NINE TONIGHT ボブ・シーガー&ザ・シルヴァー・ブレット・バンド | 自然と音楽の森

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自然と音楽の森1日1枚-Sept24BobSeger9


◎NINE TONIGHT

▼ナイン・トゥナイト

☆Bob Seger & The Silver Bullet Band

★ボブ・シーガー&ザ・シルヴァー・ブレット・バンド

released in 1981

CD-0134 2011/09/21


 ボブ・シーガー&ザ・シルヴァー・ブレット・バンドの2点のライヴアルバムがリマスター盤で再発されました。

 今回はその中から年代が後に出た充実期のライヴ盤について触れます。

 1980年のデトロイトとボストンで収録されたライヴとのことです。


 ボブ・シーガーを聴くという人には僕は直接は会ったことがありません。

 ネットでもBLOG上でちょっとだけ付き合いがあった人がひとりいらしたというくらい。

 アメリカンロックの中のアメリカンロックという人だからまあそういうものでしょうね。

 日本では「ビバリーヒルズ・コップ2」の人、なのかな、でもそれももう賞味期限切れという感じがするし(笑)。

 

 かくなる僕も1枚のアルバムを除いてつい最近聴き始めました。


 僕はアメリカンロック人間だから10代の頃から興味はあったし何曲か知っていてベスト盤は持っていたけど、僕が聴かなかった大きな理由はリマスター盤CDが出ていなかったからです。

 まあ、ほんとうに聴きたければそれでも買うのでしょうけど(笑)、だから僕にもその程度の存在だったということかな。

 

 しかし5年くらい前に絶頂期までのアルバムが何枚かリマスター盤で出てついに買って聴いたのですがやっぱりとても良くて気に入りました。

 今では普通に好きという感じで、早く他もリマスター盤で出てほしい。


 1枚のアルバムを除いてというそのアルバムは大学生時代の1991年に出たTHE FIRE INSIDEで、これはかなり気に入り、買って半月くらいは毎日のように聴いていた記憶があります。

 それを買ったのはひとつはCDの時代になって初めて出たアルバムでモノとして興味があったこと、もうひとつはイーグルスつながりで興味があったから。

 だけどそこでボブ・シーガーが僕に定着しなかったのは、当時は僕の人生の中で最も音楽に熱心ではない時期だったことと関係があるかもしれない、そんな気がする。

 実際、次のアルバムが出ていたことは10年以上後になって知ったくらいだし。

 


 ボブ・シーガーの勝手なイメージを言えば、「良識のあるアウトロー」、「現代的な、しかし今から見ると少し前時代的な吟遊詩人」という感じがします。


 酒はきっと大好きだろうな、いつもハイテンションで(あくまでも酒のせい)冗談を言ったり周りの人につっかかったりするけどでも嫌味はなくて許せてしまうし話してゆくと人情家であることが分かる。

 おおらかだけど実は博識で人と話すときは表面的な部分でジャブのやり取りをしながら話すけど実は物事の真相を見極めようとする姿勢を貫いていてぶれない。

 ハーレィに乗った写真をジャケットなどでよく見るけど、豪快なイメージの中に繊細さの網が張られている人という感じを僕はずっと持ってきました。


 このライヴはヒット作を連発しアメリカを代表するロックバンドとなった絶頂期の音源で、その通り勢いもあって楽曲も素晴らしい。


 1曲目のNine Tonightからボブのヴォーカルもバンドもアイドリングなしのエンジン全開で突っ走り始めます。

 この"Nine"というのは"Cloud Nine"と同じ「至福の」という意味なのかな、今夜は最高、みたいな。

 もちろん「ナイ」ン・トゥ「ナイ」トで韻を踏んだ言葉遊びでしょうけど。


 2曲目のTryin' To Live My Life Without You、ボブが"This is an old Memphis song"と紹介して始まった曲はイーグルスのThe Long Runとサウンドプロダクションがまったく同じなのは意図したものなのかな。


 3曲目You'll Accom'pny Meはフォークタッチで音楽の広さも既に感じられ、"Gypsy woman"と歌詞に出てくるだけで謎が増して吟遊詩人的なものを感じます、僕は単純だから(笑)。


 4曲目Hollywood Nightはベースが煽り突っ走りまくってもう前半でヴォルテージは最高潮。

 

 ここで少し落としてギターでフレーズをこねくり始めたと思ったら5曲目Old Time Rock And Rollが始まる。

 この曲はサントラに使われたものでMTVでよくブリーフ姿でベッドで跳ねているトム・クルーズのビデオクリップが流れていました。

 シンプルなロックンロールにはとにかくひかれます。


 7曲目Against The Windは抒情的ともいえる雰囲気に包まれていてこういう曲があるから僕はこの人に吟遊詩人的なものを感じます。

 「風に向かって走る若者を見よ」

 若者は希望に満ちているかもしれないし虚無感に覆われているかもしれない、でも若者は走り続けている。


 10曲目Feel Like A Numberは階段を上り下りするようなギターのカッティングがカッコよくてロックンロールの可能性を感じます。


 11曲目Fire Lakeは熱さと冷静さを併せ持ったボブをまさに象徴する曲であり、ちょっと寂しげでやっぱり抒情的に広がります。


 そしてボブ・シーガーが優れた作曲家であることを感じさせられるのが13曲目We've Got Tonightでしょうね。

 これは僕のリアルタイムでカントリーのケニー・ロジャースがあのシーナ・イーストンを招いてデュエットして大ヒットした曲として記憶していましたが、これがボブ・シーガーの曲であることを知ったのは最近のことでした。

 5年前にリマスター盤を買ったと書きましたが、その中の1枚を聴いていて、あれ、この曲どっかで聴いたことがあると気づき記憶の糸を手繰り寄せていくとそこにたどり着いたのです。

 アメリカでは作曲家として認められていることを物語っている曲ですね。

 僕が思うにロックのバラードの中でも「必殺バラード」として最上の部類であり、秋にはよく合う曲ですね。

 しかしボブ・シーガーはそれを気持ちは入れているけど感情は込めていないという体で言葉を紡ぐように歌うのが、まあ好き好きは人によるでしょうけど、僕は歌と演奏、歌詞と旋律の間に横たわる余情を感じられて好きなところです。

 この曲は普通に日本人が聴いてもいいと思うんだけど、どうなんだろう。


 残り4曲は音としても意味としても軽めのロックンロールで仕上げて素晴らしいライヴ盤は終わり。


 さらに今回はボーナストラックとしてBrave Strangersが収録されています。


 若さは忘れない、でも余裕もある、走るけど歩く時もある、全盛期の充実のライヴ盤。

 何より曲が素晴らしくて名曲もあるし勢いで流されるだけではなくじっくりと聴き込めるのも素晴らしい。


 実は僕はボブ・シーガーを1年くらい聴いていなかったんだけど、やっぱりいいな、またこっちに少し戻ってこようかな(笑)。


 でも、聴いていて、いいなと思えば思うほど、どうして周りには、日本にはあまり聴く人がいないのかなと考えてしまう。

 僕がそもそもアメリカンロック人間だといえばそれまでだけど、実際に好きだし、でも、アメリカンロックに対する接し方や考え方にはそれ以上の何かがあるような気がする。

 

 それは昔から、実は洋楽を聴き始めた頃からずっと感じてはいるんだけど、30年が経ち、まだうまく説明できない自分を発見しました。


 音楽を聴くことは自分探し、自分再認識の旅なのかもしれないですね(笑)。


 これからも音楽の旅を続けますか。