こんばんは。

ご覧頂きありがとうございます😊

 

本日も想像力と発掘良品の発掘⑰というテーマで

 

ガッジョ・ディーロ(1997)

(原題:GADJO DILO)

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

 

★発掘良品の発掘とは?

発掘良品とは、惜しまれながらも2022年3月に終了を迎えた、TSUTAYAさんによる新作・旧作、有名・無名、公開・未公開ではなく「面白い」を基準に作品をセレクトし、毎月紹介してくれている映画ファンたのための素晴らしいシリーズ。

本シリーズは、そんな発掘良品の全作品を5~6年かけてご紹介させて頂こうという超長期目標のシリーズとなっております😄

 

 

 

 

ガッショ・ディーロって何語??

 

本作は1997年に公開されたフランスとルーマニアの合作映画。

 

原題の「GADJO DILO」というのは、英語でもフランス語でもありませんが、ルーマニア語でないようです。

 

 

では何語なの??

 

 

 

はい。

 

「GADJO DILO」は、かつてはジプシーと呼ばれていたロマ民族の言語!!

 

 

 

本作は、フランス人青年のステファンが体験した「不思議の国のアリス」のようなルーマニア辺境にあるロマ民族集落の滞在記なのです😆

 

出演者はステファン以外全員のロマ民族!

本作は「不思議の国のステファン」なのです😘

 

 

 

アバウトなストーリー 

 

「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。

 

フランスからやってきた青年とロマ(ジプシー)の村人たちとの心の交流を描いた一編。

監督・脚本・音楽は「モンド」のトニー・ガトリフで、ロム系の血を引くという彼は、『Les Prices』『Lacho Drom』(日本未公開)に続き、この作品で流浪の氏3部作を完成させた。

製作総指揮はガイ・マリグナネ。撮影はエリック・ギシャール。

美術はブリジット・ブラッサール。編集はモニーク・ダルトーネ。録音はニコラス・ネイジェルソン。

出演は「ドーベルマン」のロマン・デュリス、新人、ローナ・ハートナー(97年モントリオール世界映画祭主演女優賞受賞)ほか。

実際にロマの楽士であるイシドール・サーバンはじめ、ロマの村人たちが出演。97年ロカルノ国際映画祭銀豹賞、主演女優賞など計5部門受賞作品。

 

 

はい。

 

本作は、ステファンを演じたロマン・デュリス以外の登場人物は全員が実名で出演しているリアル・ロマ民族の世界が描かれている作品!!

 

ステファン以外は全員実名!!

 

 

主人公のステファンは、亡くなった父親が、死の直前まで聴いていたカセットテープに録音されていたノラ・ルカというミュージシャンを探しにロマ民族の集落に向っていた青年!

 

 

と言っても、ステファンはノラ・ルカの居場所を知りませんし、そもそもロマ語も話せませんので、なんとかロマ民族の集落に辿り着いた時は、遭難寸前の状況となっていました…

 

ここ…どこ…?

 

 

そんなステファンを暖かく迎え入れてくれたのは、イシドールという名の老人。

 

酒を浴びるように飲み、笑ったり怒鳴ったり泣いたり、歌ったり踊ったりと感情の起伏が激しいイシドールは、他の村人たちがステファンを警戒している中、何の確証もないのに「彼はいい奴だ!」と言い切ってステファンを自分の家に住まわせ、村人たちとの仲を取り持ってくれたのです😊

 

夜中に集落に着いて途方に暮れていた

ステファンに親し気に声をかけ

ウォッカを差し出していれたイシドール!

出会って一秒で友人です😊

 

 

 

…なんかほっこりする展開ですね!

 

ですが、ほとんどフランス語を理解できないイシドールは、ノラ・カルを探しに来たというステファンの目的を全く理解せず、自分なりのロマ民族案内を始め、次第にステファンもロマ民族のような暮らしをするようになってゆくのです!

 

「ステファン、飲むのじゃー!」

「いや、二日酔いで~あせる

「ステファンは良い奴だから飲むぞー!」

イシドールのおかけで村人と仲良しに!

 

ですがノラ・カルの話を聞こうとすると

イシドールはよくわからない行動を始めます!

「楽器と言えばワシもスゴイぞ~!」

「……いや、そうじゃなくて汗

 

 

 

さて、イシドールと同居しながらステファンが見たロマ民族の生活とは、一体どんなものだったのでしょう?

 

それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。

 

新婦の前にお札が乱舞!

これがロマ民族の結婚式なの!?

不思議の国へようこそ😄

 

 

 

【私の感想】 記録と記憶のちがいとは

 

皆様がご覧になる楽しみを奪わないよう、これ以上詳細を書く事は差し控えさせて頂きますが、本作は、記録と記憶と意味の違いを考えさせられるような作品。

 

当初、ノラ・カルを探す目的でロマ民族の元を訪れたステファンでしたが、彼らと暮らす日々の中で、自分が出会ったロマ民族の記録も残しておきたいと考え、ロマ語の単語帳を作ったり、自分が出会ったロマ民族の音楽をテープに残そうとします。

 

 

うん。

 

自分のために、そして後世の人のために記録を残そうと考えるのは、とても素晴らしい事ですよね!

 

 

 

ですが、そうやって記録として残されたものは、自分が体験した記憶とは似て非なるものとなってしまう可能性があるのです…

 

 

 

そう。

 

ロマ民族の人生とは、歌い、踊り、喜び、泣き、そして死んでゆく、言葉や文字で記録を残さないもの!

 

 

 

言葉や文字として記録されたものには、そのもの自身が持っている天衣無縫の魅力(言葉では言い表せない純真で無邪気さ)が失われてしまうかもしれないのです…

 

イシドールはノラ・カルの行方を聞くために

知り合いのミュージシャンに会いに行き

亡くなった事を知って泣き崩れます。

 

友人の墓の前でアコーディオンの音に合わせ

天衣無縫のダンスを踊るイシドール。

 

ですが、そんな想いを知らなければ

イシドールの踊りは滑稽なダンスにしか

見えないと思います。

 

 

 

私見ですがそんな本作は、ステファンの視点で描かれたロマ民族の不思議な習慣を描いた作品であると同時にロマ民族

記録を残そうと試みるステファンという男が、彼らとの生活で何を悟ったのかを観客自身が考える、記録と記憶のちがいを描いた作品としても鑑賞できるのではないかと思うのですが、皆様はどう思われるでしょうか?

 

ロマの歌を記録しようとして

マイクを向けるステファンですが

そうやって残したものに

どんな記憶が宿るのでしょうか…

 

もし、この感覚が

お分かり頂けないようであれば

日本にやって来た外国人が

自分の記録の為に、

日本に伝わる民謡を歌わせ

それを録画しているシーンを

想像して頂ければと思います。

 

記録とは記憶とは異なるものであり

相容れないものでもあるのです…

 

 

 

 

 

という訳で次回は

 

世界終了まであと何秒?

 

というテーマで

 

マチネー

土曜の午後はキッスで始まる

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘

 

 

 

ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆

 

★おまけ★

併せて観たい発掘良品のロマ民族作品!
「ジプシーのとき」

本作は発掘良品第32弾にセレクトた

「アンダーグラウンド」を撮られた

エミー・クストリッツァ監督の作品!
 

かつてユーゴスラビアと

呼ばれていた国に生まれた

クストリッツァ監督は、本作とは逆に

今後亡くなってしまうかもしれない、

ロマ民族の世界をフィルムに遺します。
 

ヨーロッパ各国の主要都市で

姿を見る事ができるロマ民族の暮らしや

人生観が理解できるようになる

大変完成度の高い叙事詩的な作品です!!