学生時代からお世話になっている書の師匠O先生のお父上先代のT先生には幾人ものお弟子さん、自分が先生と呼んでいた人達がおられた。
その中にN先生がいた。年が他の先生方より若く、我々学生の面倒をよくみてくださった。
やがて、N先生は芸術観の違いや運営方針の相違から一門から離脱した。縁は切れたが年賀状の交換は続いた。
そして、阪神大震災。
被害の大きかった神戸の東灘にお住まいのN先生と連絡がつかなかった。どうなされたかどうか心配だったが、自分にはどうしたらいいかわからなかった。連絡をつけるのがこわかった。つけられなかった。
翌年、N先生の年賀状が届いた。一言、「元気です」の言葉を添えて。
あれから、十五年。震災体験が風化されていると叫ばれているなか、未だにN先生に震災のことは聞けない。
本日、震災があった1月17日。震災に遭われて亡くなった多くの犠牲者に黙祷を捧げる。