チェロ(セロ)は人間の男声に一番近い音色を出す楽器だと言われる。

 

ボブ・ディランはフランク・シナトラのヴォーカルを、まるでチェロのような声だと称賛した。

 

エレキベースはチェロと似ている。楽団にあって中低音を担当する。もしかしたら調弦が同じかなと思って調べてみたら違った。チェロは低い弦から順にC-G-D-A、ベースはE-A-D-G。家で痔、と覚えている。

 

宮沢賢治の作品に、セロ弾きのゴーシュ、というものがある。こどものころ読んだかな、というかなり希薄な記憶しかない。

 

セロ弾きのゴーシュのあらすじを読んで、ああそんな話だったなと思い出す。

 

チェロを担当するゴーシュは演奏が下手で、オーケストラのお荷物だった。そんなゴーシュが自宅で練習をしていると、毎晩動物たちがやって来るようになった。ゴーシュは4晩にわたってそれぞれの動物から音程だったりリズムだったり、人と合奏する楽しさだったりを学んでいく。そして最後の夜に訪れた野ネズミの親子には、音楽には人を癒す力があることを教わる。演奏会を迎えたゴーシュはもはや昔のゴーシュではなかった。堂々と立派な演奏をし、演奏会は大成功に終わる。

 

おれもゴーシュみたいになりたいものだ、と思う。バンドに入れてもらって、エレキベースを始めて約1年になる。ここ半年ほどはベースを膝の上に乗せない日は無い。練習しっぱなしということはなくて、酒を飲む合間にちょっと弾いてみたりする程度だ。こんな調子ではゴーシュのようにはなれないが、これまでどんな楽器をやっても楽しくもうまくもならなかった自分だが、ベースだけはなにか別物のような気がしている。おれはつぼみだ。伸びしろしかない。そんなアホな楽観さではじく4本の弦。

 

ゴーシュのように動物はたくさんは来てくれないが、うちには3匹の猫がいて、夜の餌を食べてお腹がふくれた頃におれがアンプラグドでベースを弾き出すとうとうとするようになった。

 

時々思い出してチェロの名曲の「白鳥」のメロディーをベースでなぞってみる。チェロのように音量をコントロールできないけれど、一度はあこがれたチェロを、あこがれた人に自分の声で奏でるような気分にはなれる。