「枕草子」にみるグロカワ、キモカワ、ギャップ萌えと | ブラタカタ・・・通訳案内士試験に出題された場所の旅道中

ブラタカタ・・・通訳案内士試験に出題された場所の旅道中

2007年以降、300人以上の通訳案内士を養成してきた通訳案内士試験道場の高田直志です。案内士試験に出題された場所を津々浦々歩いたときの旅日記です。案内士試験受験生は勉強に疲れた時の読み物として、合格者はガイディングのネタとしてお読みください。

幼さといやしのメイドカフェ

 「小ささ」「丸さ」「幼さ」「いやし」という、清原さん好みのキーコンセプトを見出し、秋葉原を改めて歩くと、やはりこの町は「うつくしき」町であることに気づかされる。メイドカフェに行った。メイドさんたちはみな小柄であり、話し方は幼い。身長170㎝、体重70㎏で敬語を使いこなすメイドさんなど絶対いない。そうでなければ「いやされない」からだ。

ドリンクを持ってきてもらい、「おいしくな~れ♡」と、お決まりのおまじないをかけてくれるのは、幼稚ながらもいやされる。言葉には魂が宿っており、それは現実社会にまで作用するという考えがある。これを「言霊(ことだま)」と呼ぶなら、このおまじないは正に言霊の力により、ただのドリンクがおいしいドリンクにしようとしたのだろう。そのひたむきさがかわいい。未熟な子がひたむきにがんばるのを、みんなで応援するということこそ、この町が生んだアイドルAKBの在り方ではないか。もし彼女らが芸大の声楽専攻で、バリトンで持ち歌を歌っても、かえってギャグにしかならない。

 

グロカワ、キモカワ、ギャップ萌え

しかし町を歩くとかわいいものだけではない。むしろかわいいものとドクロがいっしょに描かれていたり、かわいい子の目から赤い血が出ていたりする「グロカワ」や、「チビ・ハゲ・デブ」のおじさんを可愛く表現するシュールな「キモカワ」など、「かわいさ」も一筋縄ではいかない。

「枕草子」のみのむしに関する文を思い出した。「みのむしには本当にキュン死にしそう。鬼の子というので、親が親なら子も子、悪いに違いない。親のボロ服を着させられて、「じきに秋風が吹くころ戻ってくるから、待ってろ!」と言われたまま放置されたのもしらず、9月ごろになって風が吹くと「おとうちゃーん!おなかすいたよ~!」とおびえて泣くんだから、かわいそうだけどかわいすぎる。(蓑虫、いとあはれなり。鬼のうみたりければ、親に似てこれも恐ろしき心あらむとて、親のあやしき衣ひき着せて、「今、秋風吹かむをりぞ、来むとする。待てよ」と言ひ置きて逃げて去にけるも知らず、風の音を聞き知りて、八月ばかりになれば、「ちちよ、ちちよ」と、はかなげに鳴く、いみじうあはれなり。)」

親に恵まれぬ幼い子がボロ服を着せられて放置されるというマイナス面。それに、けなげに父を待つそのひたむきさというプラス面。それらをかけ合わせて生じるものが、元祖「キモカワ」「グロカワ」であり、清原さんはこのミスマッチにギャップ萌えしたのだ。いや、厳密に言えばギャップを二項対立とみるのではなく、陰と陽が一つにとけ合っている様子に萌えたのだろう。

そしてなによりも、「みのむし」のようなプラスとマイナスが一つになったキャラは秋葉原のどこにでも見える。特にハロウィーンの時期には、この町を「キモカワ」「グロカワ」が埋め尽くす。平成後半の十数年で定着したハロウィーンだが、その普及の裏にあるのはこの国の人々の潜在意識にある「キモカワ」「グロカワ」を「あはれ」と思いつづけてきた千年の美意識があったのかもしれない。

 

平安朝の美が生き続けるアキバ

 帰りに歩きながら「ガルパン」「艦これ」等、軍服姿の美少女キャラの看板を見た。軍服×美少女。これもまたギャップ萌えである。そもそも「セーラー服」すなわち水兵の服を女学生の制服としたこの国のおじさんたちの嗜好にも、相容れないものがとけあっていく平安朝以来の国風文化が連綿と続いているのだ。

 千年前の京都の宮中で生まれた美意識「うつくし」の美的DNAは、「かわいい」「萌え」に形を変え、確実に千年後のアキバに生き続けている。そしてその魅力がこの町から世界中に発信されていることなど、まさか清原さんは想像もできなかったに違いない。

 

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