また今年もこの日が来た…
本当に、昨日のことのように思い出す。
病院からの電話で目が覚めた。朝5時。まだ暗く、クルマのライトを点けて病院へ走った。
母はすでに意識はなく、力なく開いたら手のひらを握りしめたがすぐに開く。ずうっと母のその手を握りしめていた。
親父があとから来て、二人で見守った。
姉はすぐには来れなかった。
7時40分。機械のアラームがなり、波をうっていた心電図が真っ直ぐになった。
平成10年5月7日。母の命日。余命三ヶ月と言われたけど、半年以上生き延びた。でも、何もしてやれなかった。
その年の母にとっての最後の桜はすぐに散ってしまった。
死期を知ってか、知らずか、残念がる自分に母はこう言った。
「また、来年咲くやないの。」
その言葉が今でも頭に響く。あれから「今年の桜は今年の桜、来年咲く桜じゃない。」と思っている。
あれから17年たった。気持ちは何一つ変わらない。当時在籍していた出向先にU野さんというベテランのオヤジさんがいた。
「いつまでも、親の死に目は忘れないよ。忘れてもいかんよ。」
そう、慰めてくれたのを思い出す。そういつまで経っても忘れらない…これからも忘れないと思う。