こんばんは。

ご覧頂きありがとうございます😊

 

本日も想像力と発掘良品の発掘⑰というテーマで

 

イカリエ-XB1(1963)

(原題:IKARIE XB 1)

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

 

★発掘良品の発掘とは?

発掘良品とは、惜しまれながらも2022年3月に終了を迎えた、TSUTAYAさんによる新作・旧作、有名・無名、公開・未公開ではなく「面白い」を基準に作品をセレクトし、毎月紹介してくれている映画ファンたのための素晴らしいシリーズ。

本シリーズは、そんな発掘良品の全作品を5~6年かけてご紹介させて頂こうという超長期目標のシリーズとなっております😄

 

 

 

今は亡き国で作られた美しい童話

 

本作は1965年に公開されたチェコスロヴァキア 映画。

 

チェコスロバキアとは、1993年にチェコ共和国とスロバキア共和国に分離してしまい現在は存在しない国。

 

今は亡きチェコスロバキアの国旗。

 

 

けれど国が亡くなってしまっても、その国で生まれた文化は時代を超えて存続し続けます。

 

 

TSUTAYA発掘良品では、本作と第64弾の「闇のバイブル 聖少女の詩」という2作のチェコスロバキア作品がセレクトされているのですが、1995年にチェコスロバキアが無くなって27年の月日が経過した現在においては、どちらの作品も「今は亡き国で作られた美しい童話」のような存在となっているのです😘

 

チェコスロバキアの文化が綴れたファンタジー

「闇のバイブル 聖少女の詩」!

 

チェコスロバキアの人々の思い描いていた

未来が描かれた「イカリエ-XB1」。

 

 

 

アバウトなストーリー 

 

「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。

 

1963年.共産主義下のチェコスロヴァキアでつくられた本格的SF作品。

密室の中で徐々に狂気に汚染されていく宇宙船の乗組員たちのサスペンスフルな人間ドラマと、近未来のユートピア的世界を独創的なスタイルで映し出す。

スタニスワフ・レムの小説『マゼラン星雲』にインスピレーションを受け脚本を執筆したのは、特撮映像作品を多く手がけるインドゥジヒ・ポラークと「狂気のクロニクル」のパヴェル・ユラーチェク。

衣装を「ひなぎく」の脚色を担当したエステル・クルンバホヴァー、音楽を「悪魔の発明」のズデニェク・リシュカ、監督をインドゥジヒ・ポラークが務める。

 

 

はい。
 
本作は、共産主義下のチェコスロヴァキアで作られたSF映画!
 
 
共産主義政権の国の多くは、共産党当局が認可する国威高揚に寄与するような作品しか上映許可が下りない場合が多いのですが、1963年に公開された本作や、1969年公開の「闇のバイブル 聖少女の詩」、1966年公開の「ひなぎく」などの作品が、かなり自由な表現が許されているのは興味深いところです!
 
「ひなぎく」は60年代を代表する
アヴァンギャルドな作品です!
(こちらもチェコスロバキア遺産ですね)
 
 
そんな本作は、未知の生命体を探すために宇宙の彼方にあるアルファ・ケンタウリ系へと向かう宇宙船イカリエ-XB 1号に搭乗した人類代表の40人を描いた作品!!
 
イカリエ-XB 1号は光速を超える航法でアルファ・ケンタリウスへと向かうため、地球で15年の間に2歳しか年を取る事ができず、地球に残った家族と13年の年齢差が生まれてしまう事を覚悟の上で乗船していたのです!
 
地球に残った妻とは13歳差!
これから生まれる娘に会う時は15歳です!!
 
 
そんな崇高な使命感を持っていたイカリエ-XB 1の乗組員たちですが、4カ月も宇宙船の中に閉じ込められていると、次第に拘禁反応が現れるようになってしまいます…
 
当初人でいっぱいだったスポーツジムも…
 
気がつけば、人もまばら…
 
 
 
という事は、乗組員たちはストレスでお互いを攻撃し合うようになるの?
 
 
 
いいえ。
 
これはいけないと思った乗組員たちはダンスパーティを開催し、閉塞した環境の中でも楽しい時間を過ごせるよう、力を合わせていくのです😉
 
みんなで楽しい時間を作りましょう!
パーティにようこそロボットのパトリックくん!
 
 
 
うん。
 
なんかホッコリするストーリーですね!
 
 
 
けれどダンスパーティの最中、イカリエ-XB 1号の遥か前方に謎のUFOが浮遊しているのを発見!!
 
人類初の宇宙人との接近遭遇にどよめき立つ乗組員でしたが、近づいてみるとそれは200年前の地球人が作ったUFOであり、中の人間たちは、酸素が足りなくなった事で争い、仲間を窒息死させて生き延びようとした最後の二人は、お互いに殺し合って死亡していたのです…
 
ちなみにイカリエ-XB 1は22世紀の最新型!
 
そんな彼らが発見したのは
1980年代に作られた人類のUFO!
 
UFOの中には窒息死した人間の死体。
真空なので腐らず200年前の姿の死体です…
 
…みんなで困難を乗り越えようとしている22世紀の人たちに比べ、私たちの世代は人間同士殺し合ってますね汗
 
 
 
さて、宇宙の果てで人類の暗黒面を垣間見てしまったイカリエ-XB 1号乗組員たちは、果たして無事にアルファ・ケンタリウスに辿り着く事ができたのでしょうか?
 
それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。
 
死体の首のドッグタグの刻印は1987年!
20世紀の人類は宇宙に行っても殺し合っていた…
では我々はどうなのだ??
 
 

 

【私の感想】 世代の壁と人類の進歩

 

皆様がご覧になる楽しみを奪わないよう、これ以上詳細を書く事は差し控えさせて頂きますが、本作は共産主義政権の国だったチェコスロバキアの世代を1980年代のUFOの乗組員に投影し、西側への憎悪を抱き人類同士で殺しあいを望んでいる世代を終わらせ、人種や性格を越えてお互いに分かり合おうとするイカリエ-XB 1号の乗組員のようにならないかと、観客に問いかけているような哲学的な作品!

 

 

新しい知的生命体を探すために年齢の壁を越えてイカリエ-XB 1号に乗船した乗組員たちは、人間同士が争う事になんの価値を感じない、冷戦マインドを越えた世代であり、そんな彼らだからこそ、映画のラストは希望に満ちたものとなっているのです。

 

 

 

そう。

 

人類はお互いに争い合っている間は、幸福になれる事はありません。

 

 

 

そんな本作は、スタンリー・キューブリック監督によって換骨奪胎され「2001年宇宙の旅」で再び、殺し合う人類の壁を超越し、イカリエ-XB 1号の乗組員のようになれるのかを観客に問いているように思えます…

 

1968年の「2001年宇宙の旅」の宇宙服は…

 

1963年公開の本作の宇宙服に似ていますし

宇宙船の中でマラソンをするのも

本作のスポーツジムに通じる気がします…

 

 

 

私見ですがそんな本作は、密室の中で徐々に狂気に汚染されていく宇宙船の乗組員たちのサスペンスフルな人間ドラマと、近未来のユートピア的世界を独創的なスタイルで映し出した映画であると同時に2022年の私たちはイカリエ-XB 1号の乗組員のような理性と抑制力を持った人類なのか、それとも人間同士で憎しみ合って死滅した1980年代の人類の残滓なのかを観客自身が考える作品という観点からも観る価値のある作品ではないかと思うのですが、皆様はどう思われるでしょうか?

 

映画のラストには宇宙に赤ん坊!

 


あれれ?

これも「2001年宇宙の旅」のラストと

似ているような気が…

 

本作の日本公開は2018年ですので

2つの作品の類似点について考察するのは

これからなのではないかと思います😉

 

 

 

 

 

という訳で次回は、いよいよ本シリーズの最終回!

 

مترجم عربي

 

というテーマで

 

桜桃の味

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘

 

 

 

ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆

 

★おまけ★

併せて観たい発掘良品のチェコスロバキア作品!
「闇のバイブル 聖少女の詩

 

少女の夢を映像化したような本作は

、今は亡きチェコスロバキアの

映しい風景や、習慣や風俗、

そして美しい女の子たちが

映像として今も息づいています。

 

共産主義政権だった

チェコスロバキアでは、

本作のような創造力を

豊かにするような作品は

共産党当局によって

禁止されてしまいますが、

監督のヤロミール・イレシュ氏は

本作の撮影を強行して

作り上げたのでした!