◎FOR THE GOOD TIMES
▼フォー・ザ・グッド・タイムス
☆The Little Willies
★ザ・リトル・ウィリーズ
released in 2012
CD-0193 2012/1/27
Norah Jones-02
ザ・リトル・ウィリーズのこのCD、2012年に出た新譜としては初めての記事です。
ザ・リトル・ウィリーズはノラ・ジョーンズがカントリー系の主にカバー曲を演奏する変名プロジェクトバンド。
ノラがメインのヴォーカルとピアノ、アコースティック・ギターと一部メインヴォーカルがリチャード・ジュリアン、ギターとコーラスのジム・カンピロンゴ、ベースとコーラスのリー・アレグザンダー、ドラムスとコーラスがダン・リーザー、そして1曲のみストリングスでロブ・ムースというメンバー。
2006年に1枚目が出ていたのをなんとなく聞いてはいたけど買っておらず、今回その1枚目も一緒に買いました。
聴くとその通りカントリーだけど、でも、ノラ・ジョーンズのセンスが単なるカントリーという狭い世界に押し込めずに、もっと普遍的なポップスとして響いてきます。
ノラ・ジョーンズは2枚目ではだいぶカントリー色が出ていたけど、でも彼女自身、これはカントリー、これはロック、これはジャズとはあまり意識しないで聴いてきてそれが体にしみこんでいるのではないかな。
ただし、本格的なカントリーをアルバム1枚通してやるとなると心構えのようなものは必要で、それがこの変名バンドということなのでしょう。
僕自身は単純にノラの新譜として楽しんでいます。
ただし、数曲でリチャード・ジュリアンが主に歌っているのが少し違うところかな。
だけどそれも、ジュリアンは申し訳ないけど、ノラの声がコーラスで出てくるとそのほうが目立つし待ってましたとなってしまう。
リチャード・ジュリアンの歌自体は普通に上手いと思います、念のため。
1曲目I Worship Youはゆったりとしたワルツをノラがいきなりアカペラで歌い始めて一度ブレイクし、アップテンポの4拍子の部分をノラが歌い、この部分は後にリチャードも歌い、この部分がブレイクしてまたワルツに戻るといった具合に2つのパートが交互に繰り返す面白い曲。
ノラがちょっとだけヨーデルっぽい裏声になる部分があって、これは力が入っているなと。
アルバム最初の曲としてはちょっと変わった響きだけど特にノラの声にはぐいっと心を掴まれます。
2曲目Remember Meはピアノ弾き語りで始まるおとなしいバラード。
これは、カントリーと言われればそうだけどジャズヴォーカルと言われればそうかもしれないという、まさにノラの世界。
3曲目Diesel Smoke, Dangerous Curvesはちょっとオカルトチックの不気味な響きの曲で、エレクトリック・ギターの「ぽわ~っん」という音と歌が終わってから入る小刻みなフレーズが恐さを演出。
リチャードがヴォーカルだけど歌の最後に入るノラのコーラスがまた恐くて、曲の最後でノラの声が張り裂ける、おお恐っ。
4曲目Lovesick Bluesは正統的カントリー・ブルーズを2人のハーモニーで聴かせます。
あ、ハーモニーで歌うとやっぱりノラが目立つけど、というかノラだけしか注目してないということかな。
というのもこの曲、買って聴き始めて数回目でやっと男性も歌っていることに気づいたのだから・・・
5曲目Tommy Rockwoodはメンバーが作ったインストゥルメンタルで、途中で掛け声が入ってなんだか田舎の遊園地のような風情。
6曲目Fist Cityは作曲者がロレッタ・リン、名前だけ聞いたことがある人ですが、田舎の小娘が都会で頑張る様子を歌っているのかな、ノラの声がそんな空元気ともいえるはつらつさでなんだかいい。
曲も劇的だしノラのヴォーカルも僕はこれがいちばんいいと思った。
7曲目Permanently Lonelyはウィリー・ネルソンの曲だけどリトル・ウィリーズは彼から取った名前なのかな。
こぼれ落ちそうなピアノのイントロを受けてセンチメンタルに歌うリチャード。
この曲のノラのコーラスは目立たず、曲のモチーフを生かしつつここではリチャードを立てています。
8曲目Foul Owl On The Prowl、おお鳥好きとしては反応してしまう曲名。
ディキシーランド・スタイルでとろっとした曲はまさに「ゲゲゲの鬼太郎」みたいだけど、これもカントリーかと言われるとそうとは限らないノラの世界のような気が。
いずれにせよフクロウはやっぱり夜のイメージだから。
あ、ちなみに、日本でいちばん有名なディキシーランド・スタイルの曲が「ゲゲゲの鬼太郎」」のテーマで、2番目がビートルズのWhen I'm Sixty-Fourじゃないかなと僕は思ってます(笑)。
9曲目Wide Open Roadはジョニー・キャッシュの曲でアップテンポで快活なポップソング。
リチャードが元気にぐいぐいと引っ張りながら歌ってゆくけど、Bメロで入るノラのコーラスが自由闊達な雰囲気でコーラスというよりは別のメロディを歌っているようで、そうなるとやっぱりノラの声のほうが響いてくる。
10曲目の表題曲For The Good Timesはクリス(トファー)・クリストファソンの曲で酒場の片隅がいかにも似合う落ち着いたちょっと寂しげな響きの曲。
そしてこれもノラの世界、いいですね、しみてきます。
11曲目If You've Got The Money I've Got The Timeはアルバムいちアップテンポの楽しく盛り上がるホンキートンク。
そして最後12曲目がJolene、ドリー・パートンの名曲で日本ではオリヴィアン・ニュートン・ジョンの曲として有名。
僕もこの曲は知っていました、というかこれしか知らなかったですが、有名な曲だけにオリジナルとはだいぶ変えてスローテンポな中にピアノが寂しげに鳴り響き、ノラのヴォーカルも怨念が凝縮されたような。
これは結構、恐いというか、生々しい歌なんですねぇ。
余談で、この曲は志村けんがコントで使っていたと記憶しているけど、このヴァージョンではそれもできないだろうなあ、と(笑)。
ノラ・ジョーンズの新譜というで、ノラはある程度日本でも人気があるとは思うんだけど、これは日本では売れているのかな。
どうもそうではないような気もする。
まあ、今調べたところアメリカでもナショナルチャートでは最高位45位ということで、プロジェクトバンドとしてはそんなものでしょうかね。
僕はとにかくノラ・ジョーンズの声が大好きで、歴代で声がいちばん好きな女性ヴォーカリストかもしれないというくらい。
風の噂では、ノラ・ジョーズ自体の新譜も近いうちに出るらしくて、それを楽しみに待つこととして、でも僕はこのカントリーアルバムもかなり気に入っています。