「――――――映画のチケット。」
とある一日の中、仕事の同僚の男性に呼ばれ、給湯室に行った。
雅「ん?…どうしたの?」
男性は何かぐったりしている。
相葉は心配して覗き込んだ。
すると、いきなり肩を掴まれた。
―――!?
「――お願い!これ、貰って?」
そう言う男性の手を見ると、握られてる一切れの紙が。。
雅「・・・・ん??」
そこにはくしゃっとなったチケット2枚があった。
雅「これ・・・どうしたの?」
「俺、、その日・・・どうしても残業を頼まれてて・・・彼女にも了承を得て何とか丸く収まったんだけど・・・これ・・・どうしようと思って・・・」
とチケットに目をやる。
雅「・・・うんっ」
「で・・・相葉にあげようと・・・」
雅「ほんと?…いつなの?」
男性は俯いて言った。
「・・・・・・・明日。」
雅「・・・・・・あ・・・・・ああああああ明日!!???」
びっくりしすぎて、腰が痛くなった。
――いてて・・・
「ごめん・・・捨てるにも捨てれなくて・・・」
相葉は男性の落ち込み様にせつなくなり、止むを得ずチケットを受け取った。
「・・・・え?」
雅「んじゃいいよっ、俺行くからっ」
「・・・ありがとうっ・・今度必ずお礼するから!…残業でも何でも、代わるから!!」
雅「いいっていいって!!」
笑顔で男性の肩をぽんとして、男性は給湯室を出た。
相葉はじっと受け取ったチケットを見つめていた。
―――どうしよう・・・明日って、いくらなんでも行く人限られてくるよな・・・
掴まる可能性も低い・・・
でもまぁ、電話してみるかっ。
と、手あたり次第友達を誘った。。でも、案の定中々皆空いてなかった。
だよなぁーーー、受け取ったはいいものの、捨てるにももったいないし・・・
んーー捨てるしかないのか?…でも、せっかくくれたんだから・・・
考えていても何も決められず、一日が経ち、当日になってしまった。
俺はベットの上でうなだれた。
やべぇ・・・どうしよう・・・誰か、誰か一緒に行ってくれる・・・
すると、相葉は何かを思い出した。
2枚・・・ただ見るだけだからいいか・・・一応言ってみるだけ・・・・
そう思い、一階に下りた。
下りてみると、洗面所に明かりが見える。相葉はチラッと見ると、、
『妹』が歯磨きをしていた。
髪ボサボサで、パジャマ姿で、目がうつろで・・・
ちょっとドキッとした。
―――こんな姿も見れないんだなって、寂しくなった。
だから、最後にと勇気を出して『妹』に言った。
――――でも、緊張しすぎて会話の部分ほとんど覚えていない。
俺、大丈夫だろうか?顔引いてないか?
普通に喋れただろうか?
でもOK貰えたことはなんとなく覚えている。
俺はトイレに駆けた。
深く溜め息をついて、小さくガッツポーズをした。
俺の心は予想以上に嬉しいようだ。
嬉しくて、今叫びたいくらい・・・。
でも、「よっし!」と小さく呟いた。
――初めてだよな・・・一緒に出掛けるの・・・
小さい頃はあったけど、中々出掛けるタイミングもなけりゃ、もうその頃には・・・・・
急に顔が熱くなった。
いやっ、兄なんだから・・普通に・・普通にしよう。
でも通行人は俺らが兄妹とか知らないんだよな・・・そう思うと口元がにやけた。
映画見終わったら、食事でも誘うか・・・これは普通だよな?
――なんか何が普通か分からなくなってきた。全部が全部イケない事みたいな・・・。
トイレであれこれ考えてると、コンコンとノックをした父が話しかけた。
父「おい?誰か入ってるのか?」
その言葉にビクッとして慌てて出た。
雅「ごめっ――父ちゃん!」
父「なんだっお前か・・」
代わって父はトイレに入った。
洗面所にはすでに『妹』はいなかった。
母に聞くともう学校に行ったとのこと。
母「雅紀も早く行きなさい!!」
雅「はーい・・・・あっ!母ちゃん!」
立ち去る母に声を掛けて振り返った母。
母「なーに?」
雅「今日さ・・・帰るの遅くなるねっ!」
母「あら?いつものことじゃない?」
――あ・・そうか・・いつもは残業とか・・・でも今日は―――。
雅「ううんっ残業とかじゃないんだっ」
母「・・・そうなの?」
雅「・・・・『妹』と出かける」そう勇気を出して言うと母は顔を変えずに言った。
母「――そう?なるべく早く帰ってくるのよ?…悪い所には出歩かない様にっ」
そう言われちょっと心がほっとした。
雅「ははっだいじょぶだよ!…映画を見るだけだから!」
母「そうねっ」
雅「あっ、食事は食べてから帰るからっ」
母「うんわかったっ…気をつけて行って来てねっ」
雅「―――うんっ」
そう言い、俺は玄関を開け外に出た。
―――はぁーー、妙に緊張した。
まぁ考えてみたら、普通に言えばよかったんだもん。そんな気張らなくても別に変に考えることなかったな・・・・
心に余裕ができて、心に隙間が生まれた。
―――俺の考えすぎだった。
『妹』と出かけることで頭が一杯になってたけど、普通は『妹』と出かけるなんて普通だよな。
もう、頭の中がイケない事だらけで・・・何か言うと母ちゃんは疑うんじゃないか・・・
話すだけでダメなんじゃないか・・・そればっかり。。
―――よしっ!!と両手でほっぺを叩いた。
ちょっと落ち着いて来たから今日一日普通に過ごせるかな?
『妹』に毎日変な感情に囚われすぎだったんだ。
『妹』は『妹』なんだ、何も変わんない。だから、俺も何も変わる必要がない。
普通にしとけば何も疑うこともない。
遅いけど、やっとわかった気がした。
俺の心が前と比べて楽になったと紛れもなくそう思い始めた。。。
『好き』っていう思いは変わらずその上に『安心』が加わったことで俺の中で『妹』に対する思いが
『独りよがりの恋』というより『普通の愛情』として変わった気がした―――――。。。