[東京 10日 ロイター] 政府は10日、証券取引法を全面改正する金融商品取引法案を閣議決定し、国会に提出した。これまで証取法がカバーしていた金融商品の規制範囲を大幅に広げ、投資性商品全般を網羅する法律を整備することで、投資家保護の拡充を図る。ただ、商品ファンドなど個人マネーが流入し始めた一部の商品は規制の対象に含まれず、今後、対象商品の拡大が必要になるとの指摘もある。
金融商品取引法は、金融商品を購入する投資者の保護や業者規制を定めた複数の法律を一元化する新しい法律。株式や債券などの伝統的な「有価証券」をカバーする証券取引法を金融商品取引法に移行するだけでなく、金融先物取引法や投資信託法、外為証拠金取引法など、金融商品ごとに整備されてきた法律も金融商品取引法に吸収される。
新法の対象商品としては、運用成績によって受け取る保険金が変わる変額保険・年金、外貨建て保険、デリバティブ預金などは含まれることになったが、免許業種である銀行と保険会社を規制する銀行法と保険業法は残るほか、元本割れしない保険や銀行預金は対象外となった。
<個人マネー、投資性商品への流れ加速が背景>
さまざまな投資性商品が銀行や証券会社など販売会社の属性を問わずに販売されるようになり、業態を横断的に整備する法律が必要とされてきた。現在は証取法でも規制されていない映画ファンドやラーメンファンドといった「集団投資スキーム」に分類される新しい金融商品の続出も背景にある。国民の「貯蓄から投資へ」の流れが加速してきたことも、今回の新法整備を後押ししている。
性質の似た投資性商品でも、規制する法律が違うことが理由で販売や勧誘のルールが異なるなど、弊害も目立つようになってきた。商品の複雑さと開発のスピードに法整備が追いつかず、悪質業者が横行してきた問題もある。
外為証拠金取引では、法規制が整わない間に高齢者などを中心に詐欺的な被害が急増。昨年7月に改正金融先物取引法が施行され、金融庁は投資家保護のためのルールを整えたものの、今回、包括的に金融商品を扱う金融商品取引法ができれば「法改正をいちいちしなくても規制の網をかけやすくなる」(金融庁幹部)というメリットが生まれる。
<規制緩和で新規参入促進も>
新法の制定は、投資家保護のための規制強化の側面ばかりでなく、事業者にとっては柔軟性も生まれる。
たとえば、現行法では、事業者は証券業と証券投資一任業を兼務するために、証券業の登録、投資顧問業との兼業の届出、投資助言業の登録、一任業の認可などという数多くの手続きを求められるが、金融商品取引法では一度の登録で済むようになる。事業者にとっては手間が省け、活発な新規参入を促すと期待されている。
さらに、事業者によるリスク商品の販売では、金融に詳しい「プロ投資家」に対する取引では商品説明などの簡略化も認められるようになる。
一定額以上の投資商品を保有し投資経験も豊富な投資家を法律上の「プロ」と位置づけ、それ以外の「アマ(チュア)」と区別することによって、プロには金融取引にあたっての事前説明を省いたり簡略化し、投資性の高い商品への資金(マネー)の流れを活性化させるのが狙いだ。
<一部商品は対象外で、包括的な法整備に向けた課題残る>
今国会に提出される金融商品取引法案(証取法改正案)では、元本割れしない保険や銀行預金、商品先物などが同法案の対象外となった。同法案を議論してきた金融審議会で、銀行・保険の業界関係者や、商品ファンド法を共管する農林水産省、不動産特定共同事業法を共管する国土交通省が強く反発。投資性は高いにもかかわらず「現行法の規制で問題ない」などと主張したためだ。業界関係者からは「利用者の立場に立った判断ではなく、省庁間の権限争いの結果。国益よりも省益を優先する主張が展開されたのは、なげかわしい」(野村資本市場研究所・淵田康之執行役)との声が多くあがった。
金融庁は今回の金融商品取引法の制定を、将来的には預金や保険も適用商品に含める包括的な「金融サービス市場法」制定に向けた足がかりにしたい考えだ。しかし、元本割れリスクがある投資性商品でも金融商品取引法の適用外のままの状態が続けば、「投資家保護ルールの一元化」(金融庁)という課題が解決されないままになりかねない。
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