◎TEXAS CANNONBALL
▼テキサス・キャノンボール
☆Freddie King
★フレディ・キング
released in 1972
CD-0137 2011/10/01
フレディ・キングのオリジナルアルバムとしては10枚目になる作品。
ちなみに僕は記事のここの部分は調べて書いていますが、特にあまり聴いたことがないアーティストの場合はそのことで僕自身も勉強しています。
アメリカンロックに帰って数日。
でも結局は今よく聴いているのがブルーズだからここに戻ってきました(笑)。
フレディ・キングはゲイリー・ムーアを聴いて自分の中でブルーズへのアンテナが少し伸びていた頃に名前を知りました。
しかし僕が聞いたのは、B.B.キング、アルバート・キングと並んで「ブルーズギタリストの3大キング」と呼ばれているという話だけで、音楽を聴くことはまったくないまま20年以上が過ぎました。
今年の夏になって僕の中にブルーズの流れがきて少しずつ聴き広げてゆきたいと思っていたところ、本家BLOGでレオン・ラッセルについて触れた際、fagus06さんに、レオンが参加したフレディ・キングのLPを持っていたという書き込みをいただきました。
すぐに調べたところレオンのShelterから出ていたものがリマスター盤CDで出ていることがわかり早速2枚を注文したうちの1枚がこれです。
音楽聴きの先輩のご意見はいつも頼りになり刺激になります、あらためてfagus06さんありがとうございます。
このアルバムは、レオン・ラッセルを取り上げた「レコード・コレクターズ」でもShelterレーベルから出ていた他のアーティストのアルバムの項目で紹介されており、レオンも参加したロックっぽいフィーリングの1枚と書かれていました。
聴いてみると確かにその通りでした。
ただ、半年前の僕ならそれは無条件でうれしかったのですが、いよいよ本格的にブルーズを聴き始めた今はもっと本格的なブルーズらしいブルーズを聴きたいとうい欲求が強く、ロックっぽいというのが逆に出てしまい、はじめの数回は、うん、なんかちょびっと違うぞ、と思いながら聴いていました。
だけど3日くらいして突然それが気にならなくなりました。
なぜか分からない、突然、慣れたのかな、許せるようになったのかな、それとも最初は固定概念が強すぎたのか。
ともあれ今はそんなことどうでもよくて本当に気に入った1枚になっています。
だから記事で取り上げるのだし(笑)。
しかしどうでもいいと言ってしまっては話にならないので、最初はロックっぽいというところに着目して書きます。
ブックレットを見るとこのアルバムのためのセッションが2回行われたようで、4曲目までと5曲目以降の6曲とで演奏メンバーが違います。
しかしレオン・ラッセルとドン・プレストンは両方にいて10曲すべてに参加しています。
僕が知っているミュージシャンでは4曲目までのドラムスにジム・ゴードン、5曲目以降にはドナルド・ダック・ダンとアル・ジャクソンのMG'sの2人が参加しています。
レオン・ラッセルを聴くようになって気づいたのは、レオンは音づかいが細やかできれいな音を聴かせる人だということです。
これを話すに及んで僕には勝手な先入観があったことを恥を忍んで話さなければならないのですが、レオンを聴く前はスワンプ系だから演奏も音も割と大味というか大雑把でそこが魅力につながる部分なのかなと思っていました。
でもレオンは違う、聴きやすい音、そこがポップミュージックとして売れた部分なのかなと。
このアルバムにはレオンの細やかな音づかいがそのまま生かされていて、かつ勢いがあってとっても聴きやすいですね。
フレディ・キングのギタープレイも大味というよりはフレーズのきめ細かさなど繊細な感じを受けました。
しゃべるようなフレーズがよく出てくるのが面白いですね。
頭をつかんでほれ聴けよというのではなく、優しい感じがします。
フレディ・キングは、ギタープレイともども、頑張るという言葉が妙にぴったりだなと思いました。
彼のヴォーカルはハイトーンで、もちろん黒人ブルーズらしいしっかりとした強い声で歌い通すのですが、そのハイトーンであることが僕にはなんだか頑張っているというイメージにつながりました。
ただこのアルバム、多少へそ曲がりな聴き方をすれば、1970年代前半の当時はロックがブルーズをも取り込んでしまう勢いを持って広がっていたところ、フレディ・キングはそこに飲み込まれてしまわないように一生懸命がんばっているという図式が頭に浮かんできました。
もちろん敵味方というのではなくロック側からブルーズ側への敬意の上に成り立っているに違いないのですが、時代の勢いというのはまた別の次元でいろいろと感じる部分があるものだとも思います。
まあでもへそ曲がりにならずに普通に感じたことを書けば、ロック的な音に包まれたこのアルバムはブルーズの中ではモダンな感じがします。
ブルーズの側からももちろん時代の音に近づいた幸運な出会いがこのアルバムなのでしょうね。
しかしフレディ・キングはこの4年後に42歳で夭逝してしまいます。
42歳って今の僕より若いじゃん・・・心臓発作だったということですが。
曲について少し。
作曲者のクレジットの中にフレディ・キング自身の名前が見当たらないのですが、彼は基本的には曲をあまり書かない人なのかな。
もう1枚一緒に買ったアルバムでも自作の曲は1曲だけでした。
レオン・ラッセルが2曲でペンをとっていて、4曲目Me And My Guitarはきっとフレディ・キングの半生記的な内容なのでしょうね。
ギターが軽やかに歌いまくっていて、レオンはほんとミュージシャンの特性をうまく引き出す人だなと思う。
そういえばレオンはエリック・クラプトンのアルバムでもBlues Powerをエリックと共作しているけど、ブルーズへのこだわりと敬意はいつも持っていた人なのでしょうね。
7曲目I'd Rather Go Blindはレオンらしいきれいに流れる歌メロのポップな曲でいかにも1970年代洋楽的な響き。
ブルーズのスタンダードもある一方で新しい曲も積極的に歌っています。
1曲目Lowdown In Lodiはジョン・フォガティの曲で、砲弾のタイトルのごとく跳ね飛んだリズムでアルバムをぐいぐい引っ張っていく勢いがある明るく楽しい曲。
もう1曲がビル・ウィザースのAin't No Sunshine、これ僕の大注目。
この曲は僕はポール・マッカートニーがUNPLUGGEDで演奏していたのを聴いて知ったのですが、当時はろくに調べなかったのでそれから10年以上ずっとこれは古いブルーズの曲だと思い込んでいました。
でも、ソウルの流れが僕に来た時に初めてそれがビル・ウィザースの曲であると気づき、しかもそれは1971年に発表された曲であると知りました。
僕の中ではポールが歌ったというだけで別格扱いの曲だけど、フレディ・キングはオリジナルが出た翌年にもうカバーをしていたのを知り、この曲そしてビル・ウィザースへの敬意が増しました。
この曲を聴いた当時の人は、古き良きブルーズの味わいを正統的に受けついだ新しい歌が出てきて驚き、こんな曲がまだ出てくるんだって感動したんじゃないかなと思います。
この曲はほんと何も言われなければオールドブルーズと思う人が多いのではないかと。
歌い出しの歌メロは「与作は木を切る」ですね(笑)。
最後まで楽しく充実して聴き通せる素晴らしいアルバムです。
このところブルーズを聴いていて分かったことがひとつあります。
曲がいい。
ブルーズは基本は3つか4つのコードで曲の構成自体は単純だけど、単純だからとタカをくくってはいけない。
単純なだけに今でも聴き継がれている曲は歌メロがいいからいい曲として残ってきているのではないかと。
僕は実は本気で聴く前はもっと雰囲気とか演奏のすごさにひたる音楽だという思いが強かったので、これはコロンブスの卵的発見。
そこが分かればブルーズももっとポップソングとして聴かれる可能性はあるんじゃないかなと思います。
当たり前のことかもしれないけど、ギターが好きな上に曲がいいので僕が好きなるんだと。
単純だけど奥が深い。
ブルーズによく言われる言葉ですがその意味が少しわかってきた気がしています。
はたして、どこまで深く行けるものなのか。
だんだんと、もっと深く行ってみたいという気になってきました(笑)。