こんばんは。

ご覧頂きありがとうございます😊

 

本日も想像力と発掘良品の発掘⑰というテーマで

 

桜桃の味(1997)

(原題:TA'M E GULIASS)

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

 

★発掘良品の発掘とは?

発掘良品とは、惜しまれながらも2022年3月に終了を迎えた、TSUTAYAさんによる新作・旧作、有名・無名、公開・未公開ではなく「面白い」を基準に作品をセレクトし、毎月紹介してくれている映画ファンたのための素晴らしいシリーズ。

本シリーズは、そんな発掘良品の全作品を5~6年かけてご紹介させて頂こうという超長期目標のシリーズとなっております😄

 

 

 

命の軽重に関する物語

 

TSUTAYAさんの発掘良品シリーズの第86~87弾、第89~101弾までの全29作品を紹介してゆく本シリーズも本日でラスト!

 

本シリーズは誰かに紹介してもらわないと知る事がないような作品が多く、玄人向けのラインナップとなりましたがいかがでしたでしょうか?
 

ラストは、イラン人が自国で暮らしているクルド人、アフガニスタン人、トルコ人と問答をする、少し不思議な命の軽重に関する物語なのです…

 

本作は劇中の殆どのシーンが

2人の男性が車内で会話をしている

一幕劇のような作品なのです!

 

 

 

アバウトなストーリー 

 

「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。

 

人生に絶望し自殺を決意した男が、ひとりの老人に出逢い、世界の美しさを教えられるというシンプルな物語を、繊細かつ大胆な演出で描き出す一編。

監督・製作・脚本・編集は「そして人生は続く」「オリーブの林を抜けて」のアッバス・キアロスタミ。撮影はホマユン・パイヴァール。

録音はジャハンギール・ミシェカリ。出演はホマユン・エルシャディ、アブドルホセイン・バゲリほか。97年カンヌ映画祭で今村昌平監督の「うなぎ」と共にパルムドールを受賞。

98年キネマ旬報ベスト・テン第6位。

 

 

んんん。
 
ひとりの老人に出逢い、世界の美しさを教えられる??
 
 
恐らくですがこれは「本作の解説」ではなく「この作品を観た筆者の感想」。
 
本作は、ご覧になられた観客の人生経験によって、観終わった後の感想が異なる"心の中を映す鏡"のような作品ですので、このような感想になる場合もある作品と考えて頂ければ嬉しいです😊
 
 
 
本作の主人公のバディは、人生に疲れ自殺を考えていた男。
 
彼は自殺した後、人知れず自分の死体を埋葬してしまいたいと考え、手伝ってくれる人を探す事にしました。
 
 
 
バディの考えたプランとは
 
①荒野に穴を掘っておく
 
②夜中に睡眠薬を飲んだバディが穴で横たわって自殺を試みる
 
③翌朝、予め頼んでおいた人にバディが入った穴を覗きに来てもらい、名前を呼び掛けても返事が無ければ、スコップを使って埋めてもらう
 
④穴を埋めてくれた人には、お礼として高額の報酬を用意しておく
 
というもの。
 
 
 
このプランだと協力者は自殺ほう助ではなく、死体の上に土をまくという作業をするだけなので、協力してくれる人はいくらでもいるだろうと考えたのです。
 
ただし、バディと同じイラク人はの作業には不適格!!
 
 
土地勘があり、誰かに喋ってしまう可能性があるイラン国民は信用できないと考えたバディは、荒野でお金に困っていそうな出稼ぎ労働者たちに声をかけ、死体処理の仕事を依頼する事にしたのです。
 
「なぁ仕事ないか?何でもやるよ!」
(…こいつらには任せられん汗
 
(こんな所で働いてるのは金に困ってる人だから
 きっと俺の依頼を受けてくれるぞ)
 
 
そんなバディが声をかけたのは、イランの少数民族であるクルド人の兵士と、アフガニスタンから宗教を学ぶためにイランにやって来た学生。
 
クルド人と言えば勇猛果敢な民族として有名を馳せていますし、宗教家なら使者を埋葬をする事に一定の理解を示してくれるのではと考えたバディでしたが、彼らから「いくら高額をもらおうとそんな仕事はできない」と断られてしまったバディは、仕方なく人の良さそうなトルコ人の老人に、仕事を依頼する事にしたのです。
 
「徴兵の軍生活は苦しいだろ。お金は弾むぞ」
「結構です、車を降ろしてください汗
 
「宗教家なら死者を埋葬してくれないか?」
「いや。神は自殺を禁じていますよ…」
 

「自分の死体の埋葬?あんた変な人だな」
 
 
 
さて、果たしてバディと3人の車でのやり取りは、一体どのようなものだったのでしょうか?
 
それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。
 
既に荒れ地に穴は掘ってある!
後は、死んでいる自分に土をかけるだけだ。
皆さんはバディの依頼を受けますか?
 
 

 

【私の感想】 リアルではない死の願望

 

皆様がご覧になる楽しみを奪わないよう、これ以上詳細を書く事は差し控えさせて頂きますが、前述した通り本作は観客の人生経験によって観終わった後の感想が異なる"心の中を映す鏡"のような作品

 

ですので恐らく、まだ人生で悩んだ事がない人や、知人や肉親の死に接した事がない人と、生きているのが嫌なるくらいの絶望や、自分の死について考えていた人とでは、観終わった後の感想が異なるのが当たり前であり、それこそが本作の魅力であり、パルムドールを受賞を受賞した理由ではないか思います。

 

 

 

そう。

 

人生とは、命の在り方についての俯瞰した視点が自分なりの意味や価値を感じる事ができないもの。

 

 

 

バディが絶望しているにも彼なりの理由があると思いますが、バディが出会ったクルド人にも、アフガニスタン人にも、そしてトルコ人にも生死観があり、死を決意したバディは、彼ら3人と出会った事で、死に対して俯瞰したものの見えができるるようになり、その結果、自分の命の選択肢を増やしていたのです…

 

荒野で脱輪したバディ。

この状態だと、彼の人生観のような

絶望的な状況ですが…

 

困っているバディを見た人々が

助けに来てくれただけで

人生観は変わるのではないでしょうか?

 

 

 

私見ですがそんな本作は、人生に絶望し自殺を決意した男が、ひとりの老人に出逢い、世界の美しさを教えられるというシンプルな物語を、繊細かつ大胆な演出で描き出す映画であると同時に人生の節目で何度か見返して頂き、自分の人生観の変遷に想いを馳せる事ができるようになる作品ではないかと思うのですが、皆様はどう思われるでしょうか?

 

見ず知らずの人々に助けられた!

そんな人生経験によって

人間の生死観は変化してゆくものなのです😉

 

 

 

 

という訳で、本シリーズはこれにて終了。

長い間お付き合い頂き、本当にありがとうございました😊
 

来月は、本ブログの1年間を振り返るアーカイブをお送りしたいと思いますので どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆

 

★おまけ★

併せて観たい人生観が変わる(かもしれない)作品!
「NINIFUNI

NINIFUNIとは
仏教用語の而二不二(ににふに)

という言葉。

人生とは表裏一体のものであり
楽しい事だけでも

悲しい事だけでもないという
而二不二の二つの側面を
一つの海岸で同時に起こっている

二つの出来事を通して
淡々と描いていきます。

6人だった頃のももクロの出演。
彼女たちの人生もきっと

而二不二なのだと思います。