FROM THE CRADLE エリック・クラプトン | 自然と音楽の森

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自然と音楽の森-July29EricClapton


◎FROM THE CRADLE

▼フロム・ザ・クレイドル

☆Eric Clapton

★エリック・クラプトン

released in1994

CD-0265 2012/7/29

Eric Clapton-04


 今日はエリック・クラプトン。


 ロンドン五輪が開幕しましたが、僕も関連するCDを紹介しようと思っていたものの、どうもうまくつながらなかったので、五輪とは関係なく純粋に昨日聴いたCDにしました。

 まあ、強いていうなら英国人(笑)。



 僕は昨年の夏にブルーズを傾聴し、秋からブルーズも普通に聴くようになったのですが、このアルバムは、エリック・クラプトンをずっと買っていた以上当然のごとく新譜として出た18年前に買って聴きました。

 でも、昨夏以降このアルバムを聴くのは昨日が初めて。

 別に避けていたわけでもなく、特に深い理由はなくて、近いうちに聴いてみようとは思っていました。


 きっかけは、一昨日、CDの棚で他のCDを探していたところ、これの国内盤がひょっこりとあらぬところから出てきたことでしたが、戻すついでに聴いてみよう、ただそれだけ(笑)。

 でも、それはきっと、そろそろ聴いてくれとCDに呼ばれたのかもしれません。



 このアルバムについて、当時は、UNPLUGGEDで時代をつかみ、ブルーズが復権した世の中の流れに乗って、エリックがついに念願のブルーズのカヴァーアルバムを作った、という話を聴きました。

 

 僕は当時は「本物の」ブルーズは数枚しか聴いていなかったので、このどこがブルージーなのかブルージーではないのかは分かりようがありませんでした。

 ただ、ゲイリー・ムーア同様、ブルーズを歌うにしては声がきれいだなと。

 きれいというのは、ステレオタイプだけど、ブルーズは酒やたばこで声をつぶした歌い方というイメージを当時は持っていて、それとは合致しないというくらいの意味です。


 当時はこのアルバムについて音楽雑誌などでいろいろ言われていたかと思うけど、僕はもうその頃は音楽雑誌は「レコード・コレクターズ」しか読んでいなかったので、何をどう言われていたのかは覚えていません。

 ただ、やっぱり「本物」にはなれなかったか、というニュアンスのものが多かったような、また聞きまた読みだけど、そう感じていました。


 ちなみに、僕の友だちでソウルマニアのMは、エリックについてこんなことを言っていました。

 「エリックが真面目な顔をしてブルーズを本気でやろうとしているのはちょっと勘弁願いたい」

 Mはエリック自体がそもそもあまり好きじゃない、とのこと。



 僕が初めてエリック・クラプトンのコンサートに行ったのは、意外にもというか、このアルバムのツアーでした。


 ただ、その前に、エリックも参加したジョージ・ハリスンの来日公演に行っていたので、エリック自体を見たのは初めてではなかったのですが。


 エリックのコンサートはそれまで2回ほど行きそびれていました。


 最初は1987年、僕が大学1年で再び東京に出た年の確か秋でしたが、ロバート・クレイとのジョイントコンサートで、ロバート・クレイは聴いていたので行きたかったのですが、一緒に行く人がいなくてやめました。

 今思うと、これは行っておきたかった。

 

 次は1991年の秋だったと思うけど、武道館で何回もやったあのツアー。

 当時の彼女と行くつもりでチケットを2枚買ったんだけど、彼女が行けなくなったので行く気がなくなり、2枚とも友だちに売りました。

 とてもいいコンサートだったと後で言われました。


 まあそんなわけで、1994年かな、もう95年になっていたかな、ついにコンサートに行きました。



 当時は、大学時代に知り合った友だちSとよく音楽の話をしていました。


 Sは僕がクイーンのファンに仕立て上げた友だちで、エリック・クラプトンはUNPLUGGEDを聞きかじったくらいだったけど、或る日電話がかかってきていきなり、エリックのコンサートに行きたいけど行かないのかと言われて驚きました。

 自分は行くつもりだったので、じゃあチケットを2枚取っておくということになり、青山チケットエージェンシーに並びに行って買いました。

 今でも、その日、チケットを買ってから乃木坂駅までの道のりの風景をなぜかよく覚えていて、防衛庁が当時はあったんですよね、塀が高くて、塀の向こうには緑がたくさんあって、都会の中でも広々とした感じがある場所だなと思いました。


 まあそれはいいとして、チケットを取ってから友だちSと会い、どうして急に行きたいと言い出したのかと聞きました。


 Sは当時は占いや人の前世のことに凝っていて、そこで聞いたエリック・クラプトンの話が印象的だったからと答えました。


 曰く、エリック・クラプトンは前世はラマ僧で、あまりよい行いをしていなかったので、今世では徳を得るために努力に努力を重ねてきた人だという。

 S自身の前世は江戸時代の高利貸しで人をいたぶってばかりいたので、今世では努力して徳を得たい、だからエリックは励みになる、というのがSの説明でした。

 ちなみにスティーヴィー・ワンダーは前世では天使のような人だったので今世ではあれだけ素晴らしい曲がたくさん作れるのだ、とも話していました。

 断っておきますが、あくまでもSの話でありそれを僕の記憶に基づいて書いただけであって、これは僕のエリックに対する考え方ではない、それはあしからずご了承ください。


 理由は何でもいい。

 僕は基本的にはコンサートにはひとりで行きたくない人間だから、行ってくれるだけでもうれしかった。

 しかも当然のことながらSのチケット代はS自身が持つので僕の負担もないし(笑)。 

 コンサートは、終わってから、あれこれ話したいですよね。



 コンサートは、ほんとうにブルーズしかやらないのか、そんなことないだろうオリジナルも少しはやるだろう、いややらないんじゃないか、と、事前に巷ではちょっとした話題になっていました。

 

 実際に行くと、ほんとうにブルーズ系のカヴァーしか演奏しませんでした。 

 このアルバムとUNPLUGGEDのブルーズ系の曲を中心に、多分、それまでエリックが演奏してきたブルーズナンバーもあったと思います。


 思います、というのは、僕も実際に曲はよく分からなかったのです。

 そもそもFROM THE CRADLEだってすごくよく聴き込んでいたわけではなかった。

 元々知っていたHoochie Coochie Manと、"She had a nerve"(ジャン)と何度も繰り返すのが印象的なFive Long Years、そしてMTVでビデオクリップをやっていたMotherless Childくらいしか分からなかった。

 あとはほんと、思い出せない、覚えていない。

 その3曲の時はしかし、おおきたきたっ、となりましたが(笑)、特にフーチーはそのコンサートで聴いたおかげで僕の大のお気に入りの曲になりました。



 コンサートではとても印象的かつ残念だったことが。

 アンコールが始まっておそらく最後の曲だろうとなったところで、何かは忘れたけど当然のごとくブルーズナンバーでエリックのオリジナルではない曲でしたが、客の一部が立ち上がって帰り始め、曲が進むにつれて人の列が長くなっていったことでした。


 例えばWonderful TonightやLay Down SallyそれにクリームのSunshine Of Your Loveなどを演奏してほしかったのに裏切られた、という思いだったのでしょうね。


 僕は、もったいないと思ったし、それ以前に失礼じゃないかと思ったのですが、エリックはあまり気にしていなかったのかな。

 その時のエリックの思いなどは、聞いてみたい気もするけれど、日本人としては聞くのが恐い、そんな気持ちもあります。



 友だちSはしかし、コンサートはとってもよかったと言いました。

 アルバムはこれとUNPLUGGEDの2枚はひと通り聴いてきたとはいうものの僕以上に曲が分からなかったはずですが、曲がどうか以前に、エリック・クラプトンという人に触れたかったのだということです。

 Sはギターは弾けないけれど、演奏している手の動き、体全体の動きを見ているだけで楽しくて、今風の言い方をすればパワーをもらえそうだ、そんな話もしていました。


 客が終わる前に帰ったことは、昔からのファンはそういうものなのではないかと理解を示しました。



 音楽に詳しい人は、「ブルーズを感じる/感じない」と言い、「ブルーズを感じる」ことだけを判断基準にして話す人がたまにいらっしゃいます。

 僕もかつてはそこにこだわろうとしたことはあったし、音楽の話をする上では重要なことであるとは思います。


 エリック・クラプトンのこれはどうなのでしょうね。

 

 でも、最近は、ブルーズという音楽が好きでそれを演奏することが気持ちいい、という思いが伝わってくるのであれば、僕はそういう音楽はかなり好きで聴いていて気持ちがいい、ということに気づきました。


 「ブルーズを感じる」ことと「ブルーズが気持ちいい」ことはイコールではないと思います。

 

 もし、黒人ブルーズメン以外には「ブルーズを感じない」という考えに囚われるのであれば、黒人以外はブルーズを演奏して楽しんではいけない、ということにもなりかねません。

 ブルーズを感じない音楽はブルーズと呼んではいけない、とか。


 でも、それじゃ窮屈じゃないかな。


 そもそも僕はロック人間なので、演奏していて楽しいことが伝わり、さらには聴いた人間が同じようにやってみたいと思うのであればそれでいいと思います。


 僕はジョン・メイヤーの記事で、彼が「ブルーズの呪縛から解かれた世代」と書きましたが、それはここで書いたようなことです。

 そして僕自身も、かつてはブルーズの呪縛の中にいました。

 

 エリックはそもそも存在自体がブルーズの呪縛であり、虐げられることがよろこびであるかのように身も心も捧げているような姿勢が見られます。

 友だちMはそこが好きじゃないようですが、でも考えようによってはそれは、極めてロック的な自虐的精神があってのことかもしれません。

 

 こう言っては何ですが、かわいいもんです(笑)。


 

 などなど。

 たまたま見つけたCDを昨日車で聴いて、糸を手繰り寄せるようにいろいろなことを思い出したので、この際だから書いてまとめて記事にしようと思いました。

 

 だから今回は、各曲について云々は敢えて書かないでおきます。


 ただ、さすがにそれからもたくさんの音楽を聴き、昨年からは「本物の」ブルーズも聴いているので、今回かけると、ああこれか、この曲が入っているんだって、気づいたというか、思いますね。


 特にBlues Before Sunriseの唸るようなスライドギターはエルモア・ジェイムズ風だとか、It Hurts Me Toはそのエルモアの代表曲だとか。

 なんて、エルモア・ジェイムズしか気づいていないようですね、失礼しました(笑)。


 僕もブルーズはあまりたくさん聴いてきているわけではなく、ここでエリックが演奏している曲のオリジナルというか古い録音のものの過半は聴いたことがないわけですが、そうだな、このアルバムを軸にまたブルーズ巡りしようかな、と思いました。


 若い世代にそうした気持ちを起こさせるのは、カヴァー曲を演奏することの意味なのでしょうね。


 あ、若い世代などと書きましたが、僕はエリックよりは若いというだけで、僕自身が若いとはもはや思っていません(笑)。