NEWS OF THE WORLD クイーン | 自然と音楽の森

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自然と音楽の森1日1枚-July09QueenNews


◎NEWS OF THE WORLD

▼世界に捧ぐ

☆Queen

★クイーン

released in 1977

CD-0099 2011/07/09

Queen-04


 クイーンのアルバムの記事が短期間に続出しています。

 確かにISLANDから新たなリマスター盤が出たという契機はあるのですが、でも今日この記事を取り上げたのは昨夜あるニュースに接したからでいわば想定外のことです。


 「英国大衆紙が盗聴取材疑惑を受け廃刊」


 その大衆紙の名は・・・「ニュース・オブ・ザ・ワールド」


 そのニュースに接した時はまさかそれじゃないよなと思ったのですがそのまさかでした。


 大学1年の時、僕は英語の授業のひとつをスコットランド人のM先生に教わっていました。

 授業はもちろん英語で行われましたが、M先生は英国流頑固を絵に描いたような人物で、一説によれば日本語ペラペラだけど学生が授業中に日本語で聞いたり答えたりすると聞こえないふりをして英語で話すことを求めるような人でした。


 当時はまだ林望さんの本が出る前で英国に関する知見はあまり一般的ではなく、ビートルズの影響で英国が好きだった僕は授業の後に先生を呼び止めて英国の話を聞くのが好きでした。

 M先生はビートルズは「必要悪」的な考え方を持っていたように感じたけど僕の前ではあからさまにそうは言わず、僕がビートルズの話をするとまたかといった表情で苦笑しつつ話を聞いてくれました。

 大衆音楽には興味がないスノッブな人なのかなと思い始めた頃にそのM先生がピンク・フロイドを大好きと知ってちょっとばかり驚きました。


 て、あれ、クイーンにつながっていかないの・・・?・・・(笑)・・・


 M先生の話はひとまず今日はここまでとして、僕が言いたかったのは英国の「大衆紙」がどういうものであるかを僕はM先生の授業で知ったということです。

 

 名前だけならその前から見聞きしていました。

 僕が最初に知った大衆紙はもちろんビートルズのPaperback Writerに出てくる「デイリー・メイル」 Daily Mailです。

 他に「ザ・サン」 The Sun、「デイリー・ミラー」 Daily Mirror、「デイリー・エクスプレス」 Daily Expressなどはロック絡みでも名前を見聞きしたことがあります。

 タブロイド紙という俗称もありますが、日本では「夕刊フジ」がそれに当たるのでしょうか。


 大衆紙はゴシップや下世話なネタを大きく書き立てて読者を煽るもので報道というよりは読み物であり(つまらぬ)娯楽だとM先生は考えていたようで、僕がある日「デイリー・メイル」を読んでみたいと話すと、M先生は「その必要はない」と言い切りました。

 僕はいまだに読んだことはありません。


 「ニュース・オブ・ザ・ワールド」はプリテンダーズのBack On The Chain Gangの歌詞にも出てきますね。

 それがヒットした当時僕はまだ大衆紙のことは知らず、後にクイーンのこのアルバムのタイトルを大衆紙からとったと知り、そうかプリテンダーズの歌詞もそうだったのかと気づきました。

 プリテンダーズのその曲はロックの先達へのオマージュ的な曲であるためクイーンのアルバムは意識にあったのかもしれないですね。


 クイーンのNEWS OF THE WORLDは、大スターになりマスメディア攻勢に遭って嫌な思いをしていることを皮肉りつつクイーンの新作は世界中のニュースだという自信を表明したものと受け取れます。

 ジャケットのロボットが印象的ですがよく見るとメンバーがくたびれてのしたような格好で描かれているのが当時の様子を表していて面白く興味深いですね。


 肝心のアルバムについて、もちろん僕は後になってしかもCDの時代に初めて聴いたその感想です。

 アルバム至上主義者だった若い頃はアルバムとして聴き込むにはびしっと伝わってくるものがなく、流れもなくてとり散らかったような印象を受けました。

 僕はベスト盤を先に聴いたので、We Are The Championsが最後ではないというのが違和感大ありでした。

 クイーン自体も中だるみの時期だったのかなと。

 ただしこのアルバムは当時はそこそこ以上の評価だったのかなと思いますがどうなのだろう。

 なんといっても永遠の名曲が2曲も入っている上に他の曲もいいしこのアルバムは演奏はクイーン流にシンセサイザーを使わずに厚くてハードな音で攻めているのはいいですね。


 We Will Rock You、曲についてもはや僕が言うべきことは何もありません。

 クイーンのビデオクリップ集のDVDにはブライアン・メイとロジャー・テイラーのコメントが入っているのですが、この曲のコメントは「とにかく寒そうだろ・・・」。

 屋外で録画したビデオクリップは吐く息が白くてそのことがよく伝わってきますがほんとうにそうだたんだって或る意味感激しました。


 We Are The ChampionsもDVDのブライアンのコメントを。

 これはもはやアンセムとして世界中に知られているためトラディショナルだと思われることがあってある日若者がこの曲に作曲者がいることを知って驚いたのだとか。

 さらには、サッカーのW杯フランス大会の決勝戦の後にこの曲が会場に流れたのは人生で最も感動したことのひとつであり作曲者冥利に尽きるという話で、これはほんとうに感動的な話ですね。


 DVDにはSpread Your Wingsも収録されコメントでロジャーが「これは中ヒットだ」と言っていました。

 ロジャーはこのDVDではどれくらい売れたかのコメントをよく入れていたのですがそれを見て僕はクイーンの中のマーケティング部門はロジャーだったのかなと思いました。

 曲はメロディメイカーのジョン・ディーコンらしい佳曲。


 なぜか3枚目のアルバムタイトルであるSheer Heart Attackなる曲が入っていますがパンクの影響を受けたのかなものすごく攻撃的で速くて思わずのってしまうこれは大好きな曲。

 レッド・ツェッペリンの楽曲Houses Of The Holyもそのタイトルのアルバムには入っていないけどクイーンもそれを真似てみたかったのかな(笑)。


 最後のMy Melancholy Bluesは歌い出しが「空耳アワー」の中でも僕が思うに大傑作。

 「花のパリそば~、なめこ蕎麦~」

 すいません、この曲がかかるともうそれしか浮かばなくなってます・・・

 よく聴くとイントロのフレディのピアノの旋律が微妙に日本の曲っぽい感じがするのは日本に来ていろいろと感じたことがあったのかなと思いこれまたちょっとした感慨にひたります。

 

 などなど、今は普通に好きな1枚です。

 というのも僕の常套句になった感がありますが(笑)、でもほんとうです。

 繰り返しになるけどクイーンのサウンド自体が大好きでこのアルバムはむしろ意識的に過剰にしている感じがしてそこが気持ちいいです。

 

 しかし一方で、多少回りくどい言い方をすれば、次のアルバムJAZZでクイーンもなかなかやるなと大いに見直されたのではないかということが容易に想像できるアルバムでもあります。

 なんとも複雑ですが、曲がいいというのはアルバムに対する冷静な評価を失わせる部分がありますね、或る意味反則というか(笑)。



 M先生がクイーンを好きかどうかは聞いたことなかったですが、多分少なくとも好きではなかっただろうな。

 M先生、どうしているかな、まだ日本にいらっしゃるのかな。

 なんだか久しぶりにとっても会いたくなってきました。


 最後に話題は戻って「ニュース・オブ・ザ・ワールド」の廃刊。

 僕に直接何か影響があるわけでもなく、それ自体については特に思うこともないです。


 ただ、僕が愛するロックに関係があるものの名前がひとつ消えることには一抹の寂しさを覚えますね。

 パン・アメリカン航空や丸善石油がなくなった時と同じような感じかな(笑)。