帰郷から2週間。
いっぱい泣いた。
兄と二人で過ごした夜、思いっきり想いを吐き出して、一区切りついたつもりだった。
父が死んで、兄弟だけになってしまって、昔の事を知る人は隣のおばちゃんだけになった。
僕が生まれる前の父と母のことは兄も何も知らない、今のうちに、根掘り葉掘り聞いておく必要に迫られる。
父と母の出逢い。 父の昔の仕事。 祖父や祖母のこと。
母がうちに来る前に、お隣に嫁に来たおばちゃんは何でも知っている。
そこで聞いた、兄のこと。 僕の知らないこと。
母が死んだ後、家には父と祖父が残された。 その時、兄は家族を連れて実家に戻ろうとしたらしい。
「そんなこと聞いてないよ」。
先月の葬儀の後で、兄には聞いてみたのだ。 なぜ兄はあそこに家を建てたのかと。 答えは、「嫁さんの実家のすぐ近くに土地が出たから」。
どこに家を建てるかは運とタイミングなのはわかっている。 でも、心のどこかに、「兄は出て行ったんだなぁ」、という気持ちもあった。
それなのに、家に帰ろうとしてたなんて、聞いてないよ。
25年も僕だけ蚊帳の外か・・・。
数日、食事が喉を通らなかった。 瘦せた。
やっと気持ちが落ち着いたところに、兄が休日に会いに来た。
またやっちゃったよ。 この2ヶ月近く泣いてばかりだ。
結局、僕だけが知らなかったことが悲しいのより、兄に感謝する気持ちの方が勝った。
実現はしなかったけれど、家に帰ろうとしてくれてありがとう。 出て行っただけの人じゃなかった。 兄がそんな人で良かった。
ただ、そんなことと25年前に知っていれば、兄のことをどんな人と思うのが違っていたかも知れないし、鉄砲玉の僕の方が家族を置いてきぼりにしていたのも自分のせいだし。 取り戻せない何十年を悔やむ気持ちを振り払えない。
また泣いた。
続く。