◎ERIC CLAPTON
▲エリック・クラプトン
☆Eric Clapton
★エリック・クラプトン
released in 1970
CD-0090 2011/06/30
既に幾つかの名だたるなバンドでキャリアを積み上げ若くして伝説を築き上げ始めていたエリック・クラプトンの初めてのソロアルバム。
エリック・クラプトンとスティーヴ・ウィンウッドの来日来札公演が決定したことは記事で報告しましたが、今日の1枚はもちろんその流れ、だけどまだチケットが届いたわけではありません念のため(笑)。
エリック・クラプトンが僕の人生に入ってきたのはもちろんビートルズの「ホワイトアルバム」に参加しジョージ・ハリスンと親友だったという事実からでした。
特に僕がビートルズでも好きな10指に入るWhile My Guitar Gently Weepsでギターを弾いていることからエリックに対してはもう最初っから尊敬のまなざしを送っており今でも彼は別格の人です。
でもじゃあエリックが大好きかというと・・・大好きだな(笑)。
だけどギターを弾く人に特によくいらっしゃるような崇拝しているということもなく熱心に聴き込んでいるとも言えない人ではあります。
僕は若い頃はエリックの1970年代のいわゆる「レイドバック路線」が苦手でした。
今回は話題を絞るためにいきなりそこに話が飛びますが、CDの時代になってリマスター盤が出るまでリアルタイム以外のアルバムは聴いたことがなかったのですが、70年代についてはなにかこう雰囲気が苦手でした。
今はそれがスワンプ指向というものであるのはなんとなく分かっていて少しだけどスワンプ系も聴くしそれがどういう音楽かは分かります。
僕がおそらく初めて体験したスワンプ指向の音楽がエリックの70年代かジョージハリスンで、後者はともかくエリックの「レイドバック路線」はしゃきっとしていなくて気持ちがのってゆかなかった部分があります。
もちろんスワンプ系の魅力がそこなのは今は分かりますが、これは当時自分が感じたこととして話しています。
このアルバムは「レイドバック路線」に及び腰だった頃にあまり期待しないでしかしリマスター盤が出ているので買わなければならなくて買って聴いたところ、意外なことに、一発で気に入りました。
今聴くとこれはデラニー&ボニーやレオン・ラッセルも参加してスワンプ指向を見せてるのは分かりますがでもまだ成りきっていないことを感じます。
そこがロック的で面白いと感じたのでしょう。
ロックはあくまでも真似ごとや借り物の世界であり不器用だけど成りきろうとするところの面白さを味わうものだと思います。
その辺は昨日のジョン・レノンのファンク指向も同じですね。
このアルバムがもうひとついいのはもうこのセリフは聞き飽きたでしょうけど単純に曲がいいからですね。
実はこのアルバムを聴くのは10年振りくらいなのですがかつてよく聴いてた頃はとにかく曲のよさで他が見えていなかったのかもしれない。
1曲目Slunkyはとりあえず人を集めてやってみたスワンプ指向のジャムセッションが途中から始まったようなせっかちな入り方でおおどうしたどうしたと思います。
1曲目から3曲目が実は10年振りに聴いた今朝は覚えていなくて、僕が曲の覚えが悪いことを差し引いてもこの3曲は肩慣らしのジャムセッションという感じがしないでもないです。
正式なアルバムであり力が入っているはずの最初の1枚でいきなり「練習」からアルバムを始めてしまうところが面白い。
エリック若いんだなあってひしひしと若さと力が伝わってきますね。
僕にとってエリックはもう最初から伝説であり別格の人であってエリック・クラプトンの世界が出来あがっていたのところに接して行っきましたが、当然のことながらエリックだって人間だから成長していたわけでそこを若い頃は聴き逃していたかもしれません。
4曲目After Midnightは先日のライヴ盤にも収められていて今回これを聴く直接のきっかけの曲ですが、アルバムはここから様相が一変して曲重視にシフトしていきます。
この曲は最初から大好きでしたがアルバムの中で聴くとまさに切れまくりという感じがします。
僕は昨日と今日はまさに「真夜中の後」の午前3時ごろに用があって車を運転していたので今日の僕のテーマ曲はこれ(笑)。
5曲目Easy Nowはアコースティック・ギターによる自作の曲だけど曲作りのこつをまだつかんでいない感じがして歌メロがどっちに行くか分からないような展開を見せています。
そこがいいんです。
久しぶりに聴いてこんな楽しい曲だったかって思いましたが当時はエリック自身もですがロック界全体としても曲を作る方法論が確立されていなかったんじゃないかな。
妙に浮ついた高音で不器用に歌うエリック、でもその歌メロがひたすら気持ちよくて鼻歌ソングには最高の部類ですね。
6曲目Blues Powerはレオン・ラッセルとの共作で2人の音楽への姿勢が透けて見えますね。
エリックがちょっと笑ったような歌い方に聴こえるんだけど歌メロはいいし大好きです。
7曲目Bottle Of Red Wineこんな曲があるのもエリックらしいといえばらしいかな。
どちらかといえば単純な曲なんだけど演奏も含めた全体で引き込まれるし歌メロもまたいい。
8曲目Lovin' You Lovin' Meはサビの気持ちが入った歌メロが絶品に近い仕上がりでこれも最高の鼻歌ソングのひとつ。
ただこの曲でちょっと気になるのが最後の近くでサビの歌メロをエリックが♪らーらららーとハミングする部分をエリックがなんだか歌うのが疲れたようになんとなく声を切っていることです。
当時のエリックは大変だったようだからもしかして高揚した気持ちを持続させるのがきつい時もあったのかなと。
もちろんわざとの可能性もありますが。
7、8曲目はボニー・ブラムレットとの共作だけど8曲目の歌メロを編み出したのはボニーなのかな、エリックはボニーにいろいろと学んだんじゃないかなと思ったり。
この4から8曲目の流れは雰囲気よりも曲を重視していて歌メロ好きとしてはたまらないものがありますね。
そしてアルバムの白眉が最後のLet It Rain。
この曲はエリックの曲の中でも特に好きな1曲だけど歌メロがほんとうに素晴らしい。
派手なギターのイントロで始まり曲自体はダイナミックに動いてゆく曲の中で、繊細さはないかもしれないけど揺れる気持ちをとにかく不器用にでも何でも表してみようという歌メロには爽やかさを感じます。
雨の歌だけどじとっとしてないし暗くもない、だけど僕が特に好きな雨の歌の1曲です。
アルバムを最初に聴いた時はこの曲は既に知っていたのでこの曲が最後にあるというのはなんだか落ち着かない気持ちがしました。
だけどエリックのこの1枚目の魅力は完成された部分を意図的とすら思えるくらいに排して若さと力で押し切ってしまおうという部分でもあるから聴いてゆくうちにこれしかないんだと思えるようになりました。
アルバムの最後にいちばんいい曲があるというのもアルバムとして僕が好きな部分です。
いいですね!
ロックという音楽の本来のというかそもそもの魅力を存分に感じられ再認識できる1枚です。
僕はやっぱりエリックのアルバムでも特に好きな5枚に入るでしょうね。
だけど、年をとった今聴くと、その若さがうらやましくもありますね(笑)。
さて、コンサートに向けて早くに気持ちが盛り上がりすぎないように気をつけつつ、昔は苦手だった、実は今でもそれほどしっくりときていない、エリックの1970年代も真面目に聴いてゆくとしますかね。