると煙突を降りてくる」
 最初のその部分でロッドはその通りに歌うけれど、2回目のシーローは、"half past four"と、4時半にしています。

 昔より人々が夜更かしするようになった、ということか、それともロッドに敬意を表し、ロッドより先になってはいけないということかな(笑)。
 僕はとっても気に入りました、この中ではいちばんかな。
 シーロー・グリーンのアルバムも聴いてみよう。


 6曲目Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!
 ロッドは英語の発音が聴き取りやすいですね。
 だから僕にはいいのかも、て、すべていいのですが(笑)。
言葉を一度舌に絡ませまろやかにしてから発語しているように、言葉に重みとまろやかさと甘さが絡まっています。
 つっかかるようなギターのアルペジオがちょっと面白い響き。


 7曲目What Are You Doing New Year's Eve
 3人目のゲストはエラ・フィッツジェラルド。
 あれ、エラは確か・・・1996年に亡くなっています。
 種を明かせば、これはエラの録音からヴォーカルを抜き出して、今の演奏にのせてロッドが一緒に歌っている、ということでしょう。
 ナタリー・コールも父のナット・キング・コールとこのようにして「共演」していたし、別に驚くことでもないんだけど、でも驚いた(笑)。
 ロッドもエラと歌いたかったのでしょうね、念願がなかったというか。
 そう考えると、ロッドが純粋に音楽が好きな人であるのも分かってほっとするし、ますます親近感が湧いてきます。


 8曲目Blue Christmas
 この曲は誰が歌っても割と変わらないタイプの曲かな。
 でも、ロッドの今の歌い方だとあまりブルーじゃないかな。
 甘くまろやかな雰囲気だから、冗談でブルーと言ってみたかった、とか。


 9曲目Red-Suited Super Man
 オリジナルでロッド、デヴィッドと娘のエイミー・フォスターの共作。
 1曲だけオリジナルで、やはりすぐに覚えられない・・・(笑)・・・
 まだR&Bといえる頃の60年代ソウルの雰囲気の曲。
 というより、サム・クック風と言うべきかな。


 10曲目When You Wish Upon A Star

 あまりにも有名な「星に願いを」。
 でもこれはクリスマスソングではないし、実際、クリスマスアルバムでこの曲は僕は初めてです。
 しかしクリスマスにはこういう気持ちになるのは分かります。
 自作も含め、クリスマスソングではない曲をクリスマスに歌うのも、その人の考え、楽しみ方が感じられて楽しいですね。
 しかし、この有名な曲をクリスマスソングとして歌うのは、ありそうでなかった、コロンブスの卵的発想と思いました。


 11曲目We Three Kings

 4人目のゲストはメアリー・J・ブライジ。
 メアリーは、3年前のソウルのカヴァーアルバムSOULBOOKにも参加していて、今やすっかりロッドのお気に入りなのでしょうね。
 この曲はメアリーの個性が反映されているのか、ほぼ唯一、緊張感が漂う、重たいアレンジになっています。
 元々そういう曲ですが、これを歌うと決めた時、ロッドの頭の中にはメアリーがすぐに浮かんだのかもしれない。
 彼女の切迫感がある歌い方はさすが、僕も大好き。


 12曲目Silent Night

 僕の家にあるクリスマスアルバムでは最も多く歌われている曲。
 日本ですら小学生でも知っている曲ですからね、当然かな。

 子どものコーラスが入って盛り上がり、気持ちも引き締まります。


 13曲目Auld Lang Syne
 本編最後は「蛍の光」、やはり最後というイメージが強い曲。
 これがまた感動的に素晴らしい。
 元々スコットランド民謡だから、スコッティシュのロッドが、バグパイプを入れてスコットランド風にアレンジするのは当然。
 今までなかったのが不思議なくらい、自然に響いてきます。
 この曲のみロッドと朋友のケヴィン・セイヴィガーがプロデュース。
 デヴィッドはストリングスのアレンジのみを担当しているようですが、これはスコットランドの雰囲気にこだわりたかったのでしょうね。
 曲自体が感動的な上に、このアレンジは最高に素晴らしい。
 世界を巡ったこの曲が、郷土に感動の帰還を果たしました。

 
 14曲目What Child Is This

 ここからはボーナストラック扱い。
 この歌の旋律はかの有名なGreensleevesのものですが、調べると、こちらが先にクリスマスソングとして19世紀に作られ、後にGreensleevesになった、ということが分かりました。
 へえ、そうなんだ、逆かと思っていました。
 そういえば、ロッドのデビューアルバムである、ジェフ・ベックのTRUTHで、ジェフがGreensleevesを弾いているけれど、それも頭にあったのかな、なかったとしても楽しいつながりですね。
 もしかして、それはインストゥルメンタルだから、当時、俺に歌わせろ、と思いながら聴いていたとか・・・(笑)・・・


 15曲目The Christmas Song (Chestnuts Roasting On An Open Fire)

 ロック系クリスマスアルバムには定番中の定番の曲。
 結果として聴けるのはうれしいけれど、当初の13曲入りには入っていないのがなぜかちょっと気になりますね。
 録音は一緒に行っているようで出来がどうこうではないはず。
 考えらえるのは、今でもやはりLPのことを考えていて、16曲では多いということかもしれない、ということかな。
 まあ、つべこべいわず、この大好きな曲をロッドでも聴けるのはうれしいですね、ほんとそれだけ(笑)。


 16曲目Silver Bells

 この曲は僕が地味に大好きなクリスマスソング。
 まあ、基本的にみんな好きだけど、この曲はなぜか、聴いていて気持ちの入り方が違うのを感じます。
 そんなことあり得ないけど、自分でクリスマスアルバムを作るなら、この曲は間違いなく選ぶし、きっと後ろのほうに入れると思います。
 なぜかと書いたけど、歌の旋律がやっぱりいいな、これは特に。
 というわけで、ロッドのクリスマスアルバムが終わりました。


 僕はクリスマスパーティをやったり、恋人とどこかに出かけたりということはしない人間。

 でも、クリスマスケーキは買うし、クリスマスアルバム、クリスマスソングは普通に聴きます。
 普通に、というのが僕のキーワードですからね(笑)。


 クリスマスアルバムを聴くのは、洋楽の楽しさのひとつですね。


 でも、今まで何十枚とクリスマスアルバムを聴いてきたけれど、何かこう足りない、足りない、と思っていた心の穴のひとつが、ロッドが出たことで漸く満たされた今年でした。