こんばんは。ご覧頂きありがとうございます😊

 

本日も想像力と人間観察記というテーマで
 

ジキル&ハイド

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

フリアーズ監督流の内面分析

 

本日の作品の原題は

MARY REILLY(メアリー・ライリー)

 

…えっ。ジキルとハイドじゃないの??

 

 

はい。

 

 

本作は、小説「ジキル博士とハイド氏」をラブストーリーとして再構成した「メアリー・ライリー ジーキル&ハイドの恋」という小説を映画化したもの。

 

 

ですので、本来のジキルとハイドのストーリーを想像していると違和感を感じるかもしれませんが、スティーブン・フリアーズ監督流の人間観察映画という視点で見て頂けると、彼の考える人間の内面性を理解するためのヒントになるような作品となっているのです。

 

 

 

 アバウトなストーリー 

 

「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。

 

二重人格を描いた古典、スティーヴンソンの『ジキル博士とハイド氏』(邦訳・新潮文庫など)を家政婦の目から描いた一編。ヴァレリー・マーティンの小説『メアリー・ライリー』(邦訳・文春文庫刊)を、英国劇壇の才人、「キャリントン」(監督も)のクリストファー・ハンプトンが脚本化。監督はハンプトンと「危険な関係」(アカデミー脚色賞受賞)で組んだ、「スナッパー」のスティーブン・フリアーズ。
 …以下は、関係者の来歴なので略させて頂きました。

 

本作の主人公はジキル博士の家に仕えているメアリー・ライリーという若いメイド。

 

 

彼女は幼い頃、父親から虐待を受け全身に傷がある少女。

 

メアリーの体の傷を診察した医師であるジキル博士は、メアリーの父親が娘を傷つけた方法や理由を彼女に尋ね、その酷い仕打ちに憤慨します。

 

↑メアリーの父親は、職を失った後アル中になって

 娘に対して暴力を振るうようになったのです…

 

 

奉公人の身の上を哀れに思い、同情を寄せてくれる雇い主などに会った事がなかったメアリーは、ジキルに好意を寄せるようになりますが、彼は謎めいた人物で、毎晩の様に使用人を遠ざけた研究所に入り浸り、人知れず何かを研究している男。

 

↑物憂げな様子で、誰にも心中を明かさないジキル博士。

 

 

彼はメアリーの話を聞いた数日後に使用人たちに対して、今後研究所に自分の助手として友人のハイド氏が出入りするようになるので命令を聞くようにと命じます。

 

ハイド氏などという友人を知らない使用人たちは困惑しますが、やって来たハイド氏は怪しげな男で、不躾な態度でメアリーに近づき、彼女を辱めながらも、愛を囁き始めたのです!

 

↑メアリーを怯えさせながら愛を囁くハイド氏。

 

 

さてジキル氏とは一体何者なのでしょう?

 

そして、ハイド博士を尊敬しながらも、彼の友人であるジキル氏を怖れるメアリーは、どんな事件に巻き込まれてゆくのでしょうか?

 

それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。

 

↑饒舌なハイド氏と、寡黙なジキル博士。

 優しいジキル博士と、意地悪なハイド氏。

 メアリーに同情するジキル博士と、メアリーを追い詰めるハイド氏。

 …あれれ。二人はまるで正反対ですあせる

 

 

 

アンビバレントな深層心理

 

本作が、原作のジキル博士とハイド氏と決定的に違っているポイントは、原作のジキル博士は善良な人間として生きていながらも、残酷な事をしたがっている男だったのに対し、本作におけるジキル博士は、自分の想いを口に出す事ができないナイーブな男であるというところ!

 

 

ですので原作におけるハイド氏が、人間の心の奥底にある破壊衝動を抑止する事なくやってのけるシリアルキラーなのに対して、本作のハイド氏は、堅苦しい身分制度に拘束され続けて生きて来たジキルハイド博士が、自分の意志をそのまま行動に移すハイド氏になる事で、彼が心の奥底で行いたかった行動を実行していく自分に正直に生きようとしている人間!

 

↑メアリーの傷を舐めてしまうハイド氏は、

 いじめているのではなく、彼女が好きだったから!

 

 

メアリーはジキル博士に父親の話をした時に、父親を憎んでいるか?という質問に対して、分からないと回答し、人の心というものがそんなに単純ではない事を示し、ジキル博士はその答えに刺激を受けて、人間の心の中の複雑さに魅入られていくのです…

 

↑愛する娘のハズなのに、どうして父親はいじめたのか?

 

↑そんな父を怖れていたのに、どうして憎まないのか?

 

 

 

…そう。

 

 

このテーマは、フリアーズ監督が描き続けている人間の心の中のアンビバレント(相反する感情)に通底する想い!

 

 

疑惑のチャンピオンで、ドーピングで勝利した主人公が、ガン患者への寄付を惜しまない善人だったり…

 

↑ドーピングする悪いヤツ?それとも善人?

 

 

私のかわいい人ジェリで、若い男の後見人を任じていた女性が、彼の結婚を破断させようと画策したり…

 

↑彼を守りたいの?破滅させたいの?

 

 

危険な関係で未亡人を堕とす事に執念を燃やして破滅させた男が、彼女を心から愛し傷ついていくのも…

 

↑愛を弄んでいたの?欲していたの?

 

 

どの話もみんな、人間の心の中の複雑さによって起こる悲喜劇であり、本作もまたジキル博士の内面に隠されていた衝動をハイド氏が実行していくというアンビバレントな物語となっているのです…

 

↑ハイド氏を怖れているのに、彼に抱かれる夢を見るメアリー。

 

 

人の心とは分からないもの。

 

 

人の心が複雑である事を分かった瞬間、人間には更なる苦悩が待ち受けているのかもしれません…

 

↑ジキル博士の図鑑に落書きしたハイド氏は

 「理解する事によって悩みは始まる」と書いているのです汗

 

 

という訳で次回は、フリアーズ監督作品から離れて、同じアンビバレントな心理の難しさを描いたファレリー兄弟の作品である

 

ふたりの男とひとりの女

 

という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘

 

 

ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆

 

合格おまけ合格

 

①アンビバレントな心理を描いた映画に興味がある方へ…(その1)
 「ハロウィンⅡ」


音譜ハロウィンⅡの回はコチラ

 

①アンビバレントな心理を描いた映画に興味がある方へ…(その2)
 「ダゲレオタイプの女」


音譜ダゲレオタイプの女の回はコチラ

 

①アンビバレントな心理を描いた映画に興味がある方へ…(その3)
 「デュエリスト/決闘者」


音譜デュエリスト/決闘者の回はコチラ
 

 

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