今週末はいつものプールがほとんど非公開である。


一人の自分が怪しげなことを思い立つ。


自転車に乗ってみるか。


もう一人の自分が自制する。


やめとけ。この暑さだ、死ぬぞ。


階下に降りてドアを開け、格納庫の自転車のタイヤに空気を詰める。それだけで汗が噴き出る。


ざっとチェーンに油をやる。ついでに渇き切ったトウガラシの苗に水を遣る。


娘ちゃんと夏休みには川越に行こうね、と約束してたけど、娘ちゃんは塾とか友達とか部活で忙しかった。


娘ちゃんの大好きな川越の駄菓子屋のあさひ堂さんに一緒に行けないまま夏休みは終わる。


せめて娘ちゃんの好きなあさひ堂さんのミニドーナツを買いに行こう。


ピンポン玉より少し小さなミニドーナツ30個入り330円を買いに。


ココちゃん、行ってくるよ。



自転車で片道3時間。


娘ちゃんのためだ。行くぞ、金剛号。



川越までは約30キロ。


のんびり行くか。

9:50に家を出る。


自宅から川越はほとんど真北に進む。


天気晴朗なれど熱高し。



大雑把に所沢経由で川越を目指す。

川越では川越二郎でラーメンを食べる。

あさひ堂さんとラーメン二郎、いつもセットだ。


久米川通過。



埼玉県に入る。


所沢通過。



航空公園。

色々思い出のある公園。もう絶対会えない人のことを思ってさまよったあの日。



所沢市街を抜けると川越までの一直線の道を進む。


田園地帯を突き進むこの道は、この季節、乾いたネフド砂漠を思わせる。



走行時間2時間半で第一目標の川越二郎に到着。


二郎と金剛号の勇姿。自転車はかつてアメリカの馬に近い存在だ。



しかし、酷暑のポタリングで疲れきってしまい、腹は減れども食べる気にならず。下手すると食べてすぐに戻しかねない。


残念だが、退散。


あさひ堂さんへ向かう。


東武線の川越通過。


商店街は人が多いので自転車を降りて押して歩く。


そばとか寿司ならのどを通りそうだが食欲ゼロ。のどばかり渇く。暑い。



埼玉老舗の百貨店、丸広に寄る。


ありがたいほど冷房の効いた店内。何も買わず身を冷やす。目眩するほど汗が引く。



なんと店内改装で飲料の冷蔵庫は縮小してた。


丸広を出てあさひ堂さんを目指す。もうすぐそこだ。


その手前にあったスーパーで冷たい飲料をあさる。


こいつに決めた。今日の一本目。



嗚呼、甘露!

ほとんど一気飲み。


あさひ堂さんに到着。32キロか。

3時間近くかかったってことは時速10キロ。大した鈍足だ。





この店は隠れた川越の名店だ。品揃えがすごく、菓子屋横丁より安い。


お店の女将さんに帽子をとって挨拶する。


娘の大好きなミニドーナツを、と言いかけたら、女将さんは、ごめんねー、と言う。



あのドーナツはね、夏の間は出してないの、とのこと。


衛生上の都合があるのかも知れない。


代替えに何かありますか?と聞いたらこれを勧めてくれた。



同じ330円。


せっかく来てもらったのに暑い中すいません、とおっしゃって、少しばかり心付けしてくれてた。


次回に続く。