やもめ男にお嫁さんを世話をしてあげると言う人がやって来た。
年の頃が同じで女性の嗜みは一通りできる才色兼備な女性だと言う。しかし疑り深いこの男、こんな頼りない醜男のやもめに、そんな女性がくるわけがないとなにか裏があると思い問いただすと、この女性、幼いときから京都のお公家さんに奉公していたため、言葉遣いが丁寧過ぎて難しいという。そのために縁談が流れているのだという。
「遥か西方を眺むれば六甲(むつのかぶと)の頂きより土風(どふう)激しく小砂、眼入す」
つまりやな
「はるか西の方を見上げていたら、六甲山から吹いて来た土風で目に砂が入った」
というわけや。
言葉なんてすぐに慣れるかぞんざいになると、男はその晩に言葉の難しい娘さんを嫁にもらうが、名前を聞き出すのも一苦労。
「なに、わらわの姓名なるや。父は元京都の産にて、姓は安藤名は慶三字は五光と申せしがわが母三十三歳のおり、丹頂の夢を見、わらわを孕みしがゆえに、垂乳根の胎内より出でしころは、鶴女、鶴女と申せしがこれは幼名、成長し後延陽伯と申すなり」
翌朝、若嫁さんが朝餉の支度にかかる頃から、一騒動に・・・
江戸落語では「たらちね」で演じられる。落語の題もで流行り廃りがあるせいか、最近、この「延陽伯」やる人も少なくなったかせいか、とんと聞かなくなった。
まず「やもめ」とか「(いかず)後家」とか言葉が今の時代はあかん。嫁をもらうという言葉もNG。難しい時代になったもんだ。
YouTubeに枝雀さんではなく、文三さんの「延陽伯」があった。
枝雀さんの息子さんである桂りょうばさんとかやらへんかな。