早いもので、健さんが亡くなって一年が経った。本日が一周忌。
私生活が謎の人だったので、本当に何処かでまだ生きてるんじゃないかと錯覚する。
昔、健さんが老人施設に入居する老人役を演じたドラマがあった。サングラスをかけて釣りをしている若々しい健さんを見て違和感を覚えたが、実年齢はそのときで入っていてもおかしくない年齢だったはず。
このドラマが印象に残っているせいか、何処かの施設に名前を偽って健さんが入居しているのを空想する。
「あんた、高倉健に似ているね」
施設に入居している誰かに言われる。
「はい、よく言われます。あんなにかっこよくはありませんが…」
ぼそぼそと健さんが受け答えする。
「高倉健も亡くなって一年たつんだね」
「早いですね。もう一年ですか…」
白々しく窓の外の遠くを見る。そんなのを想像する。
何処かで生きてるんだよね。そう、それぞれの胸の奥に、みんなの、それぞれの健さん、高倉健として…