こんばんは。

ご覧頂きありがとうございます😊

 

本日も想像力と発掘良品の発掘⑯というテーマで

 

カサノバ(1976)

(原題:IL CASANOVA DI FEDERICO FELLINI)

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

 

★発掘良品の発掘とは?

 
発掘良品とは、TSUTAYAさんによる新作・旧作、有名・無名、公開・未公開ではなく「面白い」を基準に作品をセレクトし、毎月紹介してくれている映画ファンたのための素晴らしいシリーズ。

本シリーズは、そんな発掘良品の全作品を5~6年かけてご紹介させて頂こうという超長期目標のシリーズとなっております😄

 

今月のラインナップはコチラ↑

 

 

 

カサノバはローマ皇帝?

 

本作はローマ皇帝のカリギュラと混同される事が多い実在した人物。

 

「カ」しか合っていないカリギュラとカサノバが混同されがちな理由は主に2つ。

 

一つは、どちらも退廃的な逸話がある人物である事!

 

そしてもう一つは、「カサノバ(1976年)」と「カリギュラ(1980年)」という2つの映画がほぼ同時期に公開され、どちらもかなり背徳的な内容だと宣伝された事で混同されてしまったのではないかと推察されます😓

 

芸術か、狂気か、今世紀最大のハードコア巨編

というキャッチコピーがある「カリギュラ」!

 

 

世紀の色事師の「性」を描く巨匠の傑作

というキャッチコピーがある「カサノバ」!

 

という事は、本作はエロティックな作品という事??

 

 

いいえ。

 

本作は「道」「フェリーニの8 1/2」などを撮られたフェデリコ・フェリーニ監督ですので煽情的な作品ではなく、18世紀に実在し、「1,000人の女性とベッドを共にした」という回顧録を書いたジャコモ・カサノヴァという怪しげな人物の半生を描いた作品なのです😅

 

煽情的ではなくコミカルなシーンが多い本作は

カサノバという男の人生を俯瞰する作品なのです😆

 

 

 

アバウトなストーリー 

 

「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。

 

18世紀ヨーロッパの歴史上の人物であり、晩年の大著〈回想録〉でも知られるジャコモ・カサノバの絢燗たる女性遍歴と頽廃した宮廷生活を描く。

製作はアルべルト・グリマルディ、監督は「オーケストラ・リハーサル」のフェデリコ・フェリーニ、脚本はフェリーニとべルナルディーノ・ザッポーニ、撮影はジュゼッぺ・ロトゥンノ、音楽はニーノ・ロータ、編集はルッジェーロ・マストロヤンニ、美術・衣裳はダニーロ・ドナティ、メークアッブはリーノ・カルボーニが各々担当。

出演はドナルド・サザーランド、サンドラ・エレーン・アレン、マルガレート・クレメンティ、カルメン・スカルピッタ、シセリー・ブラウン、クラレッタ・アルグランティ、ハロルド・イノチェント、ダニエラ・ガッティ、クラリッサ・ロール、ティナ・オーモン、マリー・マルケなど。

他に、マイケル・ホーダーン、ヴァレリー・ギャロンなど。
 

 

 

 

 

はい。
 
解説にある通り本作は、18世紀ヨーロッパの歴史上の人物ジャコモ・カサノバの絢燗たる女性遍歴と頽廃した宮廷生活を描いた作品!!
 
映画の冒頭、カーニバルが開催されているヴェネチアの街の人々は狂乱状態!
 
海から女神像が浮かび上がる
ヴェネチアの仮面カーニバルは大盛況!
 
 
ですがカサノバはカーニバルを背にして、たった一人でサン・バルトロ島にあるフランス大使の別荘へと向かいます。
 
 
 
バルトロ島に向かった理由が、フランス大使から密かに逢いたいという手紙を受け取っていたから!
 
政務、軍事、建築、美術など、あらゆる方面で活躍できる自信があるカサノバは、フランス大使が自分を呼んだ理由は仕官の話だと信じ、足取りも軽く屋敷へと入っていきますが、カサノバが呼ばれた理由は、覗き見が趣味のフランス大使に、町のウワサになっているカサノバの奇妙なセックスを見せて欲しいというものでした…
 
夜中に密かに招聘しれたカサノバは
自分の才能をフランスが認めてくれたと
大喜びしていましたが…
 
別荘に行っても大使は姿を見せず
カサノバへの依頼とは、案内役の女性と
噂のセックスを披露する事でした汗
 
 
 
…これはかなり屈辱的な展開ですね。
 
侮辱を受けたカサノバは、フランス大使に対して激怒?
 
 
 
 
いいえ。
 
自分の才能を認めてもらいたいカサノバは、まずは大使に満足してもらおうと考え、全精力を傾けて姿が見えない大使に向け、サービス満点のプレイを披露したのです!!
 
大使!私の絶技をご覧あれ!!
壁の向こうから無言で覗いている大使に
必死で自分をPRするカサノバ。
 
 
けれど事が終わると大使は無言で去ってしまい、カサノバのフランスへの仕官の夢は、叶う事なく消え去ってしまうのです…
 
「大使。是非私の話を聞いて頂き…」
あれ?もう大使はいなくなっていましたあせるあせる
 
 
 
 

はい。

 

ここまでの解説で、本作が煽情的な作品ではないという事がお分かり頂けたと思います😅

 

 

 

 

さて、仕官を夢見ながらも、色物扱いされ続けるカサノバの人生とは、一体どんなものだったのでしょうか?

 

それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。

 

セックス以外の才能を認めてもらえない

カサノバの明日はどっちだ!?

 

 

 
【私の感想】せめて自叙伝だけは…

 

皆様がご覧になる楽しみを奪わないよう、これ以上詳細を書く事は差し控えさせて頂きますが、本作で描かれているカサノバは、我々がカサノバという言葉かイメージするようなすべての女性を魅了してゆくようなモテモテ男というよりは、立身出世の野望やアイディアを持ちながらも、卑猥な行為だけでしか話題になる事なく死んでいった哀れな男性。

 

ああ!これがカサノバ様のセックスね~ラブラブ

でも、これってモテモテ男がする事?

 

 

野心にも恋にも積極的だったカサノバですが、彼が本当に欲していた栄誉や幸福な恋愛は手に入れる事なく、色事師として名声ばかりが話題となってゆくのです…

 

カサノバがピュアな愛を感じた女性たちは

皆、カサノバから去っていきます。

 

 

 

ちなみに本作を撮られたフェデリコ・フェリーニ監督は、才能があっても作品を撮る事ができない映画監督の逃避を描いた「フェリーニの8 1/2」という作品を作られた方!

 

「8 1/2」の主人公グイドも、自分は才能あふれる人間で、女性からもモテモテだと自負していますが、その実は、妻からも変人だと軽蔑の目で見られている寂しい人間として描かれています。

 

 

 

 

そう。

 

自分の事を理想化して考えるのが自意識過剰な男性!!

 

 

 

 

「フェリーニの8 1/2」におけるグイドも、本作におけるジャコモ・カサノバも、自意識とプライドが以上に高いくせに、周囲の人からは相応しい扱いを受けていない事に忸怩たる想いを抱いている男であり、恐らくですがそれはフェデリコ・フェリーニ監督自身の投影であり、自意識過剰な全ての男性の事ではないでしょうか?

 

俺って天才なんだよね!と自信たっぷりでも

新作を作る事ができないグイド。

 

自称天才のはずなのに、仕官の夢は叶わず

ヨーロッパを徘徊するカサノバ。

 

 

 

私見ですがそんな本作は、プライドの高い男性の心の虚像を描いた作品であり「俺は優秀だ」「俺は天才だ」「俺は天下国家に必要な人間だ」と息巻いていた男性が、実は誰からも必要とされるような実績を残せず老いてゆく虚しさが伝わってくるような気がいたします。

 

そして、そんなプライドだけは一流の人間が最後にすがるのが、「自分はすごかったんだという歴史」を後世に残す事。

 

 

解説にある通り本作の原作は、カサノバ自身が晩年になって自分の人生について書き記した「我が生涯の物語」という回顧録なのです…

 

後世の人間よ私の回顧録を読め!そして驚け!!

これが色事師カサノバの華麗なる生涯だ!

 

彼の目的は達せられ、現代では

多くの女性をメロメロにする色男の事を

カサノバと呼ぶ事があるのです😅

 

 

本作が煽情的な作品ではないと思われる理由の一つに

ニーノ・ロータが作曲した本作のメインテーマが

あまりにも寂しく、陰鬱である事が挙げられると思います。

 

自分の事を希代の色男だと書き残した男の

心の中の寂しさを投影したような曲は

聞いた人の心に寂莫な想いを植え付けると思います。

 

 

 

 

 

という訳で次回は

 

植民地政策の末路とは?

というテーマで

 

アルジェの戦い

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘

 

 

 

ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆

 

★おまけ★

併せて観たい発掘良品作品!
「フェリーニの8 1/2」

 

"映画が撮れない"という監督の心境を映像化した本作は、フェデリコ・フェリーニ監督の9番目の作品としてではなく、8 1/2番目の作品というタイトルを付けられてしまいますが、フェリーニ監督同様、中々思うように次作が生み出せないクリエイターたちは、主人公のグイトに共感し、本作は名作中の名作として、高く評価されるようになりました😅

 

新作が作れないという気持ちを映画にするという入れ子構造の本作は、コロンブスの卵的な発想で産まれた、誰も観た事がない映画だったのです!