イヤ〜、実に久し振りにウィリアム・ワイラー監督の本格的西部劇を見た。放映してくれたNHK BSには感謝しているが「The Big Country 」と言う原題を「大いなる西部」に置き換えた当時の配給元はやっぱり見事だ。今ならほぼ100%「ビッグ・カントリー」としているだろう。公開されたのは1958年、もう60年以上が経過している訳でもはや幾ら映画ファンとは言っても監督、配役陣を知っている人は後期高齢者に限られるんじゃなかろうか?

 

見初めて気が付いたがタイトルロールが始まると同時にグレゴリー・ペックの名前が出て来る。てっきりチャールトン・ヘストンと併記されていたと思ったのだが「ベン・ハー」はこの映画の一年後に制作されているしプロデューサーにグレゴリー・ペックの名前があったのでこのファーストビルは当然の扱いだったんだろう。要するに監督のウィリアム・ワイラーはこの映画でチャールトン・ヘストンを自身が撮ることになる次作に抜てきしたのかも知れない。

 

 

それにしても骨太の西部劇で画面からも男二人の熾烈な西部魂、男臭さが漂って来る。冒頭、駅馬車で西部の町へやって来たマッケイ(G・ペック)は牧童頭のリーチ(C・ヘストン)の出迎いを受ける。長年外洋船の船長だったマッケイは大牧場主テリルの一人娘パット(キャロル・ベイカー)と結婚する為に遥々やって来たのだが父親のテリルは古くから同じ大牧場を経営するヘネシーとその一家と対立していて今や一発触発の状態が続いている。

 

そんな背景で物語が始まるのだがこの両家の対立を軸に今度はマッケイとリーチの対立、更にはパットと親友の学校教師、ジュリー(ジーン・シモンズ)の対立があって登場人物夫々の思い入れが錯綜すると言うお話だった。以前見た時には全く感じなかったのだが今回見たジーン・シモンズ、、セリフや言い回しそれに声から発音までオードリー・ヘップバーンに余りにも似ているのでビックリした。ジーン・シモンズはイギリス出身の女優さんで一時はスチュワート・グレンジャーと結婚していた時期もあったのだが2010年に80歳で亡くなっている。「エルマー・ガントリー」とか「スパルタカス」が一番印象深い出演作だが知的で“黒っぽい(髪の色)雰囲気“はその昔、このジイさんの胸をときめかしたものだ。普段はオレが集中している映画には目もくれない奥さんが外出から帰り一瞬見ただけで「あら、若いジーン・シモンズ好きだったのよ、、」っと来た。

 

映画はテリル家のアホな一人息子、バック(チャック・コナーズ)の極悪非道振りに剛を煮やした父ちゃんだが土地の買収案が元でバックとマッケイが決闘する羽目になり腰抜けで甲斐性のない我が子を射殺すると言う思いがけない展開になる。あくまで正義の味方はマッケイで終盤はパットかジュリーかどっちと結ばれるのか最後までヤキモキさせる。

 

久し振りに見たのだがこの時代に作られた映画はやはりプロットが素晴らしい、、何と言っても背景になる雄大な荒野、練られた脚本、そして魅力満点で個性のある俳優陣にカメラワークと音響効果、、そんな事が翌年制作された「ベン・ハー」に受け繋がれているんだろう。


それにしても3時間近い大作を世に送り出した翌年に再度4時間越えの一代叙事詩を制作し軒並みアカデミー賞を受賞しているって事には心底驚かされる。