35歳、事前に公務の経験がなく、黄金の揺りかごのなかで育ったダニエル・ノボアは、11月23日、エクアドル大統領に就任した。エクアドルの歴史のなかでもっとも若い大統領は、その短い実務的な演説のなかで、暴力と貧困との闘いを訴えた。かれの任期は18ヶ月でしかないが、そのなかで政治的不安定とも立ち向っていかなければならない。ノボアは任期を終えることのなかったギジェルモ・ラッソ前大統領の任期を全うさせるために選出された。ラッソはこの5月、自身の汚職にたいする弾劾裁判を回避するために、議会を解散し、選挙を前倒ししたのだった。国民議会の状態は複雑なものがあり、そこではコレア主義が最大勢力であり、大統領は最初に副大統領、ベロニカ・アバドとのあいだで軋轢を生み、内閣の組閣はいまだ終了しておらず、大きな不安定さのなかにある。

 

ラテンアメリカ地政学研究所(CELAG)の研究者、アンドレス・チリボガによると、エクアドルの状況は、新政権にたいして、早い時期での成果を求めるであろうという。「有権者が新政権にたいしてつねに与える猶予期間ののち、ノボアは結果を早期に出さなければならない。財政的な手段は非常に制限されている。とりわけ治安の問題において、具体的な結果を出すためにはあまりにも時間は短い」、『パヒナ12』紙とのインタビューで表明した。一方シモン・ボリバル・アンデス大学のサウディア・レボジェル教授は、ノボアにとって大きな課題は4つあると強調した:財政赤字、治安、雇用、社会保障である。「しかしながら演説のなかでは、治安と雇用の問題しか語っていない。かれは特に何も発表していない。したがってかれの仕事がどちらに向かうのか、見守らなければならない」、レボジェルは強調した。

 

エクアドルを覆う治安問題を失業問題と関連付けて、ノボアは就任演説で、「最初に暴力を減少させ、発展が日常化されるような国家」を作ると述べ、「暴力と闘うためには、失業問題に取り組まなければならない」と強調した。2018年から2022年のあいだに殺人件数は4倍となり、10万人あたりで26件と上昇した。ノボアは燃えさかる刑務所システムを引き継ぐことになる。そこでは組織間の抗争によって、2021年以来、460人以上の死者を生んでいる。若き実業家は国境を軍事化し、監視カメラの設置を増やし、海上に強固な刑務所を建設すると約束した。

 

大衆にたいする緊縮政策か、それとも寡頭支配層にたいするものか?

 

公式のデータによると、32万3000人以上が失業しており、労働者の50%以上が非正規労働に従事している。極貧を含む貧困率は、公式発表では38%である。ノボアは経済を活性化させるために米国と欧州を廻り、投資と借款を得ようとした。一方では対外債務、それは47億4000万ドルに増加しており、その返済の義務と、エクアドル民衆の必要とのあいだで、バランスを取ると約束している。

 

チリボガは、ノボアが伝統的寡頭支配層の出身であることを思い起こさせ、その利益に反する政策をおこなうことはないだろうと考える。「もっとも手っ取り早く公共投資をおこない、経済の流動性を高めるため、資金を集める政策は、大企業グループ、自分自身を含めて最大の債務者、税金逃れのグループから、負債を回収することであろう。あるいはもう一つの方策はレニン・モレノ元大統領がおこなったことで、IMFや金融グループとの約束を実行するために、国家の自己資金調達メカニズムの制限を法的に撤廃することだろう」、エクアドル・カトリカ大学の社会学者は強調する。かれによると、大統領は「かれの階級、IMFと銀行からの債権者とケンカをするか、大衆にたいする緊縮政策を強化するかのどちらかとなる」。

 

内閣における疑念と摩擦

 

国家元首の就任ののち、国民議会でおこなわわれた式典のなかで、ノボアは16人の閣僚を任命したが、4つの職務についてはいまだ空席のままである:内務、経済・金融、女性・人権、通信・情報社会である。ノボアは日曜日までには組閣を終わらせたいと述べている。現在までのところパリテ(女性8人、男性8人)と、とりわけその構成のなかで若い世代の存在を強調している。

 

チリボガは、大統領の就任演説について、「傲慢、横柄、重要な決定や人事について無知というリスク」が見られると見做した。ベロニカ・アバド副大統領は、就任式後にカロンデレ大統領宮殿で開催された公式昼食会に出席せず、キトの市場に赴き、商人たちの出迎えを受けて食事をおこなった。ジャーナリストからの質問を受けて、アバドは強調した:「わたしたちのお祝いは、エクアドル民衆とともにあるべきです」。わずかにその数時間後、ノボアは彼女をテルアビブに派遣し、「イスラエルとパレスチナのあいだの紛争が激化するのを防ぎ、平和のために協力する」ものであると説明した。

 

チリボガが続けるところでは、新大統領は多くのフレッシュな人物を閣僚に任命したが、かれらはほとんど経験を持っていないという。「たとえば国防大臣に任命したジャンカルロ・ロフレドは、ティクトクのインフルエンサーで、武術のエキスパートであり、護身術をアドバイスしている。かれがわれわれに、嬉しい驚きを与えてくれることを期待したい。しかし最初の発言を聞くかぎりでは、国家の職務にたいするナーバスな状態とかれの治安の分野での闘い、果たさなければならない役割についての無知をさらけ出している」。

 

議会における同盟関係を探る

 

ダニエル・ノボアは2021年に国会議員に選ばれているのだが、エクアドル人にとってはかれの名字は、かれの父親、100万長者でバナナの輸出業者、アルバロ・ノボアによって知られている。かれは大統領候補として5回出馬して、5回失敗した。ノボアは議会において多数派を持っておらず、かれの同盟者は、137議席のなかでわずかに13人に過ぎない。先週かれは「市民革命」(RC、最大勢力で51議席)、右派のキリスト教社会党(PSC、18議席)と同盟を結んだ。これにより改革推進のための支持を期待している。

 

「政府が法律を送ってきたときに試されるだろう」、レボジェルは『パヒナ12』紙に語った:「キリスト教社会党は20年間税金に反対してきた。市民革命は最高指導部にたいする恩赦や赦免、訴訟を終わらせる何らかの解決を最優先課題にしている。この流れで何らかの新しい動きがあれば、それぞれの分野での役割が明らかになるだろう」。一方でチリボガは:「この点についてノボアは、投票において得点した。かれは団結を作り出し、政治家間の緊張を和らげることができるというシグナルを出した。人々はこれについてウンザリしており、それはノボアが選挙キャンペーンでのカードの一つであった。現在ノボアとキリスト教社会党は議会議長を出しており、議会の経済委員会を握っており、もしも本会議で行き詰まるならば、憲法上の拒否権が大統領に与えられている。

 

市民革命の役割

 

今回の前倒しされた選挙においては、異常な政治暴力によって特徴づけられており、そのなかでは大統領候補の一人、フェルナンド・ビジャビセンシオが暗殺されることまで起きたのだが、その後にノボアが上昇してきたことは、人々を驚かすものであった。ノボアは第1回投票前におこなわれた討論会で良い結果を生んだのと、右派の一般論に陥るのを避けて、実利主義を展開したおかげで決戦投票に進むことができた。コレア主義は大統領選挙では敗北したものの、国民議会においては第1勢力という、重要な政治的比重を保っており、エクアドル内での重要な県の知事をも握っている。

 

レボジェルによると、市民革命の政治的課題は、ここ数か月のあいだ変わってはいないと指摘する。「かれらの指導者が戻ってくるまで、どれだけ待たなければならないか知らない。かれらも刷新しなければ、行動の余地があまりないことを理解しているだろう。新大統領に実行してもらいたいことは、早急に為されなければならない。2月には新たな選挙が召集され、誰もが立候補したいと思うだろう」、教師であり研究者は強調した。

 

チリボガによると、何年ものあいだの国外追放と弾圧ののち、党を維持してきた岩盤層の票を、軽視することはできない。しかしとチリボガは続けるのだが、大統領に復帰するためには充分ではないと説明する。その意味は:「二極化を拒否する層は、新しい見方をおこない、個人的な成功を問題解決の選択肢とみなす層は、市民革命からは遠い。この数年間のあいだ、コレア元大統領の運動は、過去の成功事例に賭けるばかりで、これらの層との結びつきに失敗してきた。市民革命は課題を持っていて、それはその本質を失うことなく、あるいは変形することなく、ヒビ入れることなく、新しく創生することである」。

(通算4006) (Pagina12のGuido Vassalloの"Daniel Noboa qsumio una presidencia breve y de enormes desafios"による)

 

(foto:Pagina12から)