青年がおっさんになるのは何歳からだろうか。

自分の所属する50代はとっくにおっさんだが、40代もおっさんと言えるかもしれない。

30代でもおっさんはいる。

 

娘が中学3年生になってクラス替えがあった。

 

-担任の先生はどんな人だった?男?

-美術の先生。おっさんだよ。

-へえ、おっさんて何歳くらいの人?

-30前くらいかな。

 

担任の教師が特別老けている人なのかもしれないが、中学生から見たら30歳前でもおっさんである。

 

おっさんと聞けば、なんとなくちょっと疲れた、だらしない、元気がない、酒ばかり飲んでいる、といったイメージがある。だがそれには自分はちょっと違和感を覚えている。自分の場合、今の自分はおそらく40代の頃より元気である。もしかしたら30代の自分にも負けていないかもしれない。体重を落としたことが主な原因だが、かつてよりフットワークが軽くなったし、40代の自分と徒競走しても勝てる自信があるしボクシングをしても勝てそうな気がする。ただちょっと老眼が出てきたことと夜目が利かなくなったことでは劣る。

 

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市の運営する水泳教室と書道教室に通い出して2年近くなる。どちらの教室も準から正シニア向けみたいなもので、時間だって平日の日中だから集まる生徒は自然とそういう人が多くなる。自分が一番若い方である。皆様自分よりひと回り以上年配だ。そして女性が圧倒的に多い。そして彼女たちはとても活動的だ。そういえば稽古会も先生を含んで女性の方が多い。

 

海外に行く際に空港で見かけるシニア層の団体ツアー客もほとんどが女性だ。男性がいるとしたらその女性の旦那が無理やり連れてこられたといった風情である。どこか浮いている。イタリアなんぞに行くのならおれは家でテレビを見ていたい、といった感じがする。よくいわれるとおり、日本のおばさんは元気なのだ。なにかから解放されたような明るさがある。

 

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ある日、おれは気が付いた。

もしかしたらおれはおっさんでありながら、おばさん化しているのではないか。そういえば水泳教室にしても書道教室にいても、なんだか居心地が悪くないのだ。

 

おれは学生時代は頑固な硬派だった。中学のころなど女子と口をきくのは用事があるときくらい。そんなひん曲がった根性が災いしたのか、第一志望だった共学の都立高校の受験に失敗し、見事滑り止めに受けた男子校に進学する羽目になり、さらに硬度が高まった。ただ、中学卒業に当たって、本当は好きだった八百屋の娘の美由紀ちゃんという女子に制服のボタンを第3者を通して要望された時はすべてが崩壊しそうになったがとどまった。今思えば本当にアホなことをしたものだ。今の時代にこんなことをいったら問題になるかもしれないが、女などとは口はきかん、などと腹を決めた頃ころだった。

 

世の男性がおっさん化し始めるころから、おれはおばさん化しつつあったのかもしれない。硬派が崩れ出した。水泳教室でもおばさんのギャグに難なくついていけてる。あるおばさんが、年金少ないしお金が減る一方なの、と言うのを聞けば、薬ばっかり増えちゃってね、とか、おれはまだ年金ももらってないし降圧剤しか飲んでないがうまく対応できている。稽古会では飲み会が時々あるが、おばさんたちはよく食うのだ。一方男は飲んでばかりであまり箸をつけない。どっちが元気なのかは一目瞭然だ。そしてちょっとエッチな話題になると、エー、やだー!とかいうおばさんたちの気持ちに同調しちゃっていたりする自分がいる。おれの無駄な元気さはおばさんたちの元気さに通じるものがある。引っ込み思案だった性格も最近ちょっと図々しくなっている気がする。世をはばからぬ図々しさとはおばさんの特権に近い。スーパーなどで欲しいものを歩いて探さないでいきなり店員にそれがどこにあるのか聞くあの類の図々しさ。今のおれには何となく理解できる。そっちの方が早いしめんどくさくない。迷惑な点もあるが、案外おばさんの思考回路は合理的にできている。

 

別にオネエになったわけではないが、元気である一方、気持ちが弛緩すると楽をしたくなってもののやりかたがおばさん化するようだ。自分がおっさんであることは自覚していたが、その中でおばさん化も萌芽していたのか。しかし案外おっさんの中にはおばさん入っている人もいるんじゃないだろうか。気が付いていない人は多そうだ。

 

なお、歳を重ねてもおばさん化しない女性もいる。いつまでも慎ましく、おしとやかで若い気持ちをお持ちの方もいる。