昨日はシゴトが休みだった。
天気が良く、部屋に籠るのももったいないので、出かけることにした。
設定した目的は、以前クルマから見て気になった店に行くことと決めた。
京成佐倉駅で下車する。
めざす店は印西市にあり、クルマでないと不便な場所だ。
近くを通るバスの時刻はあらかじめ調べておいた。
バスの出発時刻まで時間があったので、少しだけ佐倉の街を歩いた。
日曜日の朝10時半前、とても静かだった。
駅前の道をまっすぐ進み、佐倉市立美術館に入ってみた。
入館料は無料。
「佐倉・房総ゆかりの作品」というテーマで展示された絵画や器などの芸術品を鑑賞した。
広島・長崎平和の鐘の作者でもある人間国宝・香取正彦さん作の鐘。
「よかったら鳴らしてみてください」と近くにいた監視係の方に言われたので、置いてあった白い手袋をはめて鳴らしてみた。
閑散とした館内に、美しい音が響きわたった。
帰り道、佐倉市観光協会に立ち寄ってみた。
地図をもらう。
「それでことがたりますかね?」
と、聞かれた。
「充分です」
と返答し、礼を言って外に出た。
国立歴史民俗博物館以外は、佐倉の街でまともに観光したことはなかった。
今度はゆっくり歩いてみたいと思った。
京成佐倉駅北口へ行く。
こちら側の駅前は店なども見えず、より一層静かだった。
11時23分発のなのはな交通バスに乗車する。
乗客は他に女性1名のみ。
運賃300円は先払いでICカードは使えず、現金のみだった。
窓の外はすっかり秋色をした木々が続き、青空とのコントラストがきれいだった。
乗降客がないままにバスはひた走る。
15分あまりして、印旛郵便局バス停で下車した。
この辺りの住所は印西市瀬戸。
めざす店は、こちらの「にしみや」である。
佇まいをクルマから目撃して以来、いつか訪れたいと思っていたのだ。
正午前だというのに、店内は賑わっていた。
店のご主人なのか、わりと年配の男性が愛想良く迎えてくれた。
地元の人たちとわかるグループが先客でおり、すでに居酒屋状態となっている。
昼呑みにふさわしい状況はすでに整っており、こちらとしてもありがたい。
カウンターの隅の席に座る。
まずは瓶ビールから。
栓抜きがなかなかみつからない、というのもほほえましい。
もつの煮込み。
厨房内にいるお二人は息子さんご夫婦だろうか、などと想像する。
あつあげ納豆。
どれも酒の肴として美味しい。
タルハイの大をいただき、牛タン入りつくねを食す。
2杯めのタルハイ大には、モンゴイカ魚卵。
店内が落ち着いてくると、
「お住まいはお近くなんですか?」
などと厨房から声をかけられた。
前々から気になっていたので成田から来た、と真実を告げた。
1時間20分ほど、心地良く昼呑みを堪能できた。
店を出る。
スマホで調べた帰りのバスの出発まではまだ時間があり過ぎる。
そこで、すぐ近くにあり、こちらも外観からかなり気になっていた店に行ってみた。
喫茶「コッペ」。
一軒家のお店だ。
ここも中年の女性店主らしき方に笑顔で迎えてもらえた。
ランチをとっている年配夫婦など先客が何組かいた。
店内はレトロな雰囲気。
シフォンケーキとコーヒーを注文し、味わった。
美味しい。
落ち着いた雰囲気もいい。
満足して店を出る。
店の隣りは印旛中央公園。
少し歩いてみた。
イノシシが出るような山中ではないが、出てもおかしくはないような環境か。
帰りは酒々井へ行くバスに乗るつもりだったが、バス停がいくつもあるので探す。
ここではない。
ここでもない。
ここだった。
13時57分発のちばレインボーバスは2分ほど遅れてやって来た。
このバスはICカードが使えた。
数名の乗客がいた。
10分ちょっとで京成酒々井駅に着いた。
ホームへと走るも、あと20秒早ければ乗れた電車は、非情にも扉が閉まって動き出していた。
急ぐ必要もないので、ベンチに座って待つことにする。
それから実に20分以上が経ち、14時35分発の電車に乗車する。
京成成田駅へは10分とかからない距離だ。
近場ではあるけれど、ずいぶんと遠くを旅してきたかのような気分だった。
秋の近場旅。
とても良い時間を過ごせた。