こんばんは。

ご覧頂きありがとうございます😊

 

本日も想像力と発掘良品の発掘⑰というテーマで

 

質屋(1964)

(原題:THE PAWNBROKER)

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

 

★発掘良品の発掘とは?

発掘良品とは、惜しまれながらも2022年3月に終了を迎えた、TSUTAYAさんによる新作・旧作、有名・無名、公開・未公開ではなく「面白い」を基準に作品をセレクトし、毎月紹介してくれている映画ファンたのための素晴らしいシリーズ。

本シリーズは、そんな発掘良品の全作品を5~6年かけてご紹介させて頂こうという超長期目標のシリーズとなっております😄

 

 

 

 

人間性を失った男の境地とは?

 

本作は1964年に公開されたアメリカ映画。

 

第二次世界大戦でドイツが降伏したのが1945年の5月9日ですので、本作は第二次世界大戦から約20年が経過して作られた、戦争の渦中にいた人間の姿を描いた"戦争の後日談"のような作品。

 

本作の舞台は1960年代の

ニューヨークの下町ブルックリン!

 

 

戦車も戦闘機も戦闘シーンも登場しない本作ですが、ロシア・ウクライナ間で戦火が交えられてしまった2022年、本作のような「戦争の渦中にいた人間がどのような運命を辿ったのか」を追体験する作品は、ご覧になって損はないのではないかと思います…

 

戦前、幸せそうにピクニックをしていた

祖父と父母と2人の子供の7人家族は

20年後に一体どうなっていたのでしょう?

 

 

 

アバウトなストーリー 

 

「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。

 

若くして死んだアメリカの小説家エドワード・ルイス・ウォーラントの、2作目の小説を、デイヴィッド・フリードキンとモートン・ファインが脚色、「グループ」のシドニー・ルメットが監督にあたった。

撮影は「グループ」のボリス・コーフマン、音楽は「冷血」のクインシー・ジョーンズが担当した。出演は「夜の大捜査線」のロッド・スタイガー、「ラインの監視」のジェラルディン・フィッツジェラルド、「野良犬の罠」のブロック・ピータース、プエルトルコ生まれの舞台俳優ハイメイ・サンチェスほかニューヨークの舞台人たち。

製作はロジャー・ルイスとフィリップ・レインジャー。

 

 

 

むむむ。

 

「グループ (1966)」は日本では未DVD化作品ですので、現在の日本でのシドニー・ルメット監督の代表作と言えば「グロリア」「セルピコ」「評決」「オリエント急行殺人事件」そして何より「十二人の怒れる男」ではないかと思います😊

 

1960年代の女子友関係を描いた「グループ」!

 

惜しむらくは本作も発掘良品シリーズで

リリースしてもらいたかったです😥

 

 

ちなみに、上記のラインナップをご覧になって頂ければ納得して頂けると思いますが、シドニー・ルメット監督作品の持ち味は「裸一貫となった生身の人間」の姿を描く事!!

 

 

たった一人で悪の巣窟ブルックリンでおとり捜査をする、ストイック過ぎる警官の姿を描いた「セルピコ」!!

 

着手金を得るためだけの負け犬弁護士が、たった一人で不誠実な教会と裁判で争う「評決」!!

 

殺人事件にも関わらず、人間味のある結末が待っている「オリエント急行殺人事件」!!

 

そして青年の人生を賭けて、大人たちが自分たちのモラルをかけて激論を戦わせる「十二人の怒れる男」!!

 

 

 

どの作品の登場人物も絶望的な状況の中で、自分の人生を賭けて正しいと思う事に向って突き進むのですが、本作の主人公ソル・ナザーマンは逆に自分の人生を賭けてあくどい方向に向って突き進んでいる質屋の老人!

 

ソルは血も涙もない質屋の主人。

 

 

貧民街の中にあるソルの質屋には、少しでも多くの金を必要としている喰い詰めた人々がひっきりなしにやって来ますが、彼はどんな質草に対しても最低額でしか引き取ってくれないだけでなく、話しかけて来る街の人々にも心を開こうとはせず冷たく接します。

 

「この燭台は家宝なのよラブラブ

「1ドルだ…」

 

 

 

という事は、貧乏人を相手に暴利をむさぼって大儲けしているソルは、豪華絢爛な私生活を送っているの?

 

いいえ。

 

 

ソルは亡くなった妻の妹の家族と一緒に暮らしていますが、同じ形の家が立ち並んでいるソルの住んでいる住居は、豪華な屋敷という程ではないような気がします。

 

高速道路沿いに同じ家が並ぶソルの住居。

大金持ちとは言えませんね…

 

 

ソルは家の中でも常に無口。

 

アメリカ生まれの妹が「ヨーロッパに行きたい」と行っても浮かない顔ですし、病気で伏せっている妹の夫の父親に対しても親しく接する事はありません。

 

「ねぇ。一緒にヨーロッパに行きましょうよ」

「いや。行かない…」

 

 

 

…なんか、ソルの人生って楽しくなさそうですね。

 

 

ですがソルがそんな人間になってしまったのには、明確な理由が存在したのです!!

 

福祉の仕事をしている女性から

昼食に誘われても完全無視を決め込むソル。

どうしてそんなに頑ななの?

 

 

 

さてソルには一体どんな過去があり、このような人格になってしまったのでしょうか?

 

それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。

 

指輪を質入れしに来た女性を見つめ

突然、何かを思い出すレイ!

 

尚、ソルが何かを思い出すのは

彼女の時だけではなかったのです!!

 

 

 

【私の感想】 心的外傷後ストレス障害とは?

 

皆様がご覧になる楽しみを奪わないよう、これ以上詳細を書く事は差し控えさせて頂きますが、本作は心的外傷後ストレス障害 (PTSD)に苦しまれている方にとっては、とても他人事とは思えないであろう内容の作品!

 

 

ここまでの解説で何となく想像できるのではないかと思いますが「質屋」と言えば「金貸し」であり、西洋に於いて「金貸し」と言えば「ユダヤ人」である事は、シェークスピアの「ヴェニスの商人」でも有名な話であり、映画の冒頭でレイの父親が被っているのがユダヤ教のキッパー帽である事からもレイがユダヤ人である事が分かりますし、彼の腕に数字の番号の刺青が掘られている事から、彼がナチスドイツの強制収容所に収容されていた事も分かります。

 

レイの父親の被っているのはキッパー帽。

 

手伝いとして雇ったラテン系のジーザスは

レイの腕に彫られた数字のタトゥーが

秘密結社みたいでクールだと言いますが、

もちろんそれは囚人番号ですあせる

 

 

 

そう。

 

戦争の惨禍で愛する家族を失ってしまった人は、家族を助けられなかった事だけでなく、自分だけが生き残ってしまった慙愧の念で、戦争後もずっと苦しみ続ける事になるのです…

 

何故、何故、何故、何故、俺は生きてる!?

 

 


私見ですがそんな本作は、家も家族も仕事も生き甲斐も全てを奪われながら死ぬ事もできなかったレイの心の中の虚無感を描いた作品であると同時にこれから先も起こるであろう戦争によって、自分の全てを奪われてしまった人間の哀しみに想いを馳せる作品ではないかと思うのですが、皆様はどう思われるでしょうか?

 

地下鉄で他人の視線が気になるレイ。

 

理由はアウシュビッツに連行された時の

列車の事を思い出すから?

 

いいえ。

 

レイが思い出してしまうのは

アウシュビッツ行きの列車の中で

立ちながら眠ってしまい

抱いていた息子が床に落ちてしまい

踏み殺されてしまった記憶!

 

家族を救えなかった自分

そんな耐えがたい記憶を抱いて

人はどのように生きていけば

良いのでしょうか…

 

 

 

 

 

という訳で次回は

 

失われた歳時記

 

というテーマで

 

アマルコルド

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘

 

 

 

ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆

 

★おまけ★

併せて観たい発掘良品シドニー・ルメット作品!
「未知への飛行 フェイル・セイフ」

発掘良品のシドニー・ルメット監督作品は

「評決」「オリエント急行殺人事件」

「デストラップ」「セルピコ」など

多数存在していますが、

本作に一番近いテイストはコチラ!

 

核による抑止力とは、

核戦争を防止する力ではありません。

もし何らかの理由で

格の抑止力が効かった場合、

抑止力失敗の先に待ってるのは…

報復措置の発動なのです!