PARANOID ブラック・サバス | 自然と音楽の森

自然と音楽の森

洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。


自然と音楽の森1日1枚-Aug22BlackSabbathParanoid


◎PARANOID

▼パラノイド

☆Black Sabbath

★ブラック・サバス

released in 1970

CD-0121 2011/08/22

Black Sabbath-02


 ブラック・サバスのセカンドアルバム。


 このアルバムが不思議なんですよ、僕が勝手に決めた「ロック七不思議」のひとつです。 

 あ、「ロック七不思議」は今思いついた枕詞の一種で実はあと6つは特に決まっていません・・・

 でももしご要望があれば考えてみたいと思います(笑)。


 つまらぬ前振りはさておき、このアルバムがどう不思議かというと、ロック史に名を残す名曲が入っているけどアルバムとして聴くと何か物足りないしかし悪いという人はいない、というものです。


 このアルバムにはParanoidとIron Manというハードロックやヘヴィメタルの枠を超えて知名度が高い名曲中の超名曲が入っています。

 それが1曲じゃないんです、2曲です。

 まずそれだけでもうこれは名盤と言われる資格を有しているといえます。


 それだけではなく、サバスやオジーがずっとコンサートで演奏し続けているWar PigsやElectric Funeralなどヘヴィメタルのマストアイテムというべき名曲が入っていて、それも2曲、だから4曲は名曲ということになります。

 さらには他の4曲もみな素晴らしい曲で捨て曲なし。

 もうここまで書けばこれは素晴らしい「アルバム」に違いないと思うでしょう。


 でも、「アルバム」として通して聴くと、何かしっくりこないんです。

 しまりがないというか、いつ聴いても今聴いてもいい曲が次々と押し寄せてくるけどそれらはただ羅列しているだけのように感じてなりません。

 ブラック・サバスのアルバムガイドなどを見てもたいてい名盤として押されているのは3枚目か4枚目そして1枚目時々5枚目で、この2ndは「アルバム」としての評価は少し落ちるというのは僕だけではなくなんとなくみんなが思っていることのように思います。


 もちろん、名曲なんて誰もが簡単に手にできるものではないから、名曲が入っていればもうそれだけでアルバムとしての価値が上がるというものでしょう、それは分かります。

 ただそういうアルバムの多くは1曲の名曲が100点だとするとあとは65点以下の曲が並んでいるという感じなのではないかと。

 しかしこのアルバムはくどいようですが100点が2曲、90点が2曲、他の4曲も80点は優にクリアしているくらいレベルが高い曲が並んでいるのです。

 トニー・アイオミの鋭いギターリフも冴えて切れて切れまくっている上におしなべて歌メロがいい曲ばかり。 

 Planet Caravanのようなエキゾティックな雰囲気の曲もあったりFairies Wear Bootsなんて舞踏のリズムを採り入れていて音楽表現の幅も広いし、文句のつけようがありません。


 結局「アルバム」として良いと感じるのは曲の「流れ」が重要なのでしょうね。

 このアルバムは曲の羅列であって曲と曲が有機的に結びついていないように感じ、いわば素材は素晴らしいのに料理の腕が少し足りないというところ。


 このアルバムはデビューアルバムと同じ年にリリースされていて制作に時間があまりなかったことが容易に想像されます。

 一方でサバスはデビューアルバムも評判を呼び勢いがあってメンバーの創作意欲も高まっていていい曲は次々と出来ていたことも聴けば分かります。

 

 だけど、「アルバム」として良いものを作る、すなわち聴き応えがある「作品」を作り上げるというのはいい曲が出来る以上の作業やコンセプトが必要であることをこのアルバムは証明しています。

 時間をかければいいものになるとも限らない、ひらめきが重要なことがあるのはもちろん分かります。

 でもやっぱりもう少し「作品」として聴き応えがあるものを練ってゆく時間的余裕があれば、このアルバムももう少し違ったものになっていたかもしれないと僕はずっと思っています。

 でもそれも歴史のifだから、今うだうだ言ってもしょうがないですね。


 このアルバムはだから、名曲が4曲もあるのにつべこべ言うな文句言うなら聴かなきゃいい、と割り切って聴くことができます。

 少なくともかけている間はその1曲しか聴こえてこないのだから、聴いている時の満足感は尋常ではありません。

 

 そしてもうひとつ。

 もしかしてこのアルバムはいい曲が多すぎてお互いが干渉じゃないけど曲ごとに目立ち過ぎることが「作品」として聴くには障害になっているのかもしれない、と思うこともあります。

 そういうアルバムがあってももちろんいいんです。

 

 しかし。

 僕もねちっこい性格だから、デラックス・エディションが出た際に久しぶりに聴いて、やっぱり「作品」としてはあっさりと終わりすぎるよなと自分の気持ちを再確認したしだいであり、それを記事でご報告をと思って書いたのでした。


 それにしてもParanoidはあまりにもカッコよすぎる!

 ハードロックだヘヴィメタルだと言っても結局はロックンロールであるには違いないということをこの曲は示しています。

 オジー・オズボーンはこの曲を幾つまでオリジナルのキィとテンポで歌えるのかな。

 それだけが心配です・・・(笑)・・・