SOMETHING ELSE BY THE KINKS ザ・キンクス | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。

自然と音楽の森:CD1日1枚-April18Kinks


◎SOMETHING ELSE BY THE KINKS

▲サムシング・エルス

☆The Kinks

★ザ・キンクス

released in 1967

CD-0023 2011/04/18


 キンクスの英国では5枚目のスタジオアルバム、僕が生まれた1967年リリース。


 僕は割としつこい性格です。

 先日2度に渡って記事で言及した雑誌「メタリオン」の「英国ロック必聴盤ガイド360選」に、ビートルズとローリング・ストーンズそれにキンクスがないのがいまだに納得いきません(笑)。

 繰り返し、それらは有名だからいまさら取り上げる必要はないという判断かもしれず、それならそれで理解はできるけど、そこまで広げるなら逆に入れないほうが不自然だと思います。

 なお、俗にいう「英国4大バンド」の中でザ・フーだけが入っているからこれだけしつこいわけでもありません、念のため(笑)。

 

 そこで、その3者であれば何を選ぶかを僕なりに考えてみました。

 ストーンズについてはまだ決めかねているのですが、ビートルズはREVOLVERかホワイトアルバムかな、ロックの実験精神を重視するという意味で。

 キンクスは、少し考えてこのアルバムという結論に至りました。


 僕がキンクスを聴き始めたのは30歳を過ぎてからだから、まだ10年かそこらくらいの付き合いしかありません。

 ただ、聴き始めて暫くはかなり集中的に何枚も聴き込んでいて、今やすっかり僕の中でも真ん中の近くにいる存在となっています。

 もっと若い頃から聴いていればよかったと思う反面、その年だからよいと思えるようになったのかな、そんな思いが交錯していましたが、まあ過去のことを話しても仕方ないですね。


 キンクスは1960年前半に出てきて音楽の幅を広げてゆくわけですが、このアルバムはロックとしてのひとつの到達点ではないかと考えます。


 音楽的にも従来のスタイルからヴォードヴィル、ボサノヴァと幅広く聴かせてくれ、ロックの枠内での実験精神が最大限に発揮されているアルバムです。 

 かといってサイケに走ってもおらず、そこは彼らが時代を斜めから見ていた部分なのかな(笑)、しかし今となってはそれがむしろ安心して聴ける部分です。

 このアルバムは特にテーマを設けていないのも実験精神という点ではむしろプラスに働く部分かもしれない、というくらいに曲ごとのアイディアと出来が素晴らしい。

 キンクスは英国人らしく筋が通って気品すら感じるのも魅力だけど、英国らしさという点でもこのアルバムは最良の部類ではないかなぁと。


 「360選」の話に戻って、知らないものもすべて解説に目を通し(そのほうが多いけど)、知っているものとの兼ね合いで考えると、エンターティメント性というかショー的要素が高すぎないロック然としたものが選ばれるひとつの条件かなと感じました。

 だからビートルズはSGT. PEPPER'Sではないかなと。

 英国ロック創世記のR&Bを基にした「その他大勢」的な音のものも選ばれておらず、ある程度年代が進んで独自の色が出てきたものが評価されているのでしょう。

 もうひとつ、あまりアメリカばかりを見過ぎていない英国ロックらしさを表現しているものという観点もあると感じました。

  

 キンクスは、この後からエンターティメント性が高い物語りものに展開してゆき昔からのファンが離れていったと聞いています。

 今聴くならそれはそれで音楽として充実していて楽しいし素晴らしいと心底思うけど、そういう意味ではこのアルバムは彼らにとっても転換点になっているのでしょう。

 もちろんバンドが持つそもそものエンターティメント性がにじみ出てはいるけど作為的なものでもないし。

 おまけにここにはキンクスを代表する名曲が2曲入っている。

 だから僕が選ぶならキンクスはサムシング・エルスとなったわけです。

 

 でも、もしかして、キンクスはそもそものエンターティメント性の高さが外された理由なのかな・・・


 なんて、僕はいつまでこだわるのだろう(笑)。

 まあしかし、話題を投げかけてくれたという点で「360選」はありがたい企画でした。


 今回は割と短くまとめられてほっとしました(笑)。

 今後もこれくらいの長さで進めたいと思っていますが、どうなることやら。
 ただしその分、今回は曲ごとの話が長くなりそうですが・・・


◎このCDこの7曲

Tr1:David Watts

=シャープでスマートでキンクス的カッコよさの象徴にして英国ロック最高峰の曲のひとつかな。「ふぁふぁふぁ」という歌い出しからちょっとすかしたレイ・デイヴィス・ワールド全開、なんともいえぬ魅力に満ちた曲

Tr2:Death Of A Clown

=道化師の虚しさを言葉以上に表現しきったデイヴ・デイヴィスのヴォーカルが素晴らしい

Tr5:Harry Rag

=古き良きアメリカを愛する英国人の心

Tr8:Love Me Till The Sun Shines

=ふたたびデイヴの脱力系ヴォーカルが効果的

Tr9:Lazy Old Sun

=太陽の曲が2つ続くのも英国人らしいところなのかな、音づかいが微妙にサイケの時代を感じます

Tr10:Afternoon Tea

=この曲を最初に聴いてやはりキンクスにはこういう曲があったのかとほっとして納得しました(笑)

Tr13:Waterloo Sunset

=英国ロック60年代の至宝の1曲。へそ曲がりかもしれないけど人にはその人なりのいい時間が流れていると歌う