こんばんは。
ご覧頂きありがとうございます😊
本日も想像力と発掘良品の発掘⑮というテーマで
ヤコペッティの大残酷(1974)
(原題:MONDO CANDIDO)
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
★発掘良品の発掘とは?
本日の邦題は「ヤコペッティの大残酷」!!
↑海外のポスターと全く違う日本版ポスター!
大残酷というタイトルからは、恐ろしいホラーのような内容を想像させますが、本タイトルに「残酷」という文字が付いたのは、本作を監督されたグァルティエロ・ヤコペッティ氏の出世作の邦題が「世界残酷物語」だったから!!
↑牛の首を手刀で切り落とす日本版の
「世界残酷物語(1962年)」のポスター!
ですがどちらの作品も原題には「残酷」の文字はなく「世界残酷物語」は「MONDO CANE」、「ヤコペッティの大残酷」は「MONDO CANDIDO」というタイトル。
どちらのタイトルにもある「MONDO(モンド)」という単語は、イタリア語で"世界"を意味するものですので、ヤコペッティ監督の作品は「〇〇〇の世界」という"ドキュメンタリー風のタイトル"なのです😄
↑とってもオシャレなイタリア版の
「MONDO CANE(犬の世界)」のポスター!
なお、本作の原題の「MONDO CANDIDO」のCANDIDOは、主人公カンディードの名前であると同時に「白い」という意味なので、直訳すると「カンディードの世界」または「白い世界」!
大残酷とは正反対の清々しいタイトルですが、本作の内容は「一見すると真っ白で美しい世界」を舞台にした「本当はこわい人類の歴史」のような、大残酷なストーリーなのです😨
↑白い世界から始まる地獄巡りへようこそ!
「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。
はい。
解説にもある通り、本作は哲学的な作家ボルテールの「カンディド」という小説を映画化したもの。
「カンディード」の別タイトルは「カンディード、あるいは楽天主義説」!
「カンディード」のストーリーは、ツンダー・テン・トロンク城で暮らしいてるカンディードという主人公。
童話に出て来る善良な青年のようなカンディードは、城主の甥として何不自由ない生活を送りながら、幸せに暮らしていました。
美しい城、優雅な生活、潤沢な食事、従者や道化に囲まれ笑いの絶えない日々!
↑ツンダー・テン・トロンク城は平和そのもの!
モネの「草原の昼食」のような
のどかで平和な暮らしを楽しむ城内の人々。
↑面白コンテンツも目白押しです😆
笑顔が絶えないカンディードが尊敬しているのは家庭教師パングロス。
パングロスは楽天的な哲学者で「すべて物事は理由があって生まれ、必ず結果にたどり着くことになるので、今の世界は、最善の選択をした結果なのである」という人生観を説き、城内の人々はそれを信じ好きな事だけをして生きていたのです!
↑豚は何のためにいるのか?
豚たちはどんどん増えて行く!
だから私たちは美味しい食事を食べられる!
つまり今の世界とは、
最善の選択をした結果なのだ!
という楽天的人生観を説くバングロス。
そんなバングロスの言葉を信じたカンディードは、城主の愛する一人娘のクネゴンダ姫と愛し合う事にしますが、それを知った城主はカンカンに怒ってカンディードをお城から追放してしまったのです!!
↑美しいクネゴンダ姫を好きなカンディードは…
↑草むらでクネゴンダ姫と抱き合いますが…
↑それを知って怒り狂った城主は
カンディードを城から追放してしまいました!
あれれ?
パングロス先生の「すべて物事は理由があって生まれ、必ず結果にたどり着くことになるので、今の世界は、最善の選択をした結果なのである」という理論なら、カンディードとクネゴンダ姫の恋は成就されるはずでは?
↑パ、パングロス先生!
最善の選択をしたのに追放されました
それとも城を追い出された事は、カンディードの人生にとって、より良い人生のための最善の選択となっていくの?
それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。
↑楽園を追放されたカンディードの運命は!?
皆様がご覧になる楽しみを奪わないよう、これ以上詳細を書く事は差し控えさせて頂きますが、この後カンディードは時空を超えて、様々な人間の愚行と、残酷な運命を目撃する事となります。
ブルガリアの兵士に編入されて、脱走した兵士ず残虐に拷問される現場を目撃するカンディード!
↑お互い死ぬまで殴り合わせられる脱走兵!
ポルトガルのリスボンで、宗教家による異端審問を目撃するカンディード!
↑さぁ、新しい拷問方法を開発するぞ!
アイルランドで、独立運動の結果、爆破しつくされた街を見るカンディード!
↑日常と戦場が混然となってしまったアイルランド!
そんな本作は、パングロス先生の提唱する「今の世界は、最善の選択をした結果」ではなく、「世界は常に、最悪の選択をする危険がある」という事を警鐘する作品となっていると考えられます。
では翻って、現代の私たちの行動はどうでしょう?
もしかすると、自分の行動が最善の選択となると信じ、問題意識なく日々の生活に満足している先に待っているのは、最善の選択と限らないかもしれないのです…
そう。
残念ですが、歴史の愚行というものは繰り返されるもの。
私見ですが本作は、そんな人類の愚行を観客に知ってもらうために作られた意欲作だと考えますが、残念ながら当時の人々は、「世界残酷物語」という作品を、残酷を見世物を観客に見せるドキュメンタリー風のゲテモノ映画と評し、「モンド映画(見世物小屋)」と嘲笑し、本作もまた、そんなキワモノ映画扱いを受けて現在に至ります…
↑参考:ウィキペディアのモンド映画の項
ウィキペディの「モンド映画」評は「壮絶な題名や誇大な広告とともに公開された作品」と説明されていますが、ボルテールの小説を映画化した作品であり「MONDO CANDIDO(白い世界)」というシンプルなタイトルである本作は、本当に壮絶な題名と断じてしまって良いのでしょうか?
2020年代の世界が混迷している今こそ、パングロス先生の「今の世界は、最善の選択をした結果なのである」というのが真実なのかどうか、私たち自身が考えてみるもの有益な事ではないかと思うのですが、皆様はどう思われますか😊
↑本作はかなり予算を使った作品でかので
単なる金儲けの見世物映画ではありません。
映画のラストのカンディードの叫びは
ウィキペディの「とってつけたようなオチ」とは
異なる様に思われます…
という訳で次回は
人里はなれた無法地帯
というテーマで
殺しが静かにやって来る
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘
ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆
★おまけ★
併せて観たい発掘良品!
「最前線物語」
戦場には、必ず兵士がいます。
本作は、第一次世界大戦で最前線の兵士たちが体験した様々な出来事を、ショートストーリーのオムニバス形式で映画にした、「世界戦場物語」と言えるようなもの。
大変な事態も、のんびりとした休日も、住民たちとのちょっとした交流も、そして残酷な命のやり取りも…
戦場における様々なエピソードは、これからもきっと戦場がある限り増え続けてゆくのです。