作家の丸谷才一さんが亡くなられました。
心不全、享年87歳。
僕がいちばん好きな日本人の作家が丸谷さん。
ちょうど1年ほど前の秋の頃、エッセイ集「月とメロン」を読んで魅了されました。
博識であるのはもちろんだけど、話の展開が面白く、ユーモアがあって、ひとりで読む時は思わず声を出して笑ってしまうくらい。
もちろん丸谷さんは以前から知っていて、あの旧かなづかいで文章を書く人でしょ、くらいにしか思っていなかったのですが、その1冊で大きく変わり、以降は切らさずに丸谷さんの本を読み続けています。
Amazonでもたくさん古本を買った。
ネットの古本は状態を自分で見極められないので(頼めば写真を送ってくれるところもあるのでしょうけど)、買っていたみがひどくて失敗したことも何度か。
丸谷さんの僕がいちばん好きな本は「思考のレッスン」。
僕の考え方も丸谷さんにいろんな部分でかなり近いことが分かって、これは座右の書となりました。
僕は、本を読むのは好きだけど、日本文学が大の苦手です。
それがなぜか、丸谷さんの本を読んで分かりました。
丸谷さんも基本的にはいわゆる日本文学は「違う」と感じていた部分もあったことも分かり、そうか、僕が一方的に間違っていたわけでもなさそうだ、と思えるようになりました。
「思考のレッスン」で僕がいちばん勇気づけれらたこと。
自分の考えを表す時は、人に笑われることを覚悟して書け。
僕の音楽記事はまさにそうだよな、と、自己分析しています。
きっと、通の人が僕の記事を読むと、バカだと思うのでしょう。
でも構わない、あくまでも自分が感じたように書いていこう、と、丸谷さんに背中を押されました。
もひとつ、音楽でも何でも評論をするという行為について。
よく、そんなこと言うなら自分で作ってみろ、と反論する人がいるけれど、丸谷さんは、評論することと自分でできることは基本的には違う能力だから、気にせず書いている、というのも励みになる部分でした。
丸谷さんについては、音楽と絡めて記事を上げたいとずっと思っていたのですが、丸谷さんがポピュラー音楽はお好きではないらしく、洋楽の話は僕が読んだ中では皆無だったので、なかなか結びつけられずにいました。
でも、ひとつだけ、近いうちにひとまず書いてみようと。
大げさのようで大げさではなく、丸谷さんなしの生活はもはや考えられない。
一度、会ってお話をしたいと、いつしか思うようになっていましたが、しかしそれも今日、夢と終わりました。
大好きになってから1年でお別れしなければならないのは寂しいですね。
でも、なぜか、悲しいとはあまり思っていない。
87歳だから、大往生といっていいのかな、それもあるけれど。
やっぱり、これからも丸谷さんの本を読み続けることはできるから。
ところで、この文章を読まれた方は、何かいろいろと書き足りないと感じられるかもしれません。
特に、丸谷さんには日本文学は「違う」と感じる部分があった、という辺り。
もちろん僕の文章力だからそれは当たり前ですが、でも、今日に限っては、どうかご自身でどれか1冊でもお読みいただければ、との願いを込めてのことでした。
丸谷才一さん、安らかにお眠りください。