『鬼平犯科帳』のエンディングは、ジプシーキングスの「インスピレーション」の流れるなか、雪の降る夜に、男達が寒さに震えながら夜泣きそばを啜るシーンで終わる。「あゝ、終わった。」と感じさせるシーンだ。
鬼平で、雪と言えばこのシーンと、『本門寺暮雪』を思い出す。今朝の雪でこれを見ようと決めた。
平蔵は、かつて同じ高杉銀平道場門下で今では乞食坊主に落ちぶれた井上録之助が、「凄い奴」と呼ばれる男に狙われているのを知る。
平蔵や岸井左馬之助にいささか剣の腕は劣るとも、木村忠吾が百本打ち込んでも一本も打ち込めない剣の腕の録之助もその「凄い奴」に切られ、一度は命からがら助かった過去がある。
その凄腕の「凄い奴」が本門寺の石段において、上から急襲し、平蔵たちに襲いかかる。
剣の達人平蔵も、さすがに、「凄い奴」には敵わず、まさにこれが最後と思われたとき、平蔵を助けたのは、石段下の茶屋で、煎餅を分け与えた一匹の柴犬であった。
ひるんだ「凄い奴」を仕留めた平蔵は、その柴犬を飼うことにする・・・
著者池波正太郎もこの話しも好きなエピソードの一つに数えている。その柴犬のモデルは師の長谷川伸が飼っていた柴犬「クマ」らしい。この犬も「クマ」と名付けられ、その後何度か登場する。
この話は、『鬼平犯科帳(九)』収録されている。
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