こんばんは。ご覧頂きありがとうございます😊

 

本日も想像力と発掘良品の発掘⑪というテーマで

 

暗殺の詩/

知りすぎた男どもは、抹殺せよ

原題は「LE SECRET(シークレット)」(1974)

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

70年代社会派サスペンス

 

本作は、政治不信が世界中に蔓延していた1970年代のフランス映画。

 

 

一見平和そうに見える庶民の日常が、実は政府によって管理されているのでは?というパラノイア的な視点の映画は、「パララックス・ビュー」「激怒」「合衆国最後の日」など、発掘良品に多数ラインナップされています。

 

↑為政者側の洗脳ビデオが衝撃的な「パララックス・ビュー」。

 

 

けれど、個人のアイデンティティがとても強く、政府に管理される社会を常に否定しているフランスでも、アメリカと同じように、国民が国家によって管理さていると考える人たちがいた事を示す本作の存在は、歴史的に重要な作品と言えるかもしれないのです…

 

 

 

アバウトなストーリー 

 

「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。

 

『冒険者たち』のロベール・アンリコ監督によるフレンチノワール。ある国家機密を知ったデビッドは、保安機関に追われる中、山村に暮らすトマスと妻のジュリアに助けられる。3人は国境を越え逃走を図るが…。

 

…えっと汗

 

 

この解説だと主人公のデビッドが、保安機関に追われている男と明言しているのですが、デビッドは「自分は保安機関に追われている」と言いながらフランス国内を逃亡している男!

 

 

ん?

 

どこが違うの??

 

 

 

はい。

 

 

それは、劇中でデビッドの証言が正しいと証明できないというところ!

 

 

デビッドは、自分は政府に追われていると言っているのですが、TVや新聞では、精神病院から脱走した男が街を逃げ回っていて危険だから注意するよう呼び掛けていますので、本作の解説としては…

 

 

誤:ある国家機密を知ったデビッドは、保安機関に追われる中、

 

正:ある国家機密を知ったために保安機関に追われていると話すデビッドは、

 

 

と、なるのです。

 

 

ちなみに映画の冒頭のシーンでデビッドは、何かの施設に収容されているのですが、その施設が精神病院なのか、保安機関の収容所なのかは判然としません…

 

↑映画の冒頭の場面は、暴れる人間を収容している施設!

 

↑2つの目の部屋の収容者は自殺しています!!

 

↑驚いた管理者が自殺者に駆け寄ると…

 

↑死んだフリをしていた男が管理者を絞殺してしまいます。

 なお、この死んだフリをしていた男がデビッドなのです。

 

 

 

…この状況だと、デビッドが正気なのか狂気なのか、区別がつきませんよね汗

 

 

この後、脱走したデビッドがパリの友人宅を訪れると、友人はデビッドを暖かく迎え入れてくれて、2週間ぶりだと話しかけますので、彼は数週間前までは、病院に入院していなかった事になり、謎は益々深まってしまうのです😓

 

↑あらデビッド久しぶり!また朝の5時よ~!

 …友達は、デビッドと異常者だと思ってないようです。

 

 

 

あ。

 

でもデビッドは、国家機密を知ったから逮捕されたと言っているのですから、その内容が明かされれば、デビットが正常なのかどうか分かるのでは?

 

 

 

…えっと。

 

パリの友人から金を借りてたデビットは、イタリアへ亡命するために山岳地帯へと足を踏み入れるのですが、そこで出会ったトマスとジュリアという夫婦には、国家機密の内容は、激しい拷問を受けたショックで忘れてしまったと語ったのです。

 

↑俺は政府の秘密を知って捕まっていたんだが、

 その内容は忘れてしまったんだ…

 

 

…これは、困りましたね汗

 

 

さて、果たしてデビッドの正体は、どちらだったのでしょうか?

 

それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。

 

↑デビッドは正常なのか、そうではないのか?

 偶然知り合ってしまったトマスとジュリアは

 彼を助けるかどうかで意見が対立してしまうのです…

 

 

 

理性かロマンか

 

デビッドの言が本当だとしたら、本作は70年代の管理社会の恐怖を描いたように見えるパラノイア系サスペンス映画!

 

けれど、もしデビッドが正常ではなかったとすれば、本作は精神病棟で人を殺して脱走した男が逃亡するサイコサスペンス映画!

 

 

 

果たしてどちらの映画なのかは映画のラストまで分からないので、これ以上詳細を書くのは差し控えさせて頂きますが、本作にはもう一つ、男女の意見の対立を描いた心理劇のような展開の映画としても楽しむことができます!

 

 

ほぼ無一文で、山岳の国境を目指していたデビッドと知り合ったトマスとジュリアでしたが、二人のデビッドに対する考え方は正反対!!

 

ジュリアは、異常者にしか見えないデビッドを早く通報して厄介払いしたいと言いますが、何故かトマスはデビッドを助けてあげたいと言って、彼の逃走に同行する事を決意するのです!

 

 

…な、なんで?

 

 

劇中においてトマスの心情はハッキリとは描かれていませんが、恐らくトマスは、デビッドの生き方に"男のロマン"を感じてしまったから!

 

山奥に隠遁し、夫婦で仲睦まじく暮らしていたトマスでしたが、そんな彼の人生は、冒険も挑戦もない平穏な日常を永遠に続けているだけの無味乾燥な日々。

 

妻のジュリアは、それこそが幸せな生き方だと感じているようですが、トマスはデビットの中に、自分が踏み出す事ができなかった、冒険者の魂を見出してしまったのです!!

 

↑常に敵に警戒しているデビットって、何かカッコよくないか…

 

 

 

そう。

 

 

 

よく女性はロマンティストだと言われますが、現実社会においては男性の方か遥かにロマンティスト!!

 

 

 

 

女性のように、現実的な幸福な日々に満足てぎない男性は、時として、人生全てを破壊してしまいかねないリスキーな選択に、ロマンを感じてしまう愚かな一面を持っている生物なのです…

 

↑夜中に妻が寝入った後、うまい酒とつまみで夢を語る。

 これこそが、トマスが望んでいた人生だったのです!!

 …男のロマンって何なのでしょう汗

 

 

 

 

 

という訳で次回は

 

分断される前の奇妙な世界

というテーマで

 

二つの世界の男

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘

 

 

 

ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆

 

合格おまけ合格