こんばんは。
ご覧頂きありがとうございます😊
本日もグラインドハウス今昔物語というテーマで
グリーン・インフェルノ(2013)
(原題:THE GREEN INFERNO)
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
★グラインドハウス今昔物語とは?
本日の作品はあまりにもドギツイ残酷描写のため、ご覧になって気分を害される方も少なくないと思いますが、イーライ・ロス監督の作風は、過激な表現の中に隠された人間のエゴイスティックな醜悪さ!
イーライ・ロス監督は、「キャビン・フィーバー」において疫病にかかった彼女を平気で見捨てたり、「ホステル」で自分を残酷な目に合わせた人々に、同等以上の残酷な復讐をしたり、「ノック・ノック」で妻や娘を裏切るような行為をした後に、それ以上の裏切り行為にあったという「一見すると善人に見える人の偽善性」を描き続けていらっしゃる監督。
↑男性にとって、前半天国後半地獄の
「ノック・ノック」は、偽善者が落し穴に落ちる映画です!
という事は本作も、偽善的な登場人物が罰を受ける映画?
はい。
ただし本作の偽善に対する罰は、偽善者当人ではなく他者が受ける事になるのです…
↑映画のラスト10分で描かれているシーンは
本作が只の残酷映画ではない事を物語っています…
「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。
この解説に書かれていない事を少しだけ解説させて頂くと、本作は1988年に公開された「GREEN INFERNO」という映画にオマージュを捧げたような作品!
↑1988年公開の「GREEN INFERNO」
本作は日本未公開の作品ですが、ビデオで発売された際の邦題は「アマゾン・アドベンチャー/グリーン・インフェルノ」!
↑こちらが日本で発売されたビデオパッケージ!
ちなみにイーライ・ロス監督の「グリーン・インフェルノ」のallcinemaさんの解説によると、
かつて80年代前後に様々な物議を醸して世界的にセンセーションを巻き起こした食人族映画を現代に甦らせて描く衝撃のカニバル・ホラー。
アマゾンの先住民族に捕まったアメリカの学生たちを待ち受ける凄惨な運命を、過激なゴア描写満載に描き出す。
と解説されていおりますので、これは「食人族」やヤコペッティ監督の諸作品などのモンド映画の事を指していると思うのですが、「食人族」等のドキュメンタリーのような体裁をした疑似ドキュメンタリー作品ですので本作のテイストとは大きく異なっており、上記の「食人族映画」というのは、同名タイトルである「アマゾン・アドベンチャー/グリーン・インフェルノ」の事であると推測されます😊
ですallcinemaさんの「アマゾン・アドベンチャー/グリーン・インフェルノ」の解説を拝見すると…
アマゾンで行方不明となった学者を求めて冒険の旅に出る女性レポーターと3人の男を描いたC級アドベンチャー。
ショック・ドキュメンタリー「グレートハンティング/地上最後の残酷」のA・クリマーティが手掛けたイタリア製劇映画だが、残酷描写などはほとんど無い。
という「残酷描写などはほとんど無い」という矛盾する解説が記されています
ちなみにyoutubeにアップされている「アマゾン・アドベンチャー/グリーン・インフェルノ(日本語字幕なし)」を拝見させて頂いたところ、この作品は食人賊が人を襲う映画ではなく、アマゾンの住人たちと生活を共にする事となった白人の主人公たちが、アマゾンの奥地で原住民を奴隷のように酷使する採掘業者や、子供たちを誘拐しては先進国へ売りさばく臓器売買業者などの悪い白人と遭遇し、原住民と共に戦うというアドベンチャー映画となっています!
↑アマゾンの奥地で白人たちの悪事を発見!!
↑「アマゾン・アドベンチャー/グリーン・インフェルノ」の内容について
お知りになりたい方は、なかざわひでゆき様のサイトに
大変詳しい解説がされておりますので、どうぞご参照下さい😊
おおっ!
前作における悪役が「原住民を虐げている白人」という事なら、本作における偽善者も、原住民を虐げている白人という事??
いいえ。
「原住民を虐げている白人」は偽善者ではなく、ただの悪人です!!
本作で偽善的な行為を行っているのは「アマゾンの環境破壊を阻止せよ!」と大学で演説をしている環境保護活動家の青年アレナンドロの事なのです!
↑みんな社会問題にもっと目を向けろ!!
アレナンドロは、まだ近代文明に接触していないペルーの部族の人権を守ろうと仲間たちに訴えている理想家肌の環境保護青年!
彼は、最近ペルーの森林地帯が開発業者により伐採されており、その地域に住んでいるヤハ族が絶滅の危機に瀕しているという情報を入手し、自分たちが現地に行って開発の現状を世界の人たちに告発しようと仲間たちに提案します!
と言ってもペルーの奥地は、治安の保証が全くない危険なエリア!!
ですが大学で、世界には女性の人権が蹂躙されているエリアが多数存在する事を知ってショックを受けていた女学生のジャスティンは、アレナンドロの決め台詞である「考えるより行動だ」という言葉に賛同し、抗議活動に参加する事にします。
彼等の武器はスマートフォン!!
世界中に発信可能なGPSに接続したスマホを利用して、開発業者たちの好意をネットで世界にライブ配信しようと考えたのです!
↑スマホで配信するだけで世界を変えよう!
アレナンドロの抗議活動は1日だけのゲリラ戦です。
…うん。
ここまでのアレナンドロの行動は環境破壊を守ろうと行動しているだけですので、別に偽善的とは言えませんよね😊
ですがペルーの奥地で抗議活動を行った後、意気揚々と帰国しようとしたアレナンドロと仲間たちは、想定していなかったような最悪のトラブルに遭遇する事となるのです…
↑現地の協力者から開発業者の服を調達して
ゲリラ活動に向かったアレナンドロと仲間たち!
さて、何故アレナンドロたちは、キネマ旬報社さんの解説に書かれている「人間を食べる習慣を持つ食人族に捕らえられ、次々と餌食になっていく」事になってしまうのでしょうか?
それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。
↑現地の人の環境を守るために活動をしていた
彼等はどうなってしまうの
皆様がご覧になる楽しみを奪わないよう、これ以上詳細を書く事は差し控えさせて頂きますが、アレナンドロが決行したペルー奥地でのゲリラ抗議は、危険である以上に莫大な費用がかかる行為!!!
ざっと見積もっただけでも、ペルーまでの旅費、現地までのボートのチャーター、現地の協力者への謝礼など、普通の学生では、とても賄えないような経費がかかっているはずなのです!
↑ペルーの空港から船着き場までは
現地の車をチャーターして楽しいドライブ!!
なんだか楽しそうな抗議活動ですね😟
でも、アレナンドロが抗議活動をネットで配信してもお金は入ないのでは??
はい。
ここが本作を読み解くポイント!!
もしアレナンドロの計画が単なる学生の抗議活動だったとしたら、こんな派手なアクションは、絶対に実行できるはずがないのです…
↑あれあれ?抗議の帰路のセスナの中には
計画成功を祝う祝杯のビールまで!!
そう。
環境保護のために活動しているアレナンドロの裏には、彼の活動を裏で支援して、より大きな利益を上げようとする存在が垣間見えるのです…
1988年の「アマゾンアドベンチャー/グリーン・インフェルノ」が「GREEN INFERNO」というタイトルなのに対して、イーライ・ロス監督の「グリーン・インフェルノ」の原題は「THE GREEN INFERNO」!
ささやかな違いのように見えますが、もしこの「THE」が「GREEN(環境活動)」に付いている定冠詞だとするなら…
「THE GREEN」=「その環境運動」という意味となり、今も世界中で行われている、高邁な理念の環境運動の裏側に見え隠れする、悪辣な人たちによって引き起こされる目を覆うような悲劇を告発するような映…
おっとこれ以上説明するのは、差し控えさせて頂ければと思います
↑そして明日もまた、別の「THE GREEN」が
無垢な善人をを地獄へと堕としてゆく…
ピュアな環境活動に参加した純粋なジャスティンは
現実を知っても、それを覆い隠して美談として喧伝します。
そして、そんなジャスティンの言葉は
彼女の信じた純粋な人を次の悲劇へと引き込みます!
「THE GREEN(その環境活動)」は、
偽善によって生み出され続ける無限地獄かもしれません…
という訳で次回は
偉大なる俳優に捧ぐ
というテーマで
スリー・フロム・ヘル
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘
ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆
★おまけ★
併せて観たいグラインドハウス系映画
「アポカリプト」
本作と同じく残虐描写が問題となった「アポカリプト」ですが、タイトルの「黙示禄」の意味を考えてゆくと、単なる残虐映画ではなく、
本作はスペインから入植した人々によってもたらされたマヤ民族の滅亡のはじまりを描いた、黙示禄の序章のような作品なのだと思います…