米国のジョー・バイデン大統領は、6月4日、米国・メキシコ間の国境管理を強化する目的から、移民の入国を制限する新たな政策を発表した。このドラスティックな措置は、11月の大統領選挙を睨んだものである。4月下旬に発表されたギャラップ社の世論調査によると、移民政策は経済やインフレを上回り、有権者がもっとも重視しているテーマになっている。前大統領で今回も大統領候補になっている、ドナルド・トランプとの違いを際立たせるため、バイデンは移民を「悪者」扱いしたことはない、メキシコと「対等のパートナー」として、ともに取り組むと約束している。

 

「移民を悪者扱いしたことはない」

 

バイデンは、メキシコとの国境から、違法な形態で入国する移民の数が、1日に2,500人の上限を超えた場合、一時的に国境を閉鎖すると発表した。この数字はすでに、米国では現実となっているものである。民主党大統領によって署名された政令は、この上限を超えた場合、亡命申請による入国や移民について、当局はこれを受け付けず、メキシコへの強制送還を可能にする。1日の申請者が1,500人を下回った場合、国境は再開される。

 

「この措置は、われわれが国境の管理を回復することを助けるであろう」、バイデンはホワイトハウスでの演説で、こう述べて続けた:「われわれは隣国のメキシコを攻撃するのではなく、ともに働くのであって、われわれの関係を一層強固なものにする」。大統領はメキシコと「対等なパートナー」として、協力していくことを約束し、6月3日には、前日にメキシコの大統領選挙で勝利した、メキシコ最初の女性の大統領となる、クラウディア・シェインバウムと、電話で話したことを紹介した。

 

民主党の大統領はその演説の中心部分で、トランプとの違いを明白にしようとした。かれは数か月前に、同じ共和党の議員にたいして、2党間で交渉し、仕上げた法案にたいして、それは大統領令として発表されていたものだが、反対票を投じるように命令した。バイデンは共和党内のもっともトランプに近しいものたちの決定について、「極めて冷笑的な政治行動」と決めつけた。

 

バイデンはまた、この大統領令にたいして、民主党議員の一部から出ている厳しい批判にたいして、自身を弁護した。かれは自分が「移民はつねに米国にとって救命具である」と信じていると語った。「したがってわたしは移民を悪者であると考えたことはない。わたしはかれらを、わが国の血に毒を盛るものとしたことはない」。かれはこのようにトランプを批判した。トランプはアドルフ・ヒトラーが使った言葉のように、「この国の血に毒を盛る」という言葉を使った。

 

「わたしは国境で、子どもたちをその家族から引き離したりしないし、宗教信仰を理由にして、ある特定のグループの、入国を禁止することもしない」、バイデンはこのようにトランプによっておこなわれた政策を批判した。トランプは国境で家族を引き離したし、イスラム教が多数派の国からの入国を禁止した。大統領は、世論調査のなかで、この問題が大統領選挙の重要なテーマになっていることが明らかになって、移民政策について、方向転換を図ろうとしている。

 

トランプの反応

 

トランプの選挙チームは、この大統領令にたいして、「国境の安全のために」作られたものではないとコミュニケで批判した。共和党が常におこなっているメッセージ、米国での暴力的犯罪の増加は、不法移民に責任があるという、何ら公式データに基づかない批判を繰り返した。

 

大統領任期中に、メキシコとの国境に壁を建設すると主張していたトランプは、ホワイトハウスに戻るために、かれの反移民のレトリックを強めている。「何百万人もの人々が、われわれの国に入ってきた。そして現在、4年間の弱くて失敗した指導力、惨めな指導力ののちに、腐敗したジョー・バイデンが、ようやく国境について何かをやろうとしている」。トランプ、77歳は、かれのソーシャルネット、「社会の真実」(TS)上のビデオで声をあげた。

 

2023年だけで240万人以上の移民が、米国南部の国境を越えた。大多数は中米やベネズエラから、貧困、暴力、気候変動による自然災害の激化から逃れてきたものだ。ここ数か月はその数が減少しているとはいえ、12月には、1日に10,000人の記録を超えた。

 

「移民にたいする罰則化の行動」

 

バイデン政権は移民の流入を抑えようと、メキシコそのほかの国々と協力して、経済政策やより制限的な法律の適用によって減少を目指してきたが、有権者への世論調査では、これらは不充分であったと答えている。一方ではこの大統領令は、活動家たちからの批判の波を引き起こし、これをトランプ政権がおこなった措置に通じるものであると見做された。

 

最初に反応した組織の一つは、米国自由人権協会(ACLU)で、この大統領令が、2018年にトランプが出した入国禁止令を「見習った」ものだと、コミュニケのなかで警告した。ACLUは2018年にトランプ政権が発令し、この協会が最高裁に提訴して、法令の実施を阻止したときと同じように、司法機関で争うことを発表した。

 

「移民の人権を守るための連合」(CHIRLA)の代表、アンヘリカ・サラスは、亡命申請者に入国を拒否することは、かれらにとって取り返しのつかないことになると語った。「これは政治的な行動であり、移民にたいする懲罰化であり、わたしたちは裁判所で争う」、サラは強調した。

 

この措置への反対は、カリフォルニア出身のアレクス・パディジャ上院議員のように、バイデン陣営のなかからも起こった。「トランプの亡命禁止を復活させることで、バイデン大統領は、米国の価値観を貶め、迫害、暴力、権威主義から逃れてきた人々に、米国への亡命が認められるという機会を奪うもので、わが国の義務を放棄するものである」。パディジャはコミュニケのなかで述べた。

(通算4051) (Pagina12の"Estados Unidos:Biden ordeno restringir el ingreso de migrantes a cinco meses de las elecciones")

 

(foto:EFE)