去年までは、T井のおじさんと、よく高校野球の話をした。
T井のおじさんは、長いこと、少年野球の指導していたので、地区予選から見に行く。
ちょうど、T井のおじさんと出会ったのは、田中まーくんと斎藤ゆうくんの投げ合いの頃からだったので、久しく遠ざかっていた高校野球をまた観戦し始めた。
うちの家の真向かいは、U村さんの家の裏手で、こどもの頃はD居の川を挟んで畑があった。春はキャベツ、夏にはトマトを作っていた。
U村のおじさんは、小柄なながら、苦み走った彫りの深い男前で、趣味が高校野球観戦だった。パナマ帽を被り、麻のスーツを着て見に行く姿を今でも覚えている。もっとも、あのくそ暑い甲子園では、スーツは脱いで見ていたとは思うが・・・
U村のおじさんは畑で倒れて、親父が見つけて救急車で送った後は一度も帰って来ずに病院で亡くなった。跡を継いだU村の兄ちゃんも、心不全で、数年前、五十前に若くして亡くなった。
今、残された兄ちゃんのお嫁さんと三人のこどもさんは、ひっそり暮らしている。たくさんの田や畑は誰がしているんだろうか。
高校野球と言えば、U村のおじさんのことを思い出す。いよいよ高校野球も大詰めベストエイトだ。これからが面白い。
おそらく、T井のおじさんは、野球が終わればもう一つの道楽、タイへきっと遊びに行くのだろう。