◎AFTER HOURS
▼アフター・アワーズ
☆Glen Frey
★グレン・フライ
released in 2012
CD-0257 2012/7/8
グレン・フライの新譜を取り上げます。
ジョー・ウォルシュに続いて元、あ、いや、現イーグルスのソロアルバム、うれしいですね。
今回はアメリカン・スタンダード集ということで、ポール・マッカートニーまでがやるようになった今の世の中、でも正直言って僕は最初は「またか」と、迷ってひと月ほど買うのを躊躇していました。
それでも買ったのは、HMVで1万円でポイント10倍にするのに頭数を揃えた、というのが実情だけど、でもほんとに聴いてみたいとは思っていたので、単にきっかけになっただけ、買う気がなかったわけではない、だからまあそれはいい。
聴くと、これが、とっても気に入ってしまったんですよ。
アメリカン・スタンダード集だから音楽について特に言うべきこともないかな。
斬新な解釈をしているわけでもなく、まあ一般的なイメージとしての、夜のバーで聴いたり、クラブで歌ったりするような類いの音楽です。
ただし、ただしがあるのですが、それは後半に書くとして、こういうアルバムは、アーティストの個性を楽しむものでしょうね、とだけ先に書いておきます。
僕が買ったのは14曲入りの限定盤ですが、知っていたのはたったの2曲。
ううん、アメスタの世界はまだまだ広くて深そうだ、というのが第一印象。
知っていた2曲のうち1曲は1曲目For Sentimental Reasons、これはサム・クックが歌ってますね。
サムのことを話すと長くなるので、これは、僕が世の中でいちばん好きなライヴ盤であるサムのHARLEM SQUAREに入っている、もうそれだけで特別な存在の曲。
グレンはいきなりムード満点で迫ってきます。
もう1曲は8曲目Caroline,No、あれ、これはビーチ・ボーイズの曲じゃないか?
そもそもボーイズがカヴァーなのかと思いきや、ブックレットに出ている作曲者の名前は(Brian Wilson / Tony Asher)、つまりオリジナルか。
ビーチ・ボーイズをここで取り上げるというのは、アメリカ人にとってはもはやボーイズはスタンダードであるという意味、そしてボーイズはアメスタのよいところを継承していた、という二重の意味での敬意を感じます。
ここでのグレンは、しっとりと歌い上げていて、ほんとうに素晴らしい。
申し訳ないけど、こんなに歌が上手い人だったっけ、と思ったくらい。
ここでブックレットをよく見ると、9曲目The Look Of Loveはクレジットが(Burt Bacharach / Hal David)、バート・バカラックが誰かに提供した曲ということかな。
うちにバート・バカラックの曲を集めたボックスセットがあって、そこに入ってそうだな、ということは一度は耳にしているだろうな、このタイトルは(ABCじゃなくって)見覚えがあるし、と思いつつ、やはり曲の覚えが悪いことに自分自身うんざり・・・(笑)・・・
閑話休題、僕は今、この記事を遠征先の宿で書いています。
最近、ネットが使える宿が増えたのはうれしいしありがたい。
今回はグレン・フライのCDは持ってきて、遠征先は犬がいないし夜の時間を持て余すので(笑)、記事をひとつ上げようと思っていました。
犬とCDの写真ももちろん事前に撮ってあったもの。
しかし、さすがにバート・バカラックのボックスセットは持ってきていない。
帰宅して調べてから書き直そうかと思ったのですが、勢いがあるので書いてしまいます(笑)。
家に帰ったら調べて補足したいと思います。
13曲目Same Gilrはランディ・ニューマンの曲。
ランディ・ニューマンは昨年真面目に聴き始めて1枚を除いてアルバムを揃えたのですが、そういえばまだここで記事にしていなかった。
この曲は、その買っていない1枚に入っている可能性はあるけど、でも昨年一度は聴いている可能性もあるわけで、ほんと曲を覚えられない・・・
それはいいとして、バート・バカラックとランディ・ニューマンも多分一般的な解釈としてはアメリカン・スタンダードではないと思うんだけど、でも、ビーチ・ボーイズと同じく、アメリカ人にはスタンダードであり、彼らはアメスタのいい部分を引き継いでいる人という解釈なのでしょうね。
14曲目After Hours、表題曲はグレン・フライの自作曲、Jack Tempchinとの共作。
ここに収められたような曲が好きだという自らの思いを表すのに、自作曲が1曲入っているのは違和感はなく、かえって自然なことだと思います。
他の曲もみないいんだけど、特に気に入った曲として、2曲目My Buddy、4曲目Route 66、5曲目The Shadow Of Your Smile、といったところを挙げておきます。
◇
さて後半。
このアルバムは最初から素晴らしいと思った反面、最初から「あれっ?」と思った部分もありました。
グレン・フライが健康的すぎるのです。
酒場が似合う音楽、酒場といえば、煙草の煙、暗いテーブル、などなど、あまりきれいじゃない、退廃的ともいえる雰囲気というイメージが、ステレオタイプだけど、あるかと思います。
特に僕はそういうところにはめったに行かないので、余計にそう。
でも、グレンの歌い方、よく伸びて張りがあって切れもい元気な声は、健康そのものという感じがしてしまい、どうもこのステレオタイプのお酒が合う音楽というイメージには合わないのです。
こういうアメスタは今までなかったかも。
ここから僕の悪い癖、勝手な想像が広がってしまいました。
グレン・フライは、お酒は好きなことは好きそうだし、たくさん飲みそう、それは想像に難くない。
でも、お酒に負けたことはなく、どんなに酔っても最後はきちんと折り目正しく挨拶してまっすぐ歩いて帰る、そして翌日は朝から元気、という人のように僕は想像しました。
もちろん、お酒を好きな人がみんなステレオタイプであるわけはない、それは分かります。
グレンは、お酒との健康的で健全な付き合いができる人というイメージが、僕はこれを聴いて出来上がりました。
間違っても、お酒を医師に止められているのに、そんなこと気にしないで飲んでいることを言いふらすようなこともしない。
もちろん飲酒運転なんてはじめっから頭にない。
このグレン・フライのアルバムは、スポーツジムに併設された、或いは真向いにあるバーで、汗を流した後元気にお酒を飲んで空気を浴びながら歩いて帰る、というイメージです。
なんて、あり得ないようなよく分からない独りよがりの喩えですが・・・
ちなみに僕は、お酒は、飲めないわけではないけどなくてもいいという人間。
日常的には飲まないし、飲み会でもお酒ではなくウーロン茶などを飲み、仲のいい友だちと会う時にしか飲みません。
グレン・フライのこのアルバムが気に入ったのは、お酒におぼれるような人ではない、その部分への信頼を感じたからかな、と僕は思っています。
なんて、基本的にはもちろん分かりやすく記事を書くつもりではいるけれど、今回はなんだか分かりにくくなったかもしれません(笑)。
いや、笑いごとじゃなく、そこはお詫びします。
しかし一方で、このアルバムを予想外にとっても気に入ったということは伝わったかと。
今も宿で聴いてますよ、いいですね。
こういう音楽をひとりで聴いて寂しく・・・ならないですね(笑)。
むしろ元気になるアルバムですよ。
アメリカン・スタンダードのアルバムも、そろそろ、抵抗なく聴けるようになってきたかな(笑)。
でもそうなると、次は誰がアメスタ集を出してくれるんだろう、楽しみだなって、まったくファンというのは勝手なものですね(笑)。