抜け雀 | GUILEさんの毎日がBLUES、ちょこっとHARDBOILED 18TH SEASON

GUILEさんの毎日がBLUES、ちょこっとHARDBOILED 18TH SEASON

EVERDAY I HAVE THE BLUES AND A LITTLE BiT OF HAREBOiLED STYLE.

毎日がブルース、ちょこっとハードボイルド。




小田原の宿の一軒の宿屋。小汚い身なりの絵師が宿泊する。

朝はともかく、昼夜と大量に上酒を飲む。それが五日ほど続く。


支払いが心配なおかみさんは亭主に、宿代の請求をせっつかすが、出立の歳によいと言った手前、請求出来ないと亭主はいう。それでは、酒代だけでも払ってもらおうとするが、絵師は一文もないという。


絵師は亭主に、岩清水に上等な墨をすらせて、墨汁をつくり、その墨汁で雀を白い襖(衝立)に描く。朝になると、雀が抜け出て餌をついばみまた戻って来るという。自分が帰ってくるまで売ってはならぬと立ち去る。すると絵師が言うとおり、朝、雀が餌を探しに飛び出る。


絵が評判になり、宿屋は繁盛するが、あるとき老人がやってきて絵を見るなり、雀は間もなく死ぬと言う。亭主はおどろき、何とかしてくれと頼むと・・・


流行らない宿屋に風采の上がらない絵師や職人がやってくる噺は、他に「竹の水仙」とか「鼠」とかがある。


老人が描いたのは鳥籠で、その籠に雀が入り、羽を休める。

老人は絵師の父親で、「親に籠描き(駕籠かき)をさせてしまった」と絵師が嘆くサゲ。当時駕籠かき人足は最下層の職業であった。別名雲助と言い、雲のようにいつまにか現れ、いなくなるという意味から。雲助を扱ったサゲには別の噺に「蜘蛛駕籠(住吉駕籠)」という噺もある。


昨今の職業差別を考慮してか、昨日の南光さんのサゲは、鞍馬の大杉を止まり木を描き、「鞍馬の大杉・・・天狗になるな」と言う教えだと感涙するサゲだった。