カーリングが終わって、ちょっとチャンネルを変えると桂福団治師匠が「日本の話芸」で、落語をしていた。
「丁場、お立て替え」と言う台詞で、「莨(たばこ)の火」だとわかった。珍しい噺で、今、やらはるのは福団治師匠くらいだろうか?
住吉街道を客待ちしている駕籠屋、堺の方から雪駄履きの品のいい風呂敷包みを首に結わえた男性を見かけて声を掛ける。
駕籠に乗ってくれたが、これからお茶屋で芸者遊びをしたいと言う。駕籠屋は北新地の綿富の女中と知り合いだからと綿富へ連れていく。
若い衆の伊八がその客の担当をする。まず駕籠屋の駕籠賃に一両を建替えて欲しいと頼む。次に見習い衆に十両、舞妓衆に十五両、芸者衆に二十両と祝儀をはずむ。その度ごとに伊八は丁場に建替えを頼むが、段々とその値段が多くなり、ついに丁場は一見の客にそれ以上出せないと断ってしまう。断られた客は仕方ないと風呂敷包みを開けると、それは小判の山。散々小判をばらまいたあと、支払いを済ませてスッと帰ってしまう。
綿富の主が伊八にあとをつけさせると、今橋の鴻池に入る。使用人に誰かと尋ねると、鴻池の親戚である泉佐野の食(めし)の旦那だとわかり、建替えを渋ったばっかりに、伊八は自分がしくじりを侵したことを知る・・・
食、食野(めしの)は当時三井、鴻池と並ぶ豪商であったが、回船業の停滞と、大名家への貸し金が廃藩置県で回収不納になり没落した。御三家の紀伊家は食野に対して莫大な借金をしていたが、明治維新で踏み倒したそうだ。これが大きな一因になったらしい。
サッカー選手の食野亮太郎選手はこの食野家の末裔なんだとか。
米朝師匠の本「米朝ばなし」で、この噺は知ったがついぞ米朝師匠の「莨の火」は聴いたことはなかった。