池袋 こまち整体院(その15)
ここ数年、徐々に収入が落ちている。
今は昔の一番良かった時より、3割以上年収がダウンした。
外国で起きたリーマンショックなどの影響は、私の収入にも相当響いている。
何件か倒産してしまったり、債務超過に陥って支払能力を喪失した取引先もある。
忙しさは相変わらずだが、単価が昔より低くなっているのだから仕方が無い。
今はデフレの時代なのだ。
色々と話を聞くと、まだ私はマシな方かもしれないと思う。
エステ馬鹿の私は相変わらず湯水を使うごとくエステにお金をつぎ込んでいるが、一番行っていた時期よりは少し減っている気もする。
良い店が減ってきているということもあるが、やはり収入ダウンの影響が無いとは言えない。
昔からエステ以外は質素にしていたが、最近は更に倹約していると思う。
2万円くらいエステで使っても、晩御飯は吉野家で済ませたりしている。
服も新しいものをあまり補充していない。
私は典型的なエステ貧乏なのだと思う。
エステに行く為に働いているようなものだ。
傍から見たら経済観念の欠落した、救いようのない大馬鹿者だ。
私の子供はまだ小さいので、学費もかからないのが、せめてもの救いだ。
将来、私立学校や大学に通うようになった時、私のエステ通いは大きな影響が出ると思う。
人間失格者の私は、いつものスーツで仕事に出かけ、その合間にエステに行くことにした。
月が替って、少し時間に余裕があった。
出かける時は判らなかったが、穴のあいた靴下を穿いていることに気づいた私は、安い靴下を買って穿き替えた。
倹約も度が過ぎている。
流石にこれでエステに行くのは恥ずかしかった。
最近は新規開拓や脱毛エステに行ったりしてばかりいたので、馴染みの店巡りを再開することにした。
久々にちゃんとしたマッサージを受けたかったのだ。
池袋のこまち整体院に電話すると、すぐに入れるということだった。
ソファーに座ってお茶を飲んでいたら、ちょうどお客が帰るところだった。
施術ベットに案内されて、足湯サービスが復活していることを知った。
六本木時代に戻ったようだった。
足を洗ってもらっている時、足の指先に多数の毛玉が挟まっていることに気がついたが、もう遅い。
洗面器に浮いている毛玉もあった。
「安い靴下は毛玉が多いね。」
と私は担当の小梅ちゃんに、そう話した。
彼女は私が恥ずかしそうにしているのを見て、笑っていた。
やはり施術は抜群に良かった。
特にオイルの力加減は絶品で、渾身の施術だったと思う。
後半のうつ伏せリンパに思わずお尻が浮いた。
流石は名店中の名店だ。
大馬鹿エステ野郎は彼女の技術に唸った。
「横向きになって下さい。」
と言われて、横向きになると、ありのと渡りに圧をかけるリンパが始まった。
これは昔六本木でも危険すぎるということで、封印した技だ。
仰向けにされて、彼女の指が暴れるので、紙パンツはもう滅茶滅茶になっていた。
私は更に延長してしまった。
もうどうでもなれという気持ちだった。
抜きなし回春で満足させてくれる店は、今はもう貴重になった。
指の先まで神経のいき渡った、会心の施術だったと思う。
帰りがけに見た、桃ちゃんの顔が眩しかった。
指名すれば、もう施術も可能らしい。
安物の靴下を穿きなおして私は帰路についた。
電車の中で、股間がジンジンとしている。
財布は軽くなったが、幸せな気分は存分に味わえた。
エステ馬鹿の至福の時だった。