久方ぶりに魂が揺さぶられる『新プロジェクトⅹ』です。
嘗ての我が国は、1986年(S61年)頃には全世界の半導体の46%程を製造・出荷し世界一となりましたが、その後のアメリカとの日米半導体協定(1986年(S61年)9月2日)やアメリカ包括通商法スーパー301条(1989年(H元年)~1990年(H2年))などの不利・不公正な措置に依り著しく急激に衰退した分野の一つにスーパーコンピュータがあります。
当時の我が国では、富士通FACOM VP(1982年(S57年)7月~1988年(S63年)12月)、日立製作所HITAC S-810(1982年(S57年)8月~1994年(H6年))及び日電SX-2(1983年(S58年)4月~)がベクトル型スーパーコンピュータとして開発・製造されており、アメリカを凌駕していました。
(1985年(S60年)のアメリカ大気研究センター(National Center for Atmospheric Research)への日電SX-2の納入排斥や、1987年(S62年)のマサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)への日電SX-2の納入排斥など、法律・条約に基づかない排斥行為もあった。)
今日の『新プロジェクトⅹ』は、そのスーパーコンピュータに焦点を当てたものでしたので、興味深く拝見しました。
今回出てくるスーパーコンピュータは、理化学研究所計算科学研究機構(兵庫県神戸市中央区港島南町7-1-26(ポートアイランド))と富士通(株)が共同開発したスーパーコンピュータ 京ですが、概ね富士通(株)のエンジニアのお話しとなります。
最初の場面では、富士通(株)の池田敏雄様(1923年(T12年)8月7日-1974年(S49年)11月14日)とそのDNAを引き継ぐ追永勇次様の開発責任者への就任要請場面などから始まりました。
追永勇次様は、長年スーパーコンピュータの開発に携わられその開発が非常に困難であったことから、中々開発責任者の職を固辞され、周囲の方々が色々と説得に工夫されていたことが面白かったです。
なお、スーパーコンピュータ 京は、2005年(H17年)から文部科学省と理化学研究所との次世代スーパーコンピュータプロジェクトとして始まり、2006年(H18年)に国家プロジェクトとなりました。
(この時点では、富士通(株)のスカラ型と、(株)日立製作所と日電(株)のベクトル型の両方での開発予定でした。しかし、後に(株)日立製作所と日電(株)のベクトル型は撤退となります。)
スーパーコンピュータ 京の特長としては、スカラ型構成となっており、CPUには富士通(株)のSPARC64(TM) Ⅷfxが、CPUインターコネクトには富士通(株)の6次元メッシュ/トーラス結合のTofuが用いられた汎用性のあるスーパーコンピュータです。
ただ、2009年(H21年)11月には当時の民主党政権時の事業仕分けの時に、『世界一になる理由は何があるんでしょうか?2位じゃダメなんでしょうか?』などと(謝)蓮舫様から低評価を受け、一時は事実上の凍結と判断されて予算額が減額されました。
しかし、スーパーコンピュータ 京は、開発途中にも拘わらず2011年(H23年)6月と11月にHPLベンチマークTOP500で世界一となり、2011年(H23年)11月にはHPCチャレンジ賞(4部門全1位)とゴードン・ベル賞を受賞していました。
(当時の事業仕分けなんぞにこのプロジェクトが潰されていたら、自動車の開発研究や創薬研究などに於いて、他国に更に後れを取ることになったかも知れません。)
そして、2012年(H24年)6月に晴れて完成(10PFLOPS(Peta Floating-point Operations Per Second)、45nm、液冷式)し、9月からは共用稼働を開始されました。
また、番組内では追永勇次様の他に、Tofuの開発者安島雄一郎様とプロセッサーの開発者吉田利雄様が出演されていました。
因みに、スーパーコンピュータ 京は、2019年(R元年)8月16日に役目を終えて共同運用を終了し、8月30日にシステム停止されました。
(後継機はスーパーコンピュータ 富岳であり、2014年(H26年)から富士通(株)との共同開発が始まり、2020年(R2年)から試行運用が開始され、翌年からは本格稼働しています。)
いつの時代でも、開発者の苦悩はあり、それを経験し乗り越えたエンジニアの言葉は非常に重いです。
(やはり、我が国は付加価値の高い製造業の育成・発展が非常に重要だと思いました。サービス業は主に国内消費に留まる為、国際競争力の強化には余り貢献しない様に思います。)
『エンジニアが責任を取るとは、責任を取って辞めることではなく、責任を取ってやり遂げることである。』