MASTER OF REALITY ブラック・サバス | 自然と音楽の森

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自然と音楽の森1日1枚-May04BlackSabbath


◎MASTER OF REALITY

▲マスター・オブ・リアリティ

☆Black Sabbath

★ブラック・サバス

released in 1971

CD-0038 2011/05/04


 ブラック・サバスの3枚目のアルバムはハードロックの名盤中の名盤。


 ブラック・サバスは1990年代のグランジのブームの中で僕としては突如再評価されたように感じていました。

 グランジの前にヘヴィ・メタルのブームがありサバスは当時も現役で次々と作品を発表しヘヴィメタル系のMTV番組でも映像をよく見て曲を聴いていましたが、正直言うともう化石状態だとまだ若い僕は思っていました。


 僕がサバスを聴いたのは年代的にはそのグランジブームの真っただ中でしたが、自分の気持ちの流れとしてはそのブームとは関係はなかったです。

 直接的には弟がヘヴィメタルを傾聴するようになりその影響でメタル系の幅を広げるのに聴いた、だから時代遅れのブームに乗ったというところでしょうね(笑)。

 もうひとつ70年代ロックの幅を広げる上で聴かなければならないバンドだったということもあります。


 最初に買ったのがこのアルバムで、当時神田神保町で働いていて仕事の帰りに御茶ノ水のディスクユニオンのヘヴィメタル館に寄るとこれと5枚目の中古が1000円くらいであったので買いました。


 ブラック・サバスは重くて暗いというイメージはもちろんありましたが、聴いてみると「ギターの音がきれい」と思いました。

 

 トニー・アイオミがギブソンSGを使っているのは映像で見て知っていましたが、重いけど薄いそのギターの音の特徴を活かしてうまく響かせているなと感じました。

 ギターリフが強烈で印象的なことも情報として得ていましたが、リフの素晴らしさは想像をはるかに超えていました。

 その後すぐに1、2、4枚目も買って一時的にサバスを聴き込んでいました。


 いきなりオジー・オズボーンの咳の声から始まるSweet Leafの脳天を縦に割られるような激しいギターリフに本当にノックアウトされた感がありました。

 オジーが"I love you"と言っていますがこんなぎこちないラヴソングは初めてと思ったり。


 2曲目After Foreverは時間も空間もまさに永遠を感じさせる重くて広いギターリフが素晴らしい。

 サバスの曲はともすれば歌詞よりもギターリフのほうが歌の内容を饒舌に表しているのではないかと。


 Embryoは教会音楽風のインストゥロメンタルでヨーロッパの香り、といって彼らは英国だけど。


 そしてこのアルバムの白眉はChildren Of The Grave。

 リズムはほとんどディスコと言っていいものだけど、ディスコサウンドが大ブームになるのはこのアルバムから少し後のことで、彼らはディスコを先取りしていたのかと思わせる。

 この曲のリズムはディスコとはまったく関係なくたどり着いたものでしょうけど、サバスはベースのギーザー・バトラーの貢献が大きいことが分かりました。

 実際にディスコブームの頃にディスコでかかっていたかどうかは知らないけど、かかっていても誰も違和感なくみんなが踊れたのではないかと想像します。


 Orchidはアコースティック・ギターのインストゥルメンタルでリンク音楽だけど彼らの音楽の幅広さを感じます。


 Lord Of This Worldは重たいリフで始まるけどすぐに飛び跳ねたリズムに変わります。

 そのリフは踊りは踊りでも中世の舞踊音楽の影響を感じさせるもので、チェコやハンガリーといった東欧系の響きといっていい。


 Solitudeはドラムスのビル・ウォードが寂しげに歌うけどこれはオジーには出せない味でしょうね。

 これはエレクトリックギターで演奏したトラッドといった趣き。


 最後のInto The Voidはリフの総決算といった感じで曲の展開も素晴らしい。


 最後まで飽きないで聴き通せて何度も聴き直してしまうアルバムですね。

 全体的にほの暗い雰囲気でくるまれたアルバムは、この曲が終わるとすぐにまた最初に戻るループのような感覚に陥ります。

事実僕も、今朝ふと思い立って聴いて、記事を書くのに聴いて、終わってからまた聴きました。

 中毒性があるということでしょうか(笑)。


 あらためてギターの音色の「美しさ」に触れると、廃墟の中の花というよりは、退廃的なものそのものの美しさといった感じかな。

 ある面うしろめたい、それを世間一般ではきれいと言ってはいけないようなものの中にあるほんとうの美しさを表象している、そんな雰囲気をアイオミのギターの音がそしてサウンド全体が醸し出していると思います。

 僕もSG欲しいなぁ(笑)。

 とにかくきれいな音を出しているのがこのアルバムで、知らない人にも先入観なしに聴いていただければといつも思うところです。


 彼らはハードロックの中のハードロックバンドで決してヘヴィメタルではないけど、ヘヴィメタルの「様式美」が確立されたのは彼らの貢献度が大きいでしょう。

 彼らの位置を表すと 「音はハードロック、コンセプトはヘヴィメタル」となるのではないかと思います。


 ブラック・サバスは実は大好きなバンドですが、その中でも僕はこのアルバムがいちばん好きです。

 でもサバスは人により好きなアルバムが分かれるほうのバンドでしょうね。

 

 今朝まったく突然に何の脈略もなくこれを聴きたいと思いそのまま記事にしました。

 記事にしようと思っていたものがなかなか書き進まないのでちょうどよかったのですが(笑)。