NORTH マッチボックス・トゥエンティ | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。

自然と音楽の森-Sept25MatchboxTwenty


◎NORTH

▼ノース

☆Matchbox Twenty

★マッチボックス・トゥエンティ

released in 2012

CD-0288 2012/9/25


 マッチボックス・トゥエンティの新譜が出ました。


 ロブ・トーマスのソロの後に新曲が入ったベスト盤が出て、バンドのほうはどうなるかと思っていたら、意外と早く新譜が出ました。


 ロブは若手のソングライターとしても注目されていて、サンタナのSmoothを共作し歌ってグラミー賞を受賞するほどの人物ですが、今回ももちろん歌、歌、歌のアルバムになっています。

 ロックは演奏が面白い、聴きどころがあることも大切な要素だと思う。

 でも、MTの音楽は、歌ばかりが印象に残り、聴き終ると演奏のことはほとんど頭に残っていません。

 あまりにもまっすぐに歌うこのバンドの音楽は、もしかして、つまらない、と感じる人が多いかもしれない。

 音楽的な細工も仕掛けもギミックもないしテクニックも普通。
 演奏はあくまでも「伴奏」、時代の音に乗ったわけでもないし、昔から何ひとつ変わっていない。
 ただ、その歌に会った伴奏スタイルをあてはめてゆくだけ。
 バカがつくくらいバカ正直にいい歌を歌うことだけを考えている。


 演奏が魅力的に響かないこれは、ロックではないのか?

 

 では、何と呼べばいいのか?


 ニュアンス的には、ソウルの白人版というところかもしれない。

 でも、もちろんソウルのような歌い方をするわけでもないし、音の硬さ、特にエレクトリック・ギターの響きは確かにロック的なものですが。

 では、ソフトロックやAORというと、それらには独特の響きがあるし、やっぱりこの音の硬さはソフトではない。

 結局のところ、広義のロックの中に含まれる、歌が中心のロック、ということになるのでしょうか。


 ロックはいろいろなことをしてきたわけだから、そんなバンドがひとつくらいあってもいいんじゃないかな。
 むしろそれが個性となって、他とは明らかに違うと感じさせる部分、魅力、だと思います。


 でも、書きながら思ったけど、最近のU2に近いといえば近いですね。

 まあU2は演奏も僕は好きですが、歌が中心で音が硬めのロック、ということですね。


 歌は相変わらずクサい(笑)。

 歌メロはメリハリがあって押しが強くて覚えやすいものですが、そこに乗っかる言葉との兼ね合いでクサい響きになりやすいですね。
 重たいソウル風の11曲目Like Sugarの"Sugar"、子どものような心を持った13曲目I Believe In Everything"のDarling"なんてクサい言葉を、今の時代に臆面もなく言えるなあ、と感心してしまう。
 しかもそれを自分で口ずさむとこっ恥ずかしい(笑)。
 そもそも曲名に使われる言葉が、今の時代にこんな純朴な人がいるんだとある意味感心するようなものばかり。

 あ、いつものように、これはほめてます、1000%。

 クサいこともロックには必要であり、歌好き人間の僕としては、そこがまさに好きなところですから。


 曲も少し。


 1曲目Parade、久しぶりのアルバムだから1曲目は特に注目しますが、これは、ああマッチボックス・トゥエンティだなあ、と、それ以上でも以下でもない、いい意味でそんな曲でほっとしました。

 

 4曲目Our Songはアップテンポの明るいロック風の曲で、歌メロと曲名の言葉でたたみかけてくるのは得意技、とても印象に残る。


 6曲目I Willはカントリー風のバラード、涼しい響き。


 14曲目Straight For This Lifeはしかし少し驚いた。

 1960年代終盤風、もっと言えばバッファロー・スプリングフィールド風のアコースティック・ギターを中心としたバラード風の曲で、音楽的には面白くないと書いたけど、実はこういう芸も持っていたんだな、と。

 まあ、アメリカ人だからそういう要素は自然と体に流れているものなのかもしれないけれど。

 さらに言うなら、コーラスが後期ビートルズ風。
 歌はもちろんロブ・トーマス節炸裂だけど、この曲を聴いて、ちょっとだけ彼らへの見方が変わりました。

 僕のこのアルバムのベストトラックはこれかな。

 

 ロブ・トーマスは熱い人で、ひと頃に比べれば少し涼しくはなったけれど、熱い息で厚い歌を歌われると、慣れない人であれば聴いていて体力負けしてしまうのではないか、という懸念のようなものもあります。
 落ち着いてじっくりと聴くよりは、元気づけで聴いたり、まだやったことはないけど車で聴くのがいい音楽ですね。

 僕が今よく聴く状況としては、帰宅後のまだ落ち着かない時にかけて、お茶を飲んだり、買ってきたものを整理したり、片づけたりしつつ気持ちを少しずつ家の中に戻す時、これがぴったりですね。

 15曲あるので、いくらなんでもそんなに時間はかからない、すると後半は落ち着いて聴くことができる。

 最初から落ち着いて聴こうと思うと音楽世界に入りきれないから、この流れがいいんです。

 


 ところで、僕が買ったのは海外特別盤15曲入りCDで、HMVでは(15 tracks)と記されているものです。

 海外通常盤は12曲入りで、僕が聴いているものの後ろ3曲はそちらには入っていません。

 最近は、グレン・フライもそうでしたが、リリースする時点で最初から曲が多い特別(限定)盤と、少ない通常盤を出すものが結構あって、その場合、ボーナストラックというのは少しニュアンスが違うなと感じます。

 HMVでは今日の時点で100円も違わないので、そうなるとやっぱり曲が多いほうを買うんじゃないかな。

 

 まあそれは余談ですが、一方で日本盤は16曲入りとのこと。

 日本盤には、僕が買った特別盤の多い3曲のうち2曲が収録され、さらに日本盤のみの曲が2曲入っています。

 逆に僕が買った特別盤の最後の曲Waiting On A Trainは日本盤では聴けません。
 事情は複雑ですが、ファンとしては国内盤もいつか買わないと(笑)。

 おまけに国内盤はジャケットも違います。


 

 ところで、いつもの日本語に関する余談というか戯言ですが、このバンド、日本のレコード会社の表記が
「マッチボックス・トゥエンティ」であることに今回気づきました。
 僕はずっと、「マッチボックス・トウェンティ」と書いてきましたが、「ウ」と「エ」の大小が逆ということです。
 「トウェンティ」だと"Twenty"の"t"に母音があることになってしまうけれど、でも、「トゥエンティ」と書くと"wen"の部分の音がうまく表せないので、僕はそのように書いていました。
 僕の考えを厳密に書けば「トゥウェンティ」になるのでしょうけど、それでは「ウ」が小大で2つ続くのは字面としてくどいですね。

 まあ発音する場合はどのみち英語で言うから同じだけど、ちょっと気になりました。


 

 とにかくいい歌が詰まったアルバムではあるし、歌を聴きたい人にはいいアルバムには違いありません。

 ファンとしては、またロブの歌が聴けてもうそれだけで満足。
 でも、それ以上の普遍的な歌がここにはあると信じています。



 そうそう、北海道に住む人間としては、"North"というタイトルもうれしいですね(笑)。