演じるのは東京では講談の坊主頭の一龍斎貞水か、木久扇さんの師匠の林家正蔵(彦六)だった。上方では咄家の露の五郎(露の五郎兵衛)が怪談噺をしていた。あまり知らないかもしれないがあの歌丸さんも怪談噺をしていた。
「真景累ヶ淵」は三遊亭円朝の作。因果因縁のこれでもかこれでもかと畳み掛けてくるなんとも言えないくらい恐ろしい話だ。とても長い長い話で、発端となる座頭の宗悦が旗本深見新左衛門に殺される「宗悦殺し」、宗悦の娘豊志賀が新左衛門の息子新吉を恨みながら死ね「豊志賀の死」が代表的で、「真景累ヶ淵」と言うとこの二つがだいたい演じられる。
昨夜は動楽亭で桂文鹿さんが語る「真景累ヶ淵」の「宗悦殺し」を聴いた。ギンギンに冷房を効かしたところに、前に座っていた兄ちゃんが暑いのか扇子で扇いでいる上に、文鹿さんが陰気に噺をするものだから、寒気がいっぱいで鳥肌が立った。
帰りに動楽亭から市大病院まであがってくる少しの間の暗い夜道が子どもの頃にように怖くて仕方なかった。シックスセンスがあったとしても怖いものは怖い。遠くに飛田新地の灯が見えて不思議な感じがした。そういえば、昔は夜の闇がそこかしこにあった気がする。
これは歌丸さんの「真景累ヶ淵」。全編の語りだそうだ。8時間ある。