実はここ10日あまりの間、

ずっと喪失感が消えずにいる。

 

 

 

今月10日、歯を1本抜かれた。

 

永久歯を失うのは、今回が初めてだった。

 

 

 

話は今月3日に遡る。

 

数か月ぶりの定期健診だった。

 

どこか気になる歯はあるか、と問われた。

 

奥歯の1本がなんとなく違和感がある、と告げた。

 

とくに痛いわけでもないが、

歯茎周辺の軽い炎症程度かと思った。

 

レントゲン撮影をされる。

 

その結果、伝えた歯ではなく、奥から2本目の歯の状態を指摘された。

 

その歯は相当前から削りに削って低いうえ、

嚙む力が強いらしく2つに割れてしまっている歯だった。

 

その上にかぶせ物をしている。

 

ただ、痛いとか、しみるとかの症状はまったくなかった。

 

 

 

かぶせ物がとられ、

歯の根の治療をすると言って、いろいろ施された。

 

状態はかなり悪いから、と

インプラントを勧められた。

 

決心がついたら歯を抜きます、

のようなことまで言われた。

 

 

 

その治療以降、いっきにその歯に鈍痛が生じた。

 

もらった痛み止めの薬を何錠も飲んだ。

 

 

 

そして、翌週の10日。

 

インプラントの決心はつかない、と最初に医師に告げた。

 

しかし、歯の鈍痛は続いている。

 

炎症を起こしているから、抜かなければだめだ、

のようなことを言われた。

 

「No!」

と、きっぱりと言えばよかった。

 

けっきょく、流れのままになんとなく、

そのまま抜かれてしまった。

 

 

 

話の顛末はそんなところだ。

 

 

 

抜歯から1週間後の今月16日、歯科クリニックにまた出向いた。

 

「喪失感が強くて、精神的にちょっとショックで」

と正直に告げた。

 

抜かなくてもよかった歯ではなかったか、

と珍しく後悔の念もある。

 

医師は、相当に悪い状態の歯だったから抜くのが妥当だったとの見解を示した。

 

これからのことはゆっくり考えろ、とも言う。

 

でも、インプラントがお勧めだ、とやはりしつこい。

 

 

 

歯科医の知人が二人いるので、

インプラントについて尋ねてみた。

 

また、友人、知人関係で何人かに歯について訊いてみた。

 

「すぐに歯を抜きたがる歯医者はダメだ」

とは昔から耳にする。

 

本当に酷い状態の歯だったと考えたいが、

どうしても吹っ切れないものがある。

 

 

 

いまだ今回の件を思い起こすたびに、

心はざわつき、自責の念に駆られる。

 

何の症状も感じられなかった歯を突然失った喪失感。

 

抜かなくてもよかったのではないか、という思い。

 

 

 

今回は歯の話ではあるが、

人生の残りが少なくなってきた中で、

これから確実に喪失感というものに襲われる機会が増えてくるのだろう。

 

時同じくして、長く親しんだ店が閉店になったのも同様である。

 

考えたくはないが、

家族や大切な人たちとの別れも、いつかは訪れる。

 

 

 

自らを慰めるかのようではあるが、

日々の時間を大切に噛みしめるように生きようと

あらためて思ったりもしている。

 

 

 

ただし、強く噛みしめ過ぎると割れてしまう。

 

歯も心も、きっと同じだろう。

 

 

 

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「決心がつきましたら」

 

今はそんな気分ではない。