MOVING ピーター・ポール&マリー | 自然と音楽の森

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自然と音楽の森-Nov27PPMMoving


◎MOVING

▼ムーヴィング

☆Peter, Paul & Mary

★ピーター・ポール&マリー

released in 1963

CD-0165 2011/11/27

※このCD注目の1曲:Puff, The Magic Dragon


 ピーター・ポール&マリー2枚目のアルバム


 僕は歌が大好き、PPMはとにかく歌がいい、だから僕はPPMが大好き。


 実は、今日の記事はその三段論法だけですべてが片づけられてしまうのです。

 またお会いしましょう。


 なぁんて(笑)、それじゃあまりにも無責任だからまだ書きます。


 ピーター・ポール&マリーはボブ・ディラン、ジョーン・バエズと並び「プロテスト・ソング」の旗手として1960年代に絶大な人気を博しました。

 社会的メッセージを込めたフォークソング、反戦歌も含まれますね。

 ベトナム戦争の時代に、フォークソングをギターと歌だけで表現して一時代を築きました。

 PPMも曲はウディ・ガスリーなどフォークソングやトラディショナルソングをアレンジする一方、オリジナル曲も充実しています。

 僕はディランとジョーン・バエズとPPMの名前は洋楽を聴く前から知っていましたが、それは音楽の枠を出た社会現象として語り継がれていた部分もあったのだと思います。


 PPMを初めて聴いたのはしかし、まだたかだか10年くらい前のことでした。

 DVD付きのボックスセットが出たのでそれを買って聴きましたが、特にその1枚目はほんとうにいい歌ばかりで、いついか25枚連装CDプレイヤーに入りっぱなしになりました。

 今でも入っているんですが、それくらい、好きを通り越して僕の基本のような存在になりました。


 でもそろそろオリジナルアルバムを聴きたくなったので調べると、ワーナーからForever Youngシリーズで1枚目から3枚目が出ていることを知って立て続けに3枚買いました。

 Forever Youngシリーズは今年の7月まで、3枚買うと1枚がタダでもらえるキャンペーンをやっていたのですが、その時にちゃんと調べていればもう1枚別のCDがもらえたのにと、今は多少後悔しています(笑)。


 僕は、好きな歌はやっぱりオリジナルアルバムでも聴きたいです。

 よく知られた曲やヒット曲などいわゆる名曲は、時代が進めば進むほどその歌だけで独立した存在のようになってきます。

 それは曲の持っている力でありそれはいいことだし否定しません。


 でも一方で、そうした名曲は何か時代の流れから切り離されたように感じてしまい、その曲だけでは当時の雰囲気をつかみにくくなることもあります。

 いい曲はいい曲でいつまでも聴き続ければいいんだけど、でも時代の雰囲気も味わいたい。

 僕がオリジナルアルバムにこだわるのはそこです。


 当時の雰囲気を味わうのはまずはなんといってもジャケット写真ですね。

 特に60年代のアーティスト自身が写ったスナップショット的なジャケットは、ファッション、装飾、小道具から風景まで、まさに時代を映す鏡で楽しいですね。

 まあ、時にはダサいものもあるんだけど、それも笑って許せてしまいます。


 PPMのこの2枚目は、アンティークなかばんにマリーさんが肘を立ててにこやかにほほ笑み、ピーターさんとポールさんは微妙に硬い表情で両脇を固め、背景はツタに覆われた壁だけが写っている。

 Peter, Paul and Maryのロゴ、Peterは緑、Paulは青、andは青緑そしてMaryは橙色、MOVINGのタイトルは明るい橙色の()で囲まれ、WARNER BROTHERSのロゴそして上には左右に矢印が伸びるSTEREOの青い文字。

 このジャケットで印象的なのは、右端と左端の1/5ずつが白くて何もないことで、僕は最初にネットでこのジャケットを見た際に、縦長のDVDのように見えてあれっと思いました。


 このジャケットから僕が読み取ったのは、アンティークのかばんは古き良きものを大切にしたいという思い、アイヴィーはアメリカ東海岸の若者文化の象徴、両端が白いのは可能性が広がることを意味するもの。

 そしてマリーさんの笑顔と男性2人の固い表情は、自らの音楽を通して伝えたいことは楽しいことばかりではなくシリアスなこともあるんだよ、といったところです。

 よいアートワークですね。


 オリジナルアルバムで聴きたいのは、アルバムの流れの中でどのような感じでその曲が出てくるか、これも楽しみだから。

 さらにいえばベスト盤とは違う流れを聴くことである種の別のマジックが働いていい曲がより魅力的に聴こえてくることもあります。


 ただ、あまり少なくない例として言わなければいけないのは、アルバムを聴いたところ目当ての名曲だけが突出していい曲であとは平凡ということもあるにはあります。

 まあしかしその場合は余計にその名曲がよく聴こえてくるだけですから、残念とか無駄だったとかそうしたマイナスの感情を僕は持ちません、買って聴いてよかったといつも思います。


 このアルバムで何を聴きたかったか、それは、Puff, The Magic Dragonですね。


 この曲はおそらくどこかで聴いたことがある人が日本人でも多いのではないかと思います。

 僕も、10年前にPPMのボックスセットで初めて聴いた時に、歌詞は知らなかったけど歌メロはすべて知っていました。

 僕はこれだけ有名な曲だから日本でいう童謡みたいな感じのトラディショナルもしくは古い時代のスタンダードだと思っていたのですが、実は、ピーター・ヤーローが友達の詩に曲をつけたオリジナルであると知って驚きました。

 クイーンのWe Are The Championsも若い人はトラッドだと思っていたという話を以前紹介しましたが、この曲もまたそうした例だと思います。

 実際にこの曲はほんとに童謡みたいな親しみやすさがありますね。

 ただひとつだけ残念なのが、ピーターの声が僕には低すぎてオリジナルキィでは歌えないことですね。

 かといって1オクターブ上げると僕の上がつらくなります。


 さて、この名曲はこのアルバムの中では5曲目に登場しますが、後ろ過ぎず前過ぎずいいと思います。

 このアルバムの頃はまだまだアルバムコンセプト的なものはなかったと思われ、またPPMは1曲1曲への集中力が高いので、アルバムの流れというよりは前の曲とのつながり、後の曲への受け渡しという観点で曲を並べているように感じます。


 このアルバムではこの曲から次の6曲目This Land Is Your Landへの受け渡しが最高にいいですね。

 洒落じゃないけどひとつのマジックを感じるつながりです。

 「ここはあなたの土地、ここは私の土地、カリフォルニアからニューヨークまで」

 アメリカの素晴らしさを歌っていますが、でも僕は聴く度に日本に置き換えて考えていて、日本は素晴らしい土地だよなと思います。

 前回のシェリル・クロウの記事で書きましたが、歌というのは、実名が出てくるからといって自分には関係ないというものでもないと思います。

 それにしてもこの曲は歌メロが最高によくて、PPMの中でも特に好きな2曲が並んでいたのはうれしかった。


 他に前から気になっていた曲は2曲目Gone The Rainbow。

 2曲目からいきなりかなり重たくなる哀愁を帯びすぎた歌メロの曲が出てきてはっとさせられます。

 「しょーしょーしょーらるー しょーらーらくしゃく しょらばばしょー」

 歌い出しはこうで、僕はこの歌詞が分からなかったのですが、国内盤を買ったので歌詞カードを見るとそれは単語ではなく掛け声というか擬態語のようなものだと分かりました。

 歌詞は今はネットで調べられるんですけどね(笑)。

 この曲は3人ともう一人が書いたオリジナルです。

 

 もう1曲取り上げたいのが、最後12曲目のA' Soalin'。

 2曲目と同じ哀愁系で祈りを捧げるような思いにさせられる曲。

 曲はポールとその他2人のオリジナルですが、途中でクリスマスソングとして有名なGod Rest Ye, Merry Gentlemanの旋律が出てきてオリジナルの旋律と複雑に絡み合う部分は胸にぐっときますね。

 3人のハーモニーもこの曲では緻密に組み立てられていてひとつの芸といえる領域で素晴らしい。

 スティングが2009年に出した準クリスマス・アルバムでタイトルをSoul Cakeとしてこの曲を歌っていましたが、今の時期に買って聴いたのはなんとよい偶然か(笑)。

 ここで歌われている「ソウル・ケーキ」の果物はりんご、なし、プラムにさくらんぼ、おいしそうですね(笑)。


 いいですね、アルバムとして聴いてもやっぱりよかった。


 PPMはここではほんとうにギター2本と3人の声だけで録音していますが、シンプルだからこそ奥が深いというよい例がPPMの音楽だと思います。

 その上歌としての曲の良さが並じゃない、だから僕には基本なのですね。


 PPMは今はよく聴いているので、近いうちにまた1枚、どちらかを取り上げたいと思います。

 

 

 さて、最後は余談。

 今回どうしてPuffをオリジナルで聴きたくなったかというと。

 そろそろ来年の年賀状を考える時期になりましたが、来年の干支はと考えた時、辰年、龍、ドラゴン・・・

 はい、ただそれだけのことでした(笑)。