INFIDELS ボブ・ディラン | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。


自然と音楽の森:CD1日1枚-April02BobDylan


◎INFIDELS

▲インフィデルズ

☆Bob Dylan

★ボブ・ディラン

released in 1983

CD-0007 2011/04/02


 ボブ・ディラン1983年の作品、スタジオアルバムとしては、ええっと、22枚目か。


 僕が初めて動くボブ・ディランをテレビで見たのは、1983年、高校1年の時でした。

 その頃は「ベスト・ヒットUSA」を寝ない限りは欠かさず見るようになっていましたが、番組のコーナーのひとつ「スター・オブ・ザ・ウィーク」で、今回取り上げたアルバムから2曲のビデオクリップが流れ、それを見たのでした。


 ボブ・ディランはもちろんというか、それまでに名前は知っていました。

 ビートルズの本を読むとたくさん出てきますからね。

 でも、それ以前に、小学生の頃にラジオで流れていてなんとなく覚えたガロの「学生街の喫茶店」の歌詞にも出てきたり、名前は有名で、当時は既に伝説の人になりかかっていました。

 曲もなぜか「風に吹かれて」だけは知っていました、ラジオで聴いたのかな。


 そんな「半伝説の人」ボブ・ディランがテレビに出てきたので、食い入るように見ました。

 なんて言うとカッコいいけど、当時は僕はとにかくヒットチャートものばかり聴いていたので、ディランは仕事を終えた「落ち目の人」というイメージで冷ややかに見ていました。

 今思うと失礼で申し訳ない、そんなこと書きたくもない気分だけど、でも事実なので話しています。


 最初にかかったのが落ち着いたSweetheart Like You。

 インパクトは大きくないけど、僕は、ひそかになんとなくいいなと感じました。

 

 小林克也さんの話を挟んでかかった2曲目がJokerman。

 こちらはインパクト大あり。

 ディランの歌い方が音楽じゃないみたいで面白く、特に「おーおおー」という部分の力の入り方がそれまで聴いていた(といってまだまだ少なかったけど)どんなアーティストにもない独特の声の出し方で、口をあまりあけないで歌うんだなって思いました。

 正直、ちょっと滑稽に感じました。

 「ジョーカーマン」の漫画が途中に挟み込まれていたのも、安っぽくて心の中で笑ってしまいました。


 つまり、僕は、初めて見たディランを「滑稽な人」と感じたのです。

 道化師という感じでしょうか、今思い出すと。


 「ベスト・ヒットUSA」の翌日は、朝の授業が始まる前に音楽好きのクラスメイトが集まって話すのが恒例でしたが、ディランはインパクトが強かったようで、話が盛り上がりました。

 やはりみんな道化師の姿を見ていたようで、凄い、という人は誰もおらず、あの歌い方を真似たり、「ジョーカーマンってなんだ!?」て嘲笑したりしていました。


 これが、1980年代に育ったロック好きティーンエイジャーの姿です。

 当時はまだまだ、少なくとも若者にとっては、新しいものの価値が大きくて、昔流行った人に対しては「まだやってたのか」と冷ややかな視線を預けていました。

 残酷で冷たいようですが、そういうものでした。

 「おやじロック」なるものが確立されている今からすれば、たとい自分の身に起こったことであっても、信じられない思いがします。

 まあ、自分がおやじの年代になってはいますが(笑)。


 でも僕は、そもそもがビートルズだったくらいだから、大学生の頃には旧譜を買って価値を見出すようになっていました。


 ディランもCDの時代になって早々にベスト盤を買いましたが、でも、僕にとってディランが身近に感じられたのは、トラヴェリング・ウィルベリーズへの参加でした。

 ウィルベリーズはいつか話すとして、大学を卒業して初めてこのアルバムをCDで買って聴きました。


 CDをかける時、最初に見た高校生のあの日のことが頭をよぎり、ちょっと恐かったことを覚えています。

 当時もひそかにいいと思ったSweetheart Like Youは、ひそかではなくとってもしみてきました。

 Jokermanは若い頃に道化師だと感じた部分が魅力になって心の中にどんどん攻め入ってきました。

 凄い曲です。

 僕は、若き日のちょっとした「過ち」を恥ました。

 他もみないい曲でした。

 ディランって、ねっとりと心にひっつく曲を書く人なんだなって分かりました。


 若い頃には響かなかった音楽が、年をとると響いてくる。

 よくあることですね、当たり前というか、そうしながら音楽人間として成長してゆくのでしょうね。


 そういえばこのアルバムはマーク・ノップラーが参加していると、確か小林克也さんが言っていたはずだけど、そのありがたみが当時は分からなかったのが、CDで聴いて感じました。

 そして今ブックレットを見ると、ミック・テイラーも参加しているのですね。


 このアルバムは、最初にCDを買った頃よりも、ここ3年くらいで聴く機会が増えて、今では当たり前に大好きな1枚となりました。


 ディランはまだまだよく聴き込んでいないアルバムが多いので、こうして少しずつ、自信を持って大好きと言えるアルバムを増やしていき、やがてコンプリートしたいというのが僕の計画です。


 ディランはこれからも時々取り上げます。

 だから、ディランについて言いたいこと、思ったことも小出しにしてゆきます(笑)。



◎このCDこの3曲

Tr1:Jokerman

♪ Jokerman dance to the nitingale tune

  Bird fly high by the light of the moon

  Oh, Jokerman

=このサビが鳥好きの心に刺さって刺さりまくります

Tr2:Sweetheart Like You

=「スウィートハート」という言い方はこの曲で知りました

Tr8:Don't Fall Apart On Me Tonight

=ねっとりとまとわりつくディランの曲の典型