こんばんは。

ご覧頂きありがとうございます😊

 

本日も想像力と発掘良品の発掘⑯というテーマで

 

モンテ・ウォルシュ(1970)

(原題:TOR ZUM HIMMEL)

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

 

★発掘良品の発掘とは?

 
発掘良品とは、TSUTAYAさんによる新作・旧作、有名・無名、公開・未公開ではなく「面白い」を基準に作品をセレクトし、毎月紹介してくれている映画ファンたのための素晴らしいシリーズ。

本シリーズは、そんな発掘良品の全作品を5~6年かけてご紹介させて頂こうという超長期目標のシリーズとなっております😄

 

今月のラインナップはコチラ↑

 

 

 

西部は遠くなりにけり

 

本作は1970年に公開された西部劇!

 

1950~60年代に隆盛を極めた西部劇でしたが、時代の変化と共に少しずつ公開作品数が少なり、60年末期には「明日に向って撃て(1969)」や「ワイルド・バンチ(1969)」といった西部劇時代の終焉を描いたような作品が注目されるようになっていきます。

 

「あれ?俺たちの居場所はもうないの?」

ガンマンの末路を描いた「明日に向って撃て」

 

 

そんな時代に作られた本作もまた、西部時代の終焉を描いたような物悲しい後味の作品。

 

主役のモンテ・ウォルシュを演じているリー・マーヴィン氏は、1950年代の西部劇のヒーローだった方ですが、そんな彼が本作で見つめるのは"西部は遠くなりにけり"と呟きたくなるような寂莫とした風景だったのです…

 

自分を愛してくれた人が暮らしていた家は

すでに廃墟となっていました…

 

 

 

アバウトなストーリー 

 

「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。

 

文明の波が西部に押しよせ、花形だったガンマンやカウボーイたちは哀れな末路を辿る。

製作はハル・ランダースとボビー・ロバーツ、監督は「ローズマリーの赤ちゃん」のカメラマンだったウィリアム・A・フレイカー第一作。「シェーン」の原作者ジャック・シェーファーの同名小説をルーカス・ヘラー、デイヴィッド・ツェラグ・グッドマンが脚色、撮影デイヴィッド・M・ウォルシュ、音楽は「真夜中のカーボーイ」のジョン・バリーが担当。

出演は「ペンチャー・ワゴン」のリー・マーヴィン、「黒衣の花嫁」のジャンヌ・モロー、「プロフェッショナル」のジャック・パランス、新人ミッチ・ライアン、ジム・デイヴィス、アリン・アン・マクレリー、マット・クラーク、ビリー・グリーン・ブッシュなど。
 

 

 

 

 

はい。
 
作品に関する解説は1行だけですが、しっかり本質を突いていらっしゃいますね😄
 
 
本作は、文明の波が西部に押しよせ、花形だったガンマンやカウボーイたちは哀れな末路を辿ってゆく過程を描いた作品!
 
主役のモンテ・ウォルシュは親友のチェットと共に凄腕ガンマンとして放浪生活を謳歌していましたが、老いて来た事を自覚した2人は、そろそろ腰を落ち着けようと考えてハーモニーという街へとやって来ました。
 
そろそろ俺たちも街の人間になろうぜ!
 
 
勇名を馳せた二人は、街の有力者のブレナンが経営する牧場でカウボーイとして働く事になりますが、ブレナンの牧場は馬を調教して遠い町まで売りに行くような昔ながらの牧場ではなく、育成した馬を列車で売りに出す牧畜業であり、モンテやチェットのような昔ながらのガンマンたちが従業員として雑務していたのです汗
 
かつての荒くれ者たちが、今では
仲良くテーブルでお食事!
遠くまで馬を運ぶ仕事はもうありません。
「まぁでも、仕事があるのはありがてぇ」
 
 
 
ですが、彼らが生きていたのは資本主義が西部開拓時代を淘汰していた時代。
 
ブレナンの牧場も模規模を縮小する事となり、ガンマンたちもリストラの波に飲まれて、一人また一人と牧場を去っていきます。
 
 
そんな中チェットも、自分も牧場を辞めて街で金物屋を経営している未亡人と結婚して金物屋の亭主になると言い出したのです。
 
チェットと未亡人は相思相愛!
「俺、ガンマンやめて金物屋になる」
 
 
モンテは「彼たちのような自由人のガンマンは、女房なんて持たないもんだ」とチェットが結婚を諦めるよう説得しますが、チェットは「俺たちはもうガンマンじゃない」と言ってモンテを残して結婚してしまい、モンテ自身も昔馴染みのミュージックホールの看板娘マルチーヌとの結婚を考えるようになっていったのです。
 
マルチーヌは根無し草のモンテにとって
砂漠のオアシスのような存在でした。
 
 
…なんか「明日に向って撃て」や「ワイルド・バンチ」とは違って地味な展開ですね汗汗
 
俺たちの時代が終わるなら、
お前らと心中じゃーー!!!という
滅びの美学が描かれた「ワイルド・バンチ」
 
それに対してガンマンに見切りをつけ
所帯を持つ事にしたチェットは幸せそう。
「モンテ、お前も早くこっち来いよ!」
 
 
ですが本作はこの後「明日に向って撃て」や「ワイルド・バンチ」より凄惨な運命が、モンテとチェットに襲い掛かります!!
 
 
さて、果たして西部時代が終わりを迎えつつあった時、凄腕の老ガンマンのモンテとチェットには、どんな人生が待っていたのでしょう?
 
それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。
 
あれ?正業に就いたら幸せになれるのでは?
ですが過疎化する街で仕事に就いても
街自体が滅んでしまえば
ガンマンと同じ運命なのです…
 
 
 
【私の感想】時代の流れに翻弄され、行き場を失う人々

 

皆様が作品をご覧になる楽しみを奪わないよう、これ以上詳細を書く事は差し控えさせて頂きますが、本作は現代社会にも通底するような時代の流れに翻弄され、行き場を失ってゆく人々の哀歌のような作品。

 

 

 

モンテやチェットがブレナンの牧場で働き始めた頃、彼等の先輩として働いていたのは南北戦争でフッカー将軍と共に戦いファイティング・ジョーというあだ名を付けられた老カウボーイがいましたが、彼に与えられていた仕事は、牧場の有刺鉄線を張り巡らせる事。

 

人の好さそうなファイティング・ジョーを尊敬の目で見ていたモンテたちですが、ある日突然、彼は落馬して崖から落ちて死んでしまいます。

 

炎天下の中、一人で有刺鉄線を張っていたのは

かつて英雄だったファイティング・ジョー。

 

そんなファイティング・ジョーが

ある日落馬して死んでしまいました…

 

 

仲間のカウボーイたちは、何が起こったか分からず動揺しますが、モンテはポツリと「死にたかったのさ」と呟いたのです。

 

 

 

そう。

 

どんなに努力しても、時代の流れには逆らえないもの!

 

 

 

英雄ファイティング・ジョーがボロボロになって死んでいるのを見下ろすカウボーイたちの胸中には「次は自分たちの番だ」という想いがよぎっていたのだと思います。

 

ファイティング・ジョーは死んだ。

次に死ぬのは俺なのか…

 

 

 

私見ですがそんな本作は、仕事に没頭してい生きた結果、その仕事共々、時代に不要とされてしまうプロフェッショナルたちの寂しさを描いていると同時に、そんな彼らを見た観客たちに、自分の身の処し方を考えさせるような「メメント・モリ(自分の死を考えて生きよう)」という作品となっていると思います。

 

最前線で活躍するのは、いつだって先を見据えて行動している若い人たち。

 

 

 

だからこそ、自分の老後はどう過ごすべきなのかは、老いてしまう前に少しずつ考えておくべきことなのです…

 

モンテは最後の旅へと出発しますが

この旅の後に、彼には何が残るのでしょう…

時代に捨てられた男の前には

虚無の大地が広がっているのです…

 

 

 

 

 

という訳で次回は

 

移民の本音

というテーマで

 

大西部への道

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘

 

 

 

ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆

 

★おまけ★

併せて観たい発掘良品作品!
「摩天楼を夢みて」

 

降りしきる豪雨の日に不動産の地方支店にやってきた幹部は、5人の営業マンのうち、今月の売り上げの少ない3人をクビにすると宣告し、年老いた古株営業マンたちは買う見込みのないターゲットを相手に売り込みをかけに向かいます…

 

サラリーマン社会は、野心のある若者が成功し、年老いたベテラン敗者とってゆく過酷で残酷な職業なのです!